・インド料理Indian cuisine の特徴
インドでも古くは、香辛料といえば黒コショウ、ターメリックぐらいでした。16世紀にバスコダガマによって中南米産の唐辛子が伝えられ、じゅがいも、トマトも同様に南米より導入しています。
16~19世紀に北インドで栄えたムガール帝国の食文化をもたらしたこと、長い間、イギリスの植民地であった事により、インドの料理は劇的に変化し現在のインド料理の基礎を築いたといえます。
インドは、東西南北4つに分けることが出来ますが、おおざっぱに分けると『北』と『南』でだいぶ様子がちがっています。ヒマラヤ山麓のマイナス30度を下回る厳寒から摂氏50℃になることもある西部の砂漠地帯まであります。
社会習慣、民族、宗教(ヒンズー教・ジャイナ教・イスラム教・キリスト教・仏教など)、身分(カースト)の違いなどもありそれぞれに特徴があります。
◇北インド料理
16世紀~19世紀のイスラム王朝(ムガール帝国)で栄えた中央アジア、ペルシャの影響を受けています。インド随一の穀倉地帯で乳製品の産地でもあり主食は小麦で加工品のナン、チャパティなど、どろりと濃厚なこってりしたしたカレーと羊・鶏肉の肉料理が知られ味わい深い料理です。
カシューナッツ、アーモンドなどのナッツ類、クリーム・バターオイル・ごま油・落花生油などが使われています。
庶民はレンズ豆が多く、スパイスは粉状にしミックスしたガラムマラサGaram Masalaを多用し密閉した瓶に数カ月保存できます。 基本的なガラムマサラは、シナモン、クローブ、ナツメグの3つを使います。
タンドールを用いた調理法もその特徴の一つでインド特有の壺型の土の窯・土釜で、北インドからパキスタンにかけパンジャーブ地方で使われ、窯(かま)の底の炭火で加熱し480℃程の高温で、短時間で食材を焼き上げます。
肉類は金属製の串に刺して窯に入れ、ナンは平たく伸ばした生地を窯の内側に貼り付けて焼きます。
一般家庭では、タンドールを使わないで鉄板で焼いた薄くて発酵してないチャパーティーを主食とし豆(ダール)はインドの国民食です。サブジは野菜とスパイスの炒め物です。
海外でのインド料理というと北インド料理がメインです。
カレー(北インド系カレー)は大きく分けて4種類です。
1)マサーラー:タマネギをベースとした定番といわれています。
2)パーラク(サーグ、サグ、サグワラ):ほうれん草、乳製品のチーズをベースとしたもので緑色のカレー です。
3)マッカニー:トマトをベースにした、別名バターチキンともいいます。
4)コルマー:揚げたまねぎ類と生クリームやカシューナッツをベースとしたクリーミーなもので唐辛子を使わないため辛くない白いカレーです。
他にタンドリチキンTandoori chickenは、ヨーグルトと塩胡椒とともに香辛料に漬け込んだ鶏肉を、タンドールのかまどで焼いたものです。
◇南インド料理
主食は米(ジャポニカ米)、南インド米でココナッツオイルのさらっとしたカレーに仕上がります。暑い南では、調理時間が短く、軽食のティファンTiffinが充実しています。ビーフやポークなどもありますが菜食主義者が多くカレーリーフ(ミカン科)やタマリンド(マメ科)を使用しています。
椰子の木、バナナがみられ、海岸沿いでは魚介がよく食べられています。野菜・豆類・ヨーグルトも入ります。ベジタリアンが多くサーンバールは南インドでみんなが毎日たべてる野菜と豆の料理です。
イドゥリは米とウラドダールという豆を水でふやかした後にペーストにして発酵させてから蒸した蒸しパンで南インドの朝ご飯の定番のようです。ラッサムはコショウとクミン、ニンニクが効いたスープで、そのまま飲んでも、ご飯にかけてもおいしいといいます。
バスコダガマが到着したケララ州のマラバル海岸地域はキリスト教徒の間でビーフカレーと、ワインが飲まれています。
バナナの葉(現在では金属食器のこともある)にご飯とおかずの野菜・豆をつかった酸味のあるサンバルです。
チャッカライポンガルは南インドのティファンTiffin(軽食)でコメと豆の粥でミルクで煮てあって、椰子砂糖(ジャガリー)やナッツ、レーズン入りで甘味が強く南インドで1月の収穫祭ポンガルのときに食べる、特別なお菓子です。
◇東インド料理
ベンガル料理ともいい 大きな河川が多い地域で隣国バングラデシュでも食べられている主食は米(インデカ米)で香り米バスモティなどが使われマスタードオイルを使った魚カレーが主です。
香辛料に差があり、ウイキョウ(茴香)の種子(フェンネルシード)やクミンの種子(クミンシード)などを多く用いています。
◇西インド料理
ゴア料理が中心で米と小麦の両方を主食とし菜食料理が発達しています。インド西海岸の小さな州、ゴア州で食べられている料理です。かつてポルトガルの植民地で、ポルトガルの料理の影響を強く受けています。
今もここにはインドには珍しいカトリックが多く住み、インドでは珍しい豚肉を用いた料理なども作られピーナツオイル、紅花油が主に用いています。
沿岸地域では魚の利用もあります。主に菜食・乳製品のカレーが発達しています。
タンドールという釜で焼くナンはインドの西のペルシャの方が発祥のパンといわれます。
インド料理にはカレーという料理はなく、カレーの語源には諸説ありますが、タミル語で野菜、肉、食事、スープなどを意味するカリという言葉があり、それが英語でCurryと表記するようになったとも言われています。
現在ではカレーという言葉が世界中で定着しているため、インド国内外の多くのインド料理店では、メニューに○○カレーとの表記が見られているのです。
インドの日常ではカレーの言葉は使われていません。
またインドには、カレー粉、カレールウもありません。本場インドではカレーに小麦粉は用いずインド料理は必ずしも辛くはなく辛さは作る人の好みです。
イギリスでは18世紀にインドのカレーが知られ、数十種類もの香辛料を使いこなす必要なく家庭で簡単に使えるカレー味の調味料として、複数のスパイスをブレンドしたカレー粉を開発したことによります。
インドでは、食材や料理にあわせて香辛料をブレンドして使用しています。
鶏肉をスパイスとオイルで漬けたチキンピックルがあります。
マサーラー(香辛料を混合した調味料)とごはんでつくった炊き込みご飯(ビリヤーニー)です。
スージーハルワーはスージー(セモリナ粉)で作ったとても甘いケーキみたいなお菓子でナッツがはいってギー(精製バター)をたっぷり使います。
基本的な食材は、インドで古くから得られるものです。
米や麦などの穀物・野菜:タマネギ・トマト・ほうれん草・茄子・ジャガイモ・冬瓜・ニガウリ・カボチャ・オクラ・人参・キャベツ・キュウリ・生姜・にんにくなどなど
豆類・果物・魚介類 ・甲殻類・羊肉・鶏肉・牛肉・卵・乳・乳製品・香草類です。
肉は主として鶏肉で、なお、ヒンドゥーは牛肉を食べないが豚肉を食べ、ムスリムは豚肉を食べない代わりに牛肉を食べます。魚料理はありますが、海藻類は日本ほど多く食べられていません。
調味料は特徴的でインドは北の氷河から南の熱帯雨林までの幅広い地域ですが、特に南は南国らしい食材・調味料・香辛料が多く使われています。
ガラムマサーラーは、ガラム(辛い)マサーラー(香辛料を混合した調味料)を乾煎りし香辛料を粉にして混ぜて作ったもので保存しています。
マサーラー として
インド料理の基本的な香辛料は、香りクミン、シナモン、クローブ、コリアンダー、ナツメグ、辛味レッドペッパー、黄色い色ターメリックなどという具合です。ココナッツパウダー・ココナッツ油 ・ココナッツシュガー(パームシュガー) ・辛子油(マスタードオイル)・ギーオイル(インドのバター)などです。
香辛料は漢方薬の原料でもあり、それぞれに効用があります。
他にチャツネ(チャトゥニー)は野菜や果物を酢、レモン汁や砂糖、塩、各種香辛料のニンニク、生姜、トウガラシ、カルダモンCardamonなどを加えてジャム状になるまで煮たもので甘辛い調味料です。
クミン・シナモン・クローブ・コリアンダー(パクチー)は消化促進に、ナツメグは下痢止め、レッドペッパーは発汗作用、ターメリック(うこん)は消化促進・殺菌作用・肝機能改善に有効です。
現在では近代化に伴いスプーンを使って食べることも増えていますが、スプーンやフォークよりも、自分の身体の一部である手の方が清浄なものだと考えられていたことによります。他の人が口をつけたものを自分の口に運ぶことは、インドで最もタブーとされる食事作法です。
インド人の大半はヒンドゥー教の信者で、他にイスラム教の信者が1割少々です。良く知られるのが、ヒンドゥー教では牛を聖獣として敬うため牛肉を食べず、ヒンドゥー教では豚を不浄として豚肉などを食べないことです。
インドの面積328万7,590km2(世界第7位の広さ) 人口約12億人 首都ニューデリーNewDelhi 言語:連邦公用語ヒンディー語・他に州の言語が15・英語 宗教ヒンズー教82.6%・イスラム教11.4%・キリスト教2.4%・シーク教2.0% 仏教0.7%・ジャイナ教0.5%などです。
イギリスより1947年8月15日独立しています。
インド料理といっても地域により違いはありますが、炎暑、厳寒に耐えうるために、香草の文化が発達したと言えるでしょう。
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(初版2020.7.22)