◎メタボリックシンドローム (Metabolic Syndrome 代謝異状症候群) めたぼりっくしんどろーむ
近年メタボリックシンドロームという言葉がよく聞かれるようになりました。中高年、小児の肥満症が年々増加傾向にあるようです。今日の飽食時代を反映して国民健康栄養調査から全体的に30%前後に肥満傾向がみられます。男性の肥満はいずれの年代においても増加傾向を示しています。女性は70歳以上での増加のみですがその他の年代では減少しています。
メタボリック(代謝)とは、脂質や血糖など体に必要な成分を調整する機能のことで「メタボリックシンドローム」とは、肥満、中性脂肪、血圧、血糖の値が少し高めでこれらの条件が重なった状態としています。数値がやや高い項目が、3~4項目が重複すると、動脈硬化の危険が一気に高まる状態のことをいいます。
背景には遺伝的要因、加齢などの要因に加え、食生活・身体活動等をはじめとする生活習慣が深く関わっています。
日本高血圧学会、日本内科学会など8学会で、日本人用の診断基準を2005年4月に発表しています。この肥満の基準が、身長と体重から算出するBMIではなく、ウエスト周囲、腹囲(ふくい)になっているのが特徴となっています。
本診断基準では、必須項目となる内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100平方cm以上)のマーカーとして、ウエスト周囲径が、女性で90cm、男性で85cm以上を「要注意」とし、その中で 1.血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満) 2.血圧高値(最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上) 3.高血糖(空腹時血糖値110mg/dL)の3項目のうち2つ以上を有する場合をメタボリックシンドロームと診断と規定しています。 さらに
2007年(平成19年)4月には厚生労働省の研究班により6~15歳小児対象のメタボリック症候群基準が発表になっています。小児の時期からの生活習慣によって発症しやすいことより15歳未満の小児の基準がこのほど決まったものです。肥満児では血管の硬さが超音波診断でみられています。腹囲(ふくい)80cmを男女差なく定めました。6~20歳で同じ腹囲でも女性は皮下脂肪が多いですが、男性では内臓脂肪が多く腹囲が少なくても注意が必要としています。
腹囲(ウエスト)80cmが最も重要視され、そのうえ血圧、空腹時血糖値(100mg/dl以上)、高脂血症(脂質異常症:中性脂肪120mg/dl以上 HDLコレステロール40mg/dl未満)の3項目のうち2項目以上当てはまる子供を小児メタボリック症候群と診断しています。これ以外に腹囲を身長で割った数値が0.5以上を注意が必要とし、腹囲80cm以上で3項目に当てはまらない子供は予備軍としています。適正体重を知って日常的に適切な食事と運動を心掛けていくことが必要です。 小中学生の5~20%があてはまる可能性があります。肥満児の70~80%に予備軍の可能性を指摘しています。
食生活の原因として
1.肉やバターなど動物性脂肪の多い食事
2.いつでも買い食いできる環境
3.不規則な食事
4.運動不足を掲げ、腹囲cm÷身長cmが0.5以上になるような時には、生活習慣の改善、受診を勧めています。ダイエットと称してあまり数値にこだわりすぎないことの指摘もあります。
脂肪組織は、2つの型(褐色脂肪、白色脂肪)に分類します。褐色脂肪は、首の後ろ、背中、わきの下、心臓大動脈の周囲、腎臓の周囲に限られ脂肪の1%程度、エネルギーの消費器官として体温調節、過剰なエネルギーを燃焼させ、自由にエネルギーを放出する役目をもっています。
白色脂肪は、全身に分布する中性脂肪で皮下脂肪、内臓脂肪ととなっています。やせの大食いは、褐色脂肪の機能亢進であることが考えられます。 1970年代までは、ただ肥満(皮下脂肪)として発症が考えられていましたがCTスキャンの登場により腹部の輪切りの映像で内蔵脂肪型肥満(リンゴ型、男性、更年期以降の女性に多い)に健康障害が見られることが解ってきたのです。皮下脂肪型肥満(洋梨型、若い女性にみられる)では、病気の発症がなければ特に減量の必要がないとさえいわれています。
また脂肪組織は、内分泌器官でもありアディポサイトカイン、アディポ(脂肪)、サイトカン(生理活性物質)を活発に分泌するのですが内臓脂肪では、アティポサイトカインに異状をきたすというのです。PAI-1(パイワ:Plasminogen Activator Inhibitor-1)といわれる血栓を形成する物質が内臓脂肪の蓄積によって、脂肪細胞から分泌が盛んに行なわれるようになります。内臓脂肪型肥満では、PAI-1の分泌亢進により動脈硬化の原因を作り脳梗塞、心筋梗塞への危険性が高まるのです。生活習慣病といわれるものの危険因子の数が多いほど発症率が高くなるのですが血圧、血糖、中性脂肪、肥満のうち、1個あると正常な人の5倍、2個で10倍、3個で30倍も心臓病に罹(かか)る率が高いことを発表しています。
内蔵型肥満は、血糖値、血圧、中性脂肪の上昇を招き、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、高血圧とともに動脈硬化症を併発し「死の四重奏」とも呼ばれています。 内臓脂肪型は、飲酒、運動不足、夜食、甘いものの取りすぎによって起こりやすく運動することによって減らすことができます。中高年のおなかの出ている内臓脂肪型肥満は、注意が必要です。
脂肪細胞は、アディポサイトカイン(脂肪生理活性物質)でありさらにアディポネクチンAdiponectin(インスリンの分泌、血管を強化させる、LDLの抑制など)をつかさどっていますが特に内臓肥満では、その分泌が抑制され生活習慣病の要因になっているのです。
*アディポサイトカイン あでぃぽさいとかいん 脂肪細胞は単なるエネルギーの貯蔵場所ではなく、内分泌細胞として種々の生理活性物質を分泌していることが最近の研究で明らかになってきています。アディポ(脂肪)、サイトカイン(生理活性物質)を活発に分泌する物質で内臓脂肪に、それらのなかには、TNF-α(腫瘍壊死因子)、IL-6、アンジオテンシノーゲン、PAI-1など、他の細胞でも分泌され、その生理作用が良く知られています。 TNF-α(Tumor Necrosis Factor 腫瘍壊死因子)は免疫系で重要な働きをする蛋白質ですが、肥満マウスの解析で糖尿病発症に深く関与していることが判っています。 PAI-1は血管障害や血液凝固時に分泌される蛋白質で、血管病や動脈硬化の発症に関与します。 アンジオテンシノーゲンは主に肝臓で合成され血圧調節因子とし働きます。 IL-6は免疫調節分子として作用しています。 それぞれに有名な分子であり、脂肪細胞から分泌されるこれらの物質が生活習慣病の発症に深く関与しています。
脂肪細胞だけが特異的に分泌する生理活性物質もあります。代表的なものがアディポネクチンで、このタンパク質は動脈硬化症発症を抑制するという私達には好ましい作用をもっています。アディポネクチン(adiponectin)は、筋肉で脂肪を燃焼させ血中でメタボリックシンドローム[代謝異状症候群]を防ぐのに役立ち善玉ホルモンといわれている高分子型のアディポネクチンです。 逆に脳の中枢内において低分子型複合体のアディポネクチンで飢えに備えて脂肪を蓄え、エネルギーの消費を減らす倹約遺伝子の機能があり悪玉の働きをしていることが突き止められてます。そのインスリン抵抗性が起きるのは、レジスチンResistinなどの悪玉ホルモンが増えるというのです。
マウスを使った実験でアディポネクチンを注射したマウスの脳の視床下部を調べると、食欲を高める酵素の増加がみられました。アディポネクチンを投与したマウスは、実際に食べる餌の量が増え、エネルギー消費量は減少し、体重増加を招く結果でした。東大の門脇孝教授(糖尿病・代謝内科学)らの研究チームの研究結果が2007年7月10日発行の米科学誌「セル・メタボリズム」に発表されています。高分子型だけを増やす薬などの開発によって血中での作用を高め、脳での作用をブロックできれば、肥満症や糖尿病の薬の開発につながるものとして、期待されています。
また第10回「日本病態栄養学会学術集会」で、女子栄養大学平井千里さんの研究テーマ「高比重アディポネクチンは血清インスリン濃度と負相関する」のなかで、健康に必要な高分子アディポネクチンを増やすのには砂糖摂取を制限すると良いことをはじめて示しています。アディポネクチンは肥満、特に内臓脂肪が蓄積した場合にはその分泌量が低下してしまいます。結局、有用な物質でも肥満には勝てず及ばないようです。
*中性脂肪 ちゅうせいしぼう トリグリセリドともいい内臓の保護、体温を放散させないと重要な役割を果たしています。太った人では中性脂肪の割合が大きく、食物の脂肪の他、炭水化物、またタンパク質からアミノ酸が除かれ脂肪に合成されます。 貯蔵脂肪として水素と炭素の割合が高く飢餓時には、エネルギー源として、1g≒9kcalを発生させ効率がよく、また含まれる水素により酸化される時に、1g当り炭水化物0.55g、タンパク質0.4g、脂肪1.07gと約2倍も水を生じ、砂漠のラクダのように代謝水を利用する陸上動物としての大切な働きをしています。
単純脂質の構成成分で食用油脂のほとんどの成分となっています。常温で液状のものを油(oil)、固体のものを脂(fat)ともいいますが厳密な区別はされていません。アルカリで加水分解(ケン化)すると脂肪酸、アルカリ塩に分解され石鹸とグリセロールとなります。 最近は、その過剰摂取(肥満・動脈硬化・脳・心筋梗塞など)が問題視されてもいますが一方では10歳代後半から20~30歳代女性の無理な痩せ志向に注意が必要です。
やせ過ぎも、太りすぎも健康を維持していくのは難しいようです。20歳代の若い女性の痩せすぎ25%、中高年(45歳以上)の内蔵脂肪型肥満、隠れ内蔵型肥満(25≦BMI)と合わせ男性で50%、女性で15%になっていることが示されています。 肥満症では皮下脂肪型肥満の健康障害は、少ないですが全般に疲労しやすいく、平均寿命が短いといわれます。
内臓脂肪型肥満(ウエスト:女性90cm、男性85cm以上)の9割に高血圧症、高脂血症、耐糖能異常、高尿酸血症、心臓病を患う率が高くなっています。 内臓脂肪が諸臓器やその周辺付属組織へも脂肪がつき、やがてさまざまの器官に影響を及ぼし呼吸器などにも形態的・機能的変化が現れてきたりします。 糖尿病(BMI:27で2倍)、動脈硬化症、高コレステロール血症(BMI:29で2倍)、高脂血症(BMI:25で2倍)、脳卒中、心疾患、腎疾患、脂肪肝、胆石症、痛風、膵炎、睡眠時無呼吸症候群、変形性関節炎などの症状があげられます。
脂肪細胞は、アディポネクチン(インスリンの分泌、血管を強化させる、LDLの抑制など)という生理活性物質を活発に分泌していますが内臓脂肪型肥満は、それを抑制してしまうのです。
生活が豊かになって陸上動物として供えていた飢餓状態に陥った時のエネルギー、水分の補給となっていましたが、今日では、若い女性のヤセ志向に対して、よく理解されなければならないことです。生まれてくる低体重児出産が問題になっています。中高年の肥満では、むしろ健康的にやせるダイエットが必要とされる時代になっています。バランスの取れた食生活が望まれます。
厚生労働省では、食生活改善のために、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の概念を導入した取組の推進。加工食品や外食への過度の依存、食卓を中心とした家族団らんの喪失が見受けられ男性の肥満や若い女性のやせの増加などがみられることから、「食事バランスガイド」の普及活用し、国民一人ひとりの食生活改善に対する自覚を高め、日常生活での実践を促進させることなどに取り組んでいます。
参考資料として 食生活指針 ☆ 食事を楽しみましょう ☆ 1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを ☆ 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを ☆ ごはんなどの穀類をしっかりと ☆ 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて ☆ 食塩や脂肪は控えめに ☆ 適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を ☆ 食文化や地域の産物を活かし、ときには新しい料理も ☆ 調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく ☆ 自分の食生活を見直してみましょう として示しました。
メタボリックシンドローム予防への取り組み
マグネシウムでメタボリックシンドローム予防
動脈硬化には、血流改善、代謝にマグネシウムが関係してきます。最近多い体調 不良はMgの不足といわれ動脈硬化、いらいら、震え、不整脈、片頭痛が起こりやすいといわれます。血流がよくないことが関連づけられています。加工食品が多いとミネラル不足に陥りやすくなります。特に摂取量の多い炭水化物の代 謝に必要でメタボリックシンドロームとの関係が深いマグネシウムの不足はありませんか。
平成20年度(2008年)から40歳以上でメタボリックシンドロームの危険性の高い健康保険加入者への健康指導が義務付けられます。「メタボ予防サービス」に保険会社の参入が相次いでいます。メタボリックシンドロームの根絶には、食生活の改善、運動の励行など生活習慣の抜本的な改善が求められます。
ある意識調査において外食料理や加工食品の栄養成分表示を参考にしてメニューを選ぶかの問いに対しほとんど参考にしないが女性で14.7%なのに対し男性ではその倍以上の37.6%にも上っています。食事づくり(食品の買い物、調理)の頻度でほとんどしない男性が7~9割もあり、「自分の健康は自分で守る」ことが実証されたような結果ともいえます。
メタボリックシンドロームから脱するには、予防法として「一無二少三多」が提唱されています。 つまり(一無:禁煙)、(二少:小食の腹八分目の食事、少酒でほどほどのお酒)、(三多:多休の十分な休養ね睡眠をとる、多接で多くの人・物・事と接し創造的な生活をしてストレスを解消する)といったことが重要としています。内臓脂肪を減らすような努力、食事への関心を持つことが必要です。
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