遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

本谷有希子「甘え」

2010-12-30 23:50:50 | 読書感想文
せりふの時代 2010年 08月号 [雑誌]
クリエーター情報なし
小学館


岸田戯曲賞作家の本谷有希子の最新作ということでいいのかしら。
ハタから見ればまったく理解のできない壊れた関係性なのに、会話を聞いているうちに「ああ、そういうこともあるかもしれないな」と納得させられる。
会話の中にいちいちヒネリが効いている。笑いがなくても、絶対に退屈しない会話構成力。武器に例えるならやっぱり「斧」。相変わらずの破壊力で、ねじ伏せられるのが心地よい。
で、ぐにゃぐにゃした人間関係の微妙な「アヤ」をぐにゃぐにゃしたまま伏線にして、ヒロインの女性が変化していく様子に現実味を持たせる。自意識をこじらせた女が何故壊れるのか、どうやって壊れるのかをイヤらしく丁寧に描く。
主演は小池栄子。納得。
「一般的」という言葉からは遠いところにある価値観をすぐ隣にあるかのように描ける。
何とかどうにかして、マネしたい技術だ。
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私の嫌いな10の人びと

2010-12-29 21:57:07 | 読書感想文
私の嫌いな10の人びと (新潮文庫)
中島 義道
新潮社


筆者の中島義道は、ネガティブも極めれば職業になるという、恐るべき人生実験の被験者として気になっていたんだけど、ようやく読むことができた。
嫌いなのは、「笑顔の耐えない人」「常に感謝の気持ちを忘れない人」「みんなの喜ぶ顔が見たい人」「いつも前向きに生きている人」などなど。
読むとすっきりするのは、うすうすそういう人たちを見たときに感じる「絶対に認めなければならない窮屈さ」を代弁してくれるからだろう。
目次見るだけでもオススメ。
「わが人生に悔いはない」と思っている人に対して「さっさと満足して死になさい」と書いてある。すごい。
共通するのは、「どんなに良いことしていても、それは良いことがしたいからやってるんだろう。自慢するな」という感じか。
解説が麻木久仁子というのも味わい深い。
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小林カツ代の忙しいからできる!料理とおやつ

2010-12-28 23:25:18 | 読書感想文
小林カツ代の忙しいからできる!料理とおやつ (講談社プラスアルファ文庫)
小林 カツ代
講談社


ミュージシャンは、見た目がダメでもお金がなくても、人間的に最悪でも、歌さえよければモテるのではないかと思う。少なくとも、そういうイメージがある。
「歌」にはそのくらいの力がある。
「文芸」や「話芸」は、「歌」に比べて絶望的に弱い。
「最後に唄ってしまえばなんとかなる」というのが、ミュージシャンという人種なんだと思う。
その「歌」に匹敵するものがあるとすれば、それは「料理」かもしれない。
もちろん、小林カツ代は見た目がダメでもお金がないわけでも人間的に最悪なわけではない。そんな弱者でもない人が「金棒」を持ってしまったのだから、人間的に「ズルい」。
本書で言えば、家庭における「おせち」のあり方の話が季節柄も含めておもしろい。
いろんな料理研究科がいるけど、力の抜き方に無理を感じないところがすばらしい。
小林家の子になりたかったと心底思う。
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知識ゼロからのジョギング&マラソン入門

2010-12-27 20:42:27 | 読書感想文
知識ゼロからのジョギング&マラソン入門
小出 義雄
幻冬舎


書いてあることは本当に基本的なことで、素人と自称できない自分にとっては物足りない。

 Q:ウォーキングからジョギングに移るとき、腕の振りや脚の上げ方は変えるのですか?
 A:走り出せば、誰だって腕も脚も走る動きになるよ。考えることじゃないんだ。

こんな具合。
雑なようでも、あの小出監督だし必要最低限のことは書いてくれているので、本当の初心者向けの本としてはいいんじゃないかと思う。あれもこれもでわけがわからなくなるなることもないし。
ただ、ひとつひとつのアドバイスよりも、本全体から漂ってくる「走るのは大げさなことじゃないだよ」という雰囲気のほうが良い。
ランニング愛も感じるので、読んでると走りたくなるし。
好きな人なら勝手にこだわりたいところをこだわればいいんじゃない…という感じ。
ランニングに興味のある人が、気になるところを読んで、気に入ったところだけを実践すればいいんじゃないかしらね。
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増田明美の「テレビでマラソンを楽しく見る方法」

2010-12-26 21:46:43 | 読書感想文
増田明美の「テレビでマラソンを楽しく見る方法」
増田 明美
双葉社


増田明美が何者なのかということは、ずっと前から気になっていた。
マラソン中継を好んで見るようになってから、ずっと解説をやっているような気がする。プロレスにおける山本小鉄、サッカーにおけるセルジオ越後と同じくらいの存在感がある。
17歳でマラソンの日本最高記録(当時)を出しているとか全然知らなかった。解説が馴染みすぎて現役のイメージがない。
本書は1994年発行。著者が30歳の頃だから、見方がけっこう偏っていて、かえっておもしろい。日本人は自分の美学やプライドにこだわって走るんだ、とか書いてるし。
もともとはガチガチの管理主義で結果を出した選手だったけど、アメリカ留学を経て自分自身で物事を考えるようになったそうだ。
そんな著者は否定していたけど、「月のきれいな夜にハスの葉の上で最高の走りをしている」イメージで走るという「走る=修行」観は、たまにやってみると面白そうだなと思った。
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ひとりたび1年生

2010-12-25 20:46:03 | レポート
ひとりたび1年生
たかぎ なおこ
メディアファクトリー


ほんとは「マラソン1年生」を読みたかった。
図書館の予約が40件以上はいってて断念。
しょうがないので、同じ著者の他の作品から「ひとりたび1年生」を選ぶ。
走るようになってだいぶん変わったけど、これまで自分が経験した旅は大体一人旅で、不完全燃焼になることが多かった。世の一人旅モノはどうしているのか気になったわけだ。
「ひとりたび1年生」はそのまんま一人旅の旅行記。
ひとつの表現としてアリなのかしらと思うほど等身大な姿勢で、あちこちの観光地へ一人旅している様子をレポートする。
それでも、見ず知らずの人のなんでもない旅行記って案外おもしろかったりするから困る。
なんか表現上のテクニックとかコツのようなものもあるんだろうか。等身大に見せかけて。イラストが大きいんだろうけど…。考え込んでしまう。
行き先には長野の善光寺もあった。長野に1年住んでたのに、結構知らないこともあって愕然。
観光って奥が深い。
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恋愛戯曲

2010-12-24 21:24:56 | レポート
恋愛戯曲 [DVD]
クリエーター情報なし
よしもとアール・アンド・シー


入れ子構造は芝居をわかりにくくして、さも高度なことをやっているように見せかけるには便利な手法だと思う。
それはともかく、わかりやすいとは言わないけれど、それなりに楽しく見ることができた。
まわりくどい書き方をしたけど、鴻上尚史作品としてはもの足りない。鴻上脚本は鴻上演出じゃないと難しいのかしら。
「美人の女流脚本家」という物語の典型を入れてきたのはワザとだと思うんだけど、予想以上に広がらない。
たぶん入れ子構造の深度が高い方がより理知的であったり人間的であったりするほうが、逆転現象が起きておもしろいんだろうけど、そういう風には見えなかった。
そう書いていたのに役者・演出が答えられなかったか、そもそも脚本レベルでそうなっていなかったのか、判断が付かない。
もう一度見ればわかるんだろうけど…たぶんこのDVDではもう見ない。
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内澤旬子「世界屠畜紀行」

2010-12-23 21:23:42 | 読書感想文
世界屠畜紀行
内澤 旬子
解放出版社


名著だわ。肉好きは必読。
屠畜(家畜を肉にすること)をテーマにした本や映像にありがちな説教臭さがまったくない。過剰に挑発的だったりもしない。
淡々としたイラスト。
気取らない目線、ユーモア。
牛や豚のようなメジャーな家畜からエジプトのラクダまで幅広い。この本一冊に費やされた時間や労力を思うと「そんなに屠畜が好きなのか」と呆れつつ、効率の悪すぎる仕事ぶりに尊敬してしまう。
特におもしろかったのは、韓国の犬肉。
筆者は「それまで犬が好きだということと犬肉を食べることに、何の矛盾を感じたこともなかった。」とあっけらかんに言い切る。本文中にも書いてあるけれど、日本のイルカの問題とワンセットになっていて面白い。
本文中には書いてないけど、筆者は去年、ダンナと別居して豚を肉にするまで飼ったんだとか。筋金入りだ。

※その様子がブログになってた。
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演劇公社ライトマン「制服」

2010-12-22 21:11:29 | 演劇を見てきた
あけぼのA&Cセンターへ演劇を観に行く。
行くたびに「もう大丈夫だろう」と思いつつ、迷う。開演ぎりぎりに到着。
安部公房の戯曲を演劇で見るのは初めて。
いろいろ文学的な解釈もできるんだろうけど、結論のない袋小路に陥ってしまった死人たちが、主人公の「制服」に八つ当たりするしかない状況に、もの悲しさとバカバカしさを感じて笑ってしまう。役者陣の演技力があってこそ。
余計なエピローグがないのもありがたい。他所のオリジナルの芝居を見て、「ここで終わってくれたら気持ちいいのにな」というところで終わった試しがないんだけど、今回は過不足ない感じで、いい余韻が残った。
改訂の多い作品のようなので、どの長さを選ぶかは企画者のセンスになると思うけど、そういう意味でも良かった。
既成の短い本をやるのは、制作的には難しいんだけど、もっといろいろ見てみたいと思う。
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糸井重里「インターネット的」

2010-12-12 21:27:35 | 読書感想文
インターネット的 (PHP新書)
糸井 重里
PHP研究所


今更と思いながら読む。
「インターネットの本質とは何か」という内容だけど、煮詰めると「ツイッターの本質とは何か」とそのまま言い換えられそうでおもしろい。出版は2001年。
人と人が「リンク」する時に相手の情報を収集すること、面白いことを「シェア」すること、情報の前で人は「フラット」になること、ぜんぶツイッターの得意分野ではないか。
ずいぶん先を見ることができる人だなあ。
他には、「消費のクリエイティブ」という言葉も面白かった。自分なりに解釈すると、情報やサービスが仕事になると、決して「消費」と「生産」が対義語にならないんじゃないかということ。
いくら先生に教えたって生徒が能動的に消費しなきゃ、意味ないものね。
この辺はおもしろいけど、インターネットもツイッターもそんなに関係がない気もする。読み方間違えたのかな?
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