遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ソイ・チェン監督『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』

2025-02-05 00:14:00 | 映画を見てきた

2025/2/5

・難民として香港に来たチャンが、マフィアから逃れて九龍城砦で暮らすようになるが、すぐに新しいトラブルに巻き込まれる話。

・1980年代の設定。九龍城砦が立体迷宮化している。

・チャンは、九龍城砦のリーダー格であるロンの庇護を受け、そこの生活に馴染んでいく。

・九龍城砦には様々な事情を抱えた人々が暮らしている。無法地帯のようで、その中には秩序がある。

・アクションを楽しむ映画なのかと思っていたけど、九龍城砦内部の生活描写にかなり重きを置いている。

・龍も理髪店を営んでいる。叉焼丼おいしそう。

・九龍城砦は行き場を失った人を受け入れてくれる場所と言われている。現実もそういう場所だったのかな。

・わりと最近の話なので、九龍城砦とそれを取り囲むような近代的な建物のギャップ。この場所がやがて淘汰されていくことが予感されて、寂しい気持ちになる。

・女を折檻死させた男がきっちり退治されている。フィクション特有の最短距離で悪人が退治される。

・建物のオーナーにしてもマフィアのボスにしても、見た目はただのおじいちゃんだし、別に強くなくても成立するポジションなのに普通に強くてびっくりする。

・ずっと監禁状態だったということは屈しなかったのか。

・懐かしのハイエイトチョコで変装するチャンがかわいい。かわいいけど、さすがにちょっとあざとい。

・チャンは、仲良くなった仲間たちと四人でつるむようになる。言葉ではなく、組んだ麻雀牌を見て三人が察する。チームとして魅力的。

・一人一人が抜群に強いというわけではなく、むしろ周囲の老人連中のほうが強い。

・あと、敵方にひとりヤバいのがいる。

・ラジオ番組アトロクの元名物プロデューサー橋本吉史さんによく似ているという話を先に聞いていたせいで、そういう風にしか見えない。立ち振る舞いが完全にヒールレスラーのそれ。

・たしかに『タマフル・ザ・ムービー』で暗黒サイドに落ちた彼を思わせる。敵として抜群の存在感。

・デタラメな気功と硬直を使い、手が付けられない。

・男塾に出てきた驚邏大四凶殺の第二の凶とほとんど同じような戦闘を生身の人間でやっていた。終盤の展開もそっくり。

・こういうところにアクション映画の伸びしろがあったりするのかもしれない。

(2/5サツゲキ)

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畑博之監督『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』

2025-02-04 17:33:48 | 映画を見てきた

2025/2/5

・ある初音ミクが自らの表現に限界を感じて若い人間の歌い手たちに教えを乞う話。

・初音ミクのことはほとんど知らない。どちらかと言うとゆっくりボイス派(たぶんそんな派閥対立はない)。

・SNSで結婚したと言い張る人を見て、みんなの共有財産に対してひどいことをするなあと思ったくらい。

・本作では、さまざまな初音ミクとボーカロイドたちが人間たちと交流しながら、人に届く音楽を模索する。

・初音ミクの協力者たちが各所で活動する群像劇のような見せ方。

・人数が多いわりにアニメにしか登場しないようなステレオタイプが多く、発声や会話のテンポがなかなか肌に合わない。

・ただ、そこに初音ミクの更に人工的な会話が加わることでかなり緩和される。むしろ、聞こえ感がおもしろくなる。

・ただ、初音ミク以外のボーカロイドは聞いてられないくらい人工的で、歌のための人工音声だから仕方ないんだけど、もうちょっと見せ方がありそうな気はする。

・特に説明もなく、生身の人間が架空空間を行き来してボーカロイドのキャラクターたちと交流する見せ方はおもしろかった。

・象徴的にそういう見せ方にしているだけで、同じようにボーカロイドに影響を受けて音楽活動を始めたり、楽曲を作ったりしている人は現実にもたくさんいると思う。

・夢やぶれて絶望している人間に歌声が届かず、初音ミクが落ち込んでしまうという理屈。

・ただ、大体の夢は破れるものだし、次のステップに進むための絶望という面もあるんだから、無理に元気づけようとしなくていいのではないかと思う場面が多かった。

・受験でイライラしている女の子も無理に関わろうとしなくていいと思う。

・自分の声が届かないというなら、本当にどうしようもない絶望は他にある。

・たぶんミュージカル系のアニメでよくあることなんだろうけど、終盤のライブシーンでアニメとしての動きが急によくなる。

・初音ミクの気持ちを汲んだ生身の人間たちがすばらしいパフォーマンスをする。

・結局、人間素晴らしい(=人工音声の限界)でまとめられたように見えるけど良いんだろう。詳しい人には何か別の見方があるんだろうか。

(札幌シネマフロンティア)

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ロバート・モーガン監督『ストップモーション』

2025-01-20 19:03:00 | 映画を見てきた

2025/1/18

・ストップモーションアニメ作家の母親を手伝う娘が、自身の表現を追求するあまり、取り返しのつかないことになってしまう話。

・オープニング。娘の顔に光が当たるたびに、本人なのか母なのか人なのか人形なのかよくわからなくなっていく映像が怖い。あと、最初から目が疲れる。

・彼女は、病気で精密な作業ができなくなった母親を手伝って、パペットを動かす。

・母の操り人形が、人形の実物を扱う構造。そして、家族としても作家としても母親の強い影響下にあって、常に精神的な檻に閉じ込められている状態。

・ご丁寧に劇中劇のストップモーションアニメも、少女が小屋に閉じ込められる話。

・ワックスで作られた少女。汚いし、素直に見た目が怖い。ボコボコに殴られたような顔。

・ピングーはコウテイペンギンらしいけど、ワックス人形ならフンボルト属のどれかになると思う。

・実写映像とストップモーションアニメの映像が交互に出てくる。

・生身の人間と無機物の人形との境界線をあいまいにしていく見せ方は魅力的だけど、思いついても実際に作れるかどうかは別。

・ホラーは比較的低予算で作れるジャンルだと思うけど、ストップモーションアニメを組み込むことで製作のハードルが跳ね上がっている。

・ホラー映画なのにやたら芸術点が高い。

・露悪的な表現も多いけど、最後にきれいにまとめている。

・本物の死体を使えば禍々しい表現ができるという発想が浅はか。「芸術家気取り」。まさに。

・意識不明の母親の体を使って、ストップモーションアニメごっこしているのが一線を越えている。でも、似たようなことをやってる作家なら意外といそう。

・ストップモーションアニメは、1秒の虚構を作るために100倍の時間は使うので、現実が虚構に飲まれることはなさそうな気がする。実際、どうなんだろう。

・頭の中で何度も動きをイメージするだろうから、逆に想像に飲まれちゃったりもするのかな。

・最後の最後まで付き合った恋人はホントにえらい。

・彼がハッピーエンドを迎えるためには、どうしたらよかったんだろうと考えてしまう。

(サツゲキ)

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竹林亮監督『大きな家』

2025-01-04 19:24:08 | 映画を見てきた

2025/1/1

・東京のとある児童養護施設で暮らす子供たちを年少から順番に撮影して構成したドキュメンタリー。

・見たばかりのMONDAYSの監督が地味なタイトルの映画を撮ったと知って興味を引かれる。

・施設がきれい。子供たちは結構しっかり食事できるし相応の学校にも行っている。自分の中の養護施設のイメージがずいぶん古臭いものだったことに気づく。

・最初に、ピクサーの映画に出てきそうな見た目と喋り方の女の子が出てきて、建物の中を案内してくれる。

・屈託なくてかわいい。だからこそ、不特定多数の目に晒される映像作品で見ることに後ろめたさも感じる。

・親がそばにいる子役タレントならともかく、複雑な事情を抱える子供のプライバシーは別物だろうし。

・作り手側はそのあたり百も承知だろうし、配慮も感じる。

・この見せ方でなければ伝えられないものがあるのもわかる。

・映像にしても写真にしても、思い出を記録に残すのは根源的な楽しさのひとつ。

・何事もなければ、出演者たちが10年後20年後に懐かしむ宝物のような作品になると思う。

・フライヤーの記載通り、作中では、子供たちの家庭環境には触れず、一人一人の生活を注視している。

・不幸な出来事を見せ場にしていない。

・時々子供たちの言葉にそれっぽい表現は出てくるけど、どの年代の子供たちも悲壮感を表に出さない。

・衣食住の心配が不要なのは大きい。施設の大人ががんばっている。映像外の苦労もたくさんありそう。

・「逆に恵まれているのでは」と思っては否定する。これが本来の姿だし、恵まれて見えるなら目標にするべき。

・ほとんどの子供が、施設で一緒に暮らす人たちのことを聞かれて「家族」と表現することを避けている。

・「他人」という言葉も頻繁に出てくる。

・かと思うと、退所した20歳の男の子が施設に顔を出すと、まるで実家に帰省したかのようにふるまう。

・よく考えれば、夫婦だって最初は他人だし、心からお互いを家族と思えるようになるには、それなりの時間がかかるというだけなのかも。

・NPO叩きがビジネスになる残念な世の中なので、広く見られることがいいこととは限らない。

・良識のある大人だけに見てほしい作品だった。

(札幌シネマフロンティア)

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パブロ・ベルヘル監督『ロボット・ドリームズ』

2024-11-15 22:08:24 | 映画を見てきた

2024/11/14

・主人公と通販の人型ロボットが仲良くなっていくが、いろいろあって離れ離れになってしまう話(ネタバレ回避のふんわりあらすじ)。

・ごくシンプルな絵柄の長篇アニメーション。

・ロボ以外の登場人物は擬人化した動物。

・主人公は犬。表札はDOG。

・うれしくなると尻尾をフリフリするのかわいい。

・ただ犬要素が話に関わるのは海開き後の砂浜だけ。

・見た目は動物でほぼ衣服を身に着けていない。

・ギャグっぽく見せてはいるけど、海のときだけ水着をつけていたり、グンゼっぽいパンツが干してあったりするのを見ると、この世界の衣服の概念がよくわからない。

・食料事情も。肉とか食べるのかな。

・主人公はどうやって生計を立てているんだろう。

・『オッドタクシー』みたいに、擬人化に意味があるような作品のほうが異端だとは思うけど、以降の作品なので何かあるんじゃないかと期待してしまう。

・電話が存在する世界なので、音声言語がある設定なのに頑なに話さない。話せば早いことをゼスチャーでやっている。本作においてはその制約があんまりしっくりこない。

・三幕構成だったけど、途中までこの話がどこに転がっていくのかよくわからず、不安になる。

・ボーリングのボール目線の風景とか、色素入りジュースを飲んだ雪だるまの顔とか、鳥の鳴き声がロボットの内部で反響する感じとか、細かいところを楽しむ。

・それぞれの新しい門出を寿ぐタイプの恋愛映画みたいにまとめているけど、主人公とロボットの関係は恋人や親友と言うよりも飼い主とペットに近い。

・マグショット撮られるくらい執着していたのに、解放されてから主人公は自分が楽しむことばかりやっている。

・ロボットとの出会いをきっかけに、内向きの主人公の心が解放されていく話を狙っていたんだろうか。

・ただ、その間、ロボットは放置され続けているので、彼にとってロボットとの出会いがそこまで重要ではなかったように感じてしまう。というか、所有物に過ぎないという感じ。

・アンチ『her』なのかな。

・ただ、新しいロボットとの接し方に、過去のミスが人を成長させるというポジティブさを感じる。

・三幕目だけ見るときれいにまとまっているんだけど、ロボットの「夢」とどうつながっているのかがよくわからず。

・最後もロボットの夢かもしれないと思ったりした。まだ砂浜で寝ているのかも。

(サツゲキ)

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安田淳一監督『侍タイムスリッパー』

2024-11-11 21:11:12 | 映画を見てきた

2024/11/11

・幕末、会津の侍である高坂が、闇討ちのさなかに140年後の未来に飛ばされ、時代劇の斬られ役に転身する話。

・本物の侍がタイムスリップして、現代の時代劇に紛れ込むというコンセプトは誰でも思いつく範囲。

・アイディアは凡庸でも具現化するのは簡単ではない。

・時代劇の役者と140年前の侍を、フィクションの枠組みなかで差別化して見せなければいけない。

・そのあたり、主演の侍を演じた山口馬木也さんの演技力で何とかしていた。

・最初はメイクと衣裳の違いでわかりやすいけど、だんだん生活に馴染んできて、髪の毛、服装、行動までも現代化していくので、どんどん演技の難易度が上がる。

・髪の毛も服装も行動も現代人なのに、それでも幕末の人っぽい雰囲気を残せるのがすごい。

・本物の侍→時代劇の斬られ役に転身という、話の根幹部分に結構な飛躍があると思うけど、あんなに真正面から説明されたら納得せざるを得ない。

・現代社会に不慣れな人を茶化すような、ありがちなカルチャーギャップ描写はほとんど省略されている。

・むしろ、知的で謙虚、辛抱強さ、それゆえの著しい環境の変化に対する適応力。

・東北の人の良いパブリックイメージそのままの人柄で、好感度がすぐに上がるように作られている。

・「侍として生きたい。元の世界に戻りたい」となりそうなものを「豊かな日本になっていて嬉しい。自分の侍としての役割は終わった」と思える度量。

・こういう話だと支援者側の誰かは「昔の侍が現代にタイムスリップしてきた」と信じてあげるものだけど、それはしない。本人も説明しない。

・最初から最後まで記憶喪失でおかしなことを言っているおじさんとして認識されていて、展開のスピードアップに繋げている。

・時代劇というフィクションへの愛情を描く作品のなかで、本物の侍だからリアルな演技が見せられるというテーマ上の矛盾をどう解消するのかも難しいところ。

・歴史上の悲劇、終盤の見せ場、助監督の最後のリアクションを絡めて、エンタメの枠内で絶妙なところに着地させていたと思う。お見事。

・やや過去の話で、2024年現在の時代設定では成立しない話なのかと思うとちょっと苦い気持ちになる。

・助監督の眼鏡にレンズが入っていないのはずっと気になった。

(11/11 TOHOシネマズすすきの)

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阪元裕吾監督『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』

2024-10-12 00:31:21 | 映画を見てきた

2024/10/10

・殺し屋女子のコンビが、出張先の宮崎でモグリの殺し屋を粛清しようとする話。シリーズ三作目。

・殺し屋としての有能さと、それぞれ違うベクトルで世間に馴染めないというギャップのある二人が、お互いの弱点を埋め合うように暮らしている。

・今回は主張先が舞台とあって、殺し屋としての仕事シーンが多く、日常要素は抑えめ。

・それでも打撃、関節、乱戦、タイマン、銃に刃物、色々なバリエーションでアクションを楽しむことができる。

・特に刃物を使った戦闘は見ていて本当に緊張する。

・スピード感は他と変わりないし、他の戦闘シーンの撮影より事故率が高そうな感じがしてしまう。

・まひろ役の伊澤彩織さんは、実際に動きが早いし、体格のいい男性と一対一で戦っても遜色なく動ける。ここまで戦闘に特化している役者さんは少ないと思う。

・年齢を重ねれば見せ方も変わってくるだろうし、たぶん今見ておくべき役者さんのひとり。

・もう一人のちさとは、髙石あかりさんが演じる。社交性は高いものの、すぐにキレ散らすし、協調性が全くない。カタギの仕事は無理という説得力がある。

・基本的にアクションよりも演技の人という印象はあったけど、一作目から比較するとアクションの頻度も増えている。ポイントになる姿勢がかっこいい。最後の一撃にも意表を突かれた。

・主役二人のキャラがしっかりしているぶん、敵役はもちろん、新しい登場人物の造形は本当に難しいと思う。

・今回は、池松壮亮さん。あまりアクションのイメージはなかったけど、真面目が行き過ぎて底が見えないという深みのある悪役だった。

・サブマシンガンを乱射するところの全く飾り気のない服装が好き。

・前回もあったけど、決着直前に小休憩するのよくわからなかった。

・殺し屋としての正義を全うした最後のハンカチのシーンは、物語が線でつながった感じで、見ていて気持ちよかった。

・今回も清掃班の二人が楽しい。有能なのに頭のネジが一本抜けている感じ。癒し枠。

・水石亜飛夢さん演じる田坂。あの情緒不安定な話し方、どんな心持ちで演技すればああなるんだろう。

・元々のターゲットの存在が軽すぎて、新ターゲットの餌にしかなっていないところもおもしろかった。

(サツゲキ)

※コラボドリンクと特典ステッカー。

 

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ゲイビー・デラル監督『アバウト・レイ 16歳の決断』(PARCO TOP CINEMA 2024)

2024-09-18 00:13:00 | 映画を見てきた

2024/9/15

・トランスジェンダーの子供を持つ母親が、彼の性適合手術の同意書にサインするため、自身の過去の過ちと向き合わざるをえない状況になる話。

・初めてのPARCO屋上。壁にスクリーンが貼られている。アウトドアチェアと人工芝シートがある。

・人工芝シートを選択。雨の影響か、スペースに余裕があったので両足を伸ばせる。解放感。

・一般的なチケット代なのに、ワンドリンクorホットドッグがついていた。ホットドック旨い。

・原題は「3 Generations」。レズビアンの祖母とトランス息子の間で、母親が振り回される。

・さらに同意書へのサインを渋る元夫との対決。

・レイはうまくいけば歓喜するし、うまくいかなければ露骨に機嫌が悪くなる。決して優等生というわけでもなく、親の気苦労がうかがえる。

・レイ自身の結論は動かないので、トランスジェンダーの話というより、トランスジェンダーの子供を持つ親の話になっている。

・祖母のカップル。長年レズビアンとして世間と戦い続けてきた猛者らしい風格がある。

・娘が床で倒れていても、まったく動じない。ちょっと冷たさを感じる宣告にも意味を感じる。

・それでいて、ユーモアと娘や孫への愛情も漏れ出ている。靴を取りに行くくだりもかわいらしい。

・彼女の中でトランスジェンダーとレズビアンの区別があいまいになってしまうところも味わい深い。

・それなりに問題のある、わだかまりしかないような三人の親が直接顔を突き合わせて、レイのための決断をくだすところがよかった。

・結論は最初から出ている珍しいタイプの話なんだけど、一歩踏み出すのに時間がかかる。「大人なのに」なのか「大人だから」なのか。

・ネタバレしちゃうけど、暗い話にはならないので、興味のある人はどんどん見たらいいと思う。

・上映後の解説で、司会の方が当事者キャスティングに触れていた。マイノリティ全般を題材にする作品群に広がる、よい補足だった。

・この時期にしても結構寒かったけど、特別な体験だったので機会あればまた参加したい。

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押山清高監督『ルックバック』

2024-08-07 23:49:59 | 映画を見てきた

2024/8/6

・マンガ好きの藤野が、小学校の学級新聞から、商業誌に掲載される現在に至るまでマンガを描き続ける話。

・藤野と相棒の京本が、直接的に間接的にお互いの背中を追い続ける話でもある。

・原作も映画も絶賛している人が多いが、自分には原作があんまり刺さらず、ちょっと身構えながら見始める。

・小学生藤野の描いた支離滅裂なマンガから始まる。

・原作はもっと内省的な話だと記憶していたので、シュールでポップな絵柄と動きに、警戒心が解かれる。

・とにかく背中を見せ続ける話。背中という主題への作り手の自信というか、信頼が伝わってくる。

・たぶん作者お気に入りの背中のフォルムがあって、それは男子よりも女子のそれなんだろうなと思ったりする。

・単純に絵を描き続ける描写が何度も繰り返される。

・同じことの繰り返しに見えて、少しずつ遠いところへ遠いところへと進んでいく。ボレロみたい。

・藤野は二回前進を止めてしまう。どちらも相棒の京本がきっかけ。そして、再起のきっかけも京本。

・踊りながら畦道みたいなところを歩くのかわいい。

・藤野と京本がお互いに追う追われるという最小要素でお話を作っている。

・おそらく、その関係性は二人とも死ぬまで続く。

・二人の絵が並べられた学級新聞。

・京本の絵は上手いけど話の中身はなさそうに見える。

・なので、藤野とそこまでの差はないんだけど、小学生であの画力の差を見せられるのは厳しい。先生むごい。

・もういいやではなくて、発奮できるのが才能。

・一度は描くことを諦めるが、それもやり切った後。

・それでも藤野に卒業証書を預ける担任。リスクもあるだろうに、京本の親経由とかで何か聞いていたのかな。

・顔の描き方が緻密。アニメでここまで書き込みできるものなんだ。止め絵の使い方がうまいのかな。

・個人的に声優特有の様式的な演技はちょっと苦手なんだけど、本作ではかなり抑えられている。

・イフに魅力があるのは確かだけど、実際に何が起きたのか素直に考えると、全部藤野の自己完結じゃないかと思わないでもない。それを考えるのはたぶん野暮。

・本作はすべての作り手に捧げられた話なので、『往生絵巻』で言うところの屍から蓮華の白い花が咲くタイプの話なんだと思う。

(札幌シネマフロンティア)

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『ラーメン赤猫』(先行劇場上映)

2024-06-21 12:43:28 | 映画を見てきた

2024/6/21

・猫たちが運営する「ラーメン赤猫」が、初のにんげんを雇い入れ、新しい体制を迎える話。

・テレビアニメの先行上映。上映時間は短く65分。

・原作は、いま自分が一番読み込んでいるマンガ。

・近いうちにテレビや配信で見られると思うけど、TOHOシネマのサービスデーに背中を押される。

・来場者プレゼントは書き下ろし風の色紙。かわいい。

・ステッカーが良かったなと思っていたら、もう少し待てばもらえたらしい。残念。

・原作1巻の城崎君が出てくる「マスクドエンジニア」のところまで。

・猫がラーメンを作ったり、接客したり、経営したりする、多めにファンタジーが入っている話なんだけど、猫ならではの言動や制約をうまく取り入れていて、虚実の塩梅が絶妙な作品。

・アニメの場合、マンガより自然に見ていられる幅が狭まるので、最適解を出すのがかなり難しい。

・個人的に違和感が抜けなかったのは唯一の人間である珠子で、それなりに色々経験している社会人なのに顔が小学生みたいに幼く見える。

・一部のアニメヒロイン特有の様式で描かれた感じ。

・あと、大変だっただろうなと思うのがクリシュナ。

・従業員で唯一の虎。見た目の迫力と、内面の繊細さとのギャップが魅力。

・声質からどうするんだろうと思っていたら、かなり繊細で気弱そうな方向に振り切っていた。

・アニメ化による絵の単純化もあって、虎ならではの迫力は抑えられ、だいぶんキャラクター化している。

・熊だけど、プーさんみたいな。

・どうやっても何かしらの違和感はあるだろうけど、性格と声質は合わせなくても良かったような。

・他の猫も猫っぽさは少なくなって、猫というより猫モチーフのキャラっぽく見える。

・でも耳がキュキュッと動くところは猫っぽい。ぽふぽふ拍手が音で聞けたのもうれしい。

・人間よりも動物のほうが描き方に専門技術がいりそうだし、劇場アニメならもう少しこういうところが増やせたのかなと思ったりする。

・画面の隅で見切れているような常連客描写も見どころなので、配信が始まったら見返したい。

・外待ちのリーゼント御所川原さんは見つけた。

(6/20 TOHOシネマズすすきの)

※ステッカーはパソコンに貼るもの(色紙はどうしよう)。

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