遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

日穏-bion-『月の海』

2025-01-23 14:41:50 | 観劇三昧

日穏-bion-『月の海』(観劇三昧)

2025/1/23

・認知症かつ寝たきりの母と暮らす静の家に、5年前に行方不明になった兄にそっくりの泥棒が現れる話。

・類型は結構ありそう。

・本作では、母は兄のことを気にかけていたため、偽物なのに介護の上では重要な役割を担うことになる。加えて、介護疲れ気味な静の精神的な支えになっていく。

・なので、バレるバレないという話については、話の焦点にはあんまりなっていない。

・バレてない前提で話は進みつつ、演技でバレているんだろうなとわかるくらいの塩梅。むずかしい。

・行方不明の兄と、彼にそっくりな泥棒を同じ俳優が演じる。別人だから演じ分けはするけど、やりすぎると騙される周囲がバカっぽく見える。特にバレていないという前提なので加減が難しい。

・「匿ってやるから母の介護をしろ」という展開もありえそうだけど、意図的にそのあたりボンヤリさせているようにも感じる。

・介護の辛いところや、人間関係の不穏さのようなものはほとんど描かれていない。語り口が穏やか。

・登場人物も、泥棒の相方が悪そうなくらいで善人しかいない。

・全体の中間ちょっと手前で正体を疑うというか、偽物だと気付く人が現れる。構成きっちりしている。

・AVつながりの知り合いはかなり偶然性が高い。

・あの状況で口止め料いるんだろうか。

・泥棒の手際が、本当に今まで何度もやってきたのかと思うくらい悪い。せめて留守の家を狙えばいいのに。

・プリンをたくさん出してくるところ、善意のブレーキが壊れてしまっていて楽しい。

・根がひねくれ者なので、泥棒を繰り返す悪党がこの家族にほだされるところや、認知症の母の最後のメッセージが素直に信じられなかった。

・少し昔の話かと思っていたら、ポケモンGOが出てきたので、わりと最近の話だった。ああいう防犯意識ゼロの地域って今どのくらいあるのかな。

・マルティン・ルターの金言「死は人生の終末ではない、人生の完結である」は知らなかった。応用も利きそうだし、知らん顔して使いまわしたい。

・バレてからが潔い。ちゃんとキレ散らかして同情させない。きっちり線を引く。ある意味、誠実だった。

 

《詳細》(観劇三昧HP)

■公演時期 2018/07/16

■キャスト
内浦純一
岩瀬晶子
宮地大介
堂免一るこ
宮内勇輝(劇団フルタ丸)
藍原直樹
田川可奈美
本田和大
たんじだいご

■スタッフ
企画・脚本:岩瀬晶子
演出:たんじだいご
演出助手:佐藤萌子
照明:松本永(eimatsumotoCo.Ltd.)
音響:平井隆史
舞台監督:村信保(劇団キンダースペース)
舞台美術:吉野章弘
宣伝美術:松浦周作(㈱マッシュルームデザイン)

■あらすじ
仕事を辞め結婚も諦めて実家で母の介護に専念している望月静は、認知症が進行した母の介護に限界を感じ、借家を明け渡すタイミングで老人ホームに入所させることを決心する。
自宅での最後の時間を楽しんでもらいたいと願う静だったが、母は5年前に行方不明になった静の弟・豊に会いたいと言って困らせる。そんなある日、死んだと思っていた豊が突然帰って来る!?
親の介護という身近な話題を軸に「家族」や「いのち」をテーマとした主人公2人の再生物語。
笑って泣けて、最後に心がじんわり温かくなる日穏テイスト満載の舞台。

 

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青年団『ちっちゃい姫とシャベルン博士』

2025-01-11 22:07:41 | 観劇三昧

青年団『ちっちゃい姫とシャベルン博士』(観劇三昧)

2025/1/11

ちっちゃい王国のちっちゃい姫が、イチゴの呼び名をサンゴやイチヨンに変えるという話から、言葉の意味について学んでいく話。

隣国の王子たちはホントにしょうもないけど、すぐに軌道修正できるのは見どころあるのかもしれない。

メロンの種類や、湖、池、沼、水たまりの違い、シャベルとスコップの違いなど、意味のグループわけを紹介する。

並行して、お化けがやってきて、伝統の「志村後ろ」をやったりする。

子供の反応が活発で、この古典的な演出がいまだに現役で通用するというのが発見だった。

そこから、お化けと幽霊と妖怪がどう違うのかという話。関係ないようで繋がっている。

特別な物には別の名前が付くという話できれいにまとめられたと思うけど、子供たちにはちゃんと伝わったんだろうか。

色々な例が挙がっていたけど、そこだけ伝わっていれば成立する話だったと思う。

《詳細》(観劇三昧HP)

■公演時期 2024/08/12

■キャスト
森岡望
村井まどか
髙橋智子
永田莉子

■スタッフ
作・演出:平田オリザ
美術:杉山 至
音楽:やぶくみこ
照明:井坂 浩
舞台監督・映像・音響操作:島田曜蔵
衣裳:正金 彩・中原明子
制作:太田久美子
企画制作・主催:一般社団法人江原河畔劇場

■あらすじ
ちっちゃい姫は、いろいろなモノに興味を持つお年頃です。「どうしてイチゴは、イチゴって言うの?」
「どうして国によって言葉が違うの?」そんな無理な質問をして家来たちを困らせます。
世界中の言葉を知っているシャベルン博士がやってきて、姫に少しずつ、言葉の不思議について教えてくれます。

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青年団『ちっちゃい姫とハカルン博士』

2025-01-06 23:28:40 | 観劇三昧

青年団『ちっちゃい姫とハカルン博士』(観劇三昧)

2025/1/6

ちっちゃい王国の小ささが不満な姫を、従者と博士がなだめようとする児童劇。

姫がなぜ不満なのかを客席の子供たちに予想してもらったり、クイズを出したり、積極的にコミュニケーションをとっている。

実際、子供たちの反応もいい。

おおきいちっちゃい、ひろーいせまい、たかーいひくいという印象的な曲がリフレインされる。やはり児童劇に音楽は欠かせない。

「サンドイッチは自由です。いくら王様と言えどもサンドウィッチの自由を奪うことはできません」という、よくわからないけど、かっこいいセリフ。

姫と博士は色々なところを回って、色んなものを測る。測れないものもある。

途中でまばたきガマン競争に参加したが、真剣にやったのに3秒も持たなかった。

大きさはあくまで相対的なものだという方向なのかなと思いつつ、意外とふんわりまとめた感じだった。解釈は子供たちにゆだねるということなのかもしれない。

 

【詳細】(観劇三昧HP)

■公演時期 2024/08/12

■キャスト
森岡 望
村井まどか
永田莉子
福田倫子

■スタッフ
作・演出:平田オリザ
美術:杉山 至
音楽:やぶくみこ
映像:陳 彦君
照明:井坂 浩
舞台監督・映像操作・音響操作:島田曜蔵
衣裳:正金 彩・中原明子
制作:太田久美子
企画制作・主催 一般社団法人江原河畔劇場

■あらすじ

ちっちゃい国のちっちゃい姫は、でっかい国の大きい王子にいつもいじめられています。
ちっちゃい姫は、何でも測れるハカルン博士に頼んで、ちっちゃい国にある大きなものや長いものを捜す旅に出ます。
二人は、いろいろなものを測っていく中で、世界には、測れないもの、比べられないものがあることに気がついていきます。

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KUROGOKU『DOLL』 《Team R》

2024-10-07 00:40:53 | 観劇三昧

KUROGOKU『DOLL』 《Team R》

2024/10/6

・宿舎のルームメイトになった高校生五人が入学して高校生活を送り、結果入水事件を起こす話。

・1983年の戯曲。もう古典と言ってもいい有名作だけど、上演しているのを見たのは初めて。

・年代は作中でも言及される。

・今は技術の変化が目まぐるしくて通信機器ひとつでもノイズになりかねないので、変に濁すよりもはっきり年代に触れたほうが書きやすいのかもしれない。

・髪型も1983年時を意識している。

・それぞれ全く異なる個性の生徒たちが同じ部屋で生活をするので、軋轢もあるが、なんだかんだでお互いを許しながら暮らしている。

・今の感覚だと、仮に校則や法律が許したとしても、自分以外は非喫煙者しかいない室内でタバコを吸うのは論外なんだけど、そのあたりもなあなあになっている。

・その生徒がまさにそのタバコで停学になりそうになり、なぜか他のルームメイトが彼女に謝る流れになっている。喫煙者の自業自得としか思えない。

・同じようなやりとりは他にもあって、男の子の告白を受け入れられなかった女子が、他のルームメイトに責められる。

・特に責めていた生徒は完全にただの嫉妬なのに、なぜか振ったほうが悪者扱いされている。

・自分に合うか合わないかなんて、実際にやりとりしてみるまでわからなくて当然だろうに。

・フラれた当てつけに自殺未遂するようなやつはフラれて当然。

・そういう理不尽さや、その場の雰囲気に流されている感じも、高校生らしいと言えばそうなのかもしれない。

・ただ、死ななくてもいいのにわざわざ死ぬような人たちが、最後に感動的な雰囲気を出しているのは乗りにくかった。

・エピローグ風のシーン、やっぱり死ななきゃよかったのに。

・ルームメイト五人がそれぞれの抱えている問題が順番に明らかになっていく。

・各演者の細かい表情の作りこみや言い立てもうまくいっていたと思う。練度が高い。

・それぞれ見せ場があってやりがいがありそう。

・最初に圧倒的な勢いで駄々をこねている生徒がかわいい。

・実生活でもあんなに全力で駄々がこねられたら気持ちよさそう。誰もいないところで試してみたい。

 

■詳細(観劇三昧HP)

■公演時期 2023/10/19

■地域 関東

■キャスト
佐々木奈緒
倉田みどり
菅原茉利奈
小橋杏佳
柳町明里(劇団身体ゲンゴロウ)
元山日菜子
石田梨乃
藤山ももこ
中前涼眞
畳谷洋登
小坂広夢(声の出演)

■スタッフ
原作:如月小春
企画・製作・演出・照明:黒柳安弘(KUROGOKU)
舞台監督・美術:藤田清二(工房 F)
音響:松本将太
舞台・宣伝写真:野村尊司(KUROGOKU)
映像撮影・編集:中島一人(ハートライン・ピクチャーズ)
編集:黒柳安弘(KUROGOKU)
宣伝美術:平井辰夫
フライヤーモデル・ヘアメイク:柊みさ都
当日運営:水沢 綾
制作・衣装:大澤このみ(KUROGOKU)

■あらすじ
進め! 進め! 進め!
泣き寝入りの少女たちよ
今こそ我らは汝らに告ぐ
時来たれり
ただちに哀しみの冷たい壁を打ち破り 我らと共に進軍せよ
ありとあらゆる艱難辛苦をのりこえて 何があろうと生きようとせず
決して生きようとせず
我らと共に進め! 進め! 進め!

初演から40年。今なお褪せることなく輝きを放つ、如月小春による珠玉の名作

何故、少女たちは水になったのか

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Nibroll/ミクニヤナイハラプロジェクト『リアルリアリティ』

2024-03-18 18:02:03 | 観劇三昧

2024/3/18

プロジェクションマッピングとコンテンポラリーダンスと音楽を組み合わせた舞台芸術。

ダンスは演劇ほど演者の表情に焦点がないので、見た目が暗くなりがちなプロジェクションマッピングとは相性がいいのかもしれない。

最初パネルに、不自然な姿勢で首を吊る人々の映像がたくさん映し出される。

自分にはタイトルと、実際の表現の関係性はよくわからなかったけど、とりあえず生と死のモチーフが繰り返し出てきているよう。

数字の海に流されていく死体のようなもの。

暴力や戦争のようなもの。棺桶のようなもの。

地層のように世代が移り行く感じ。

衣裳を脱ぐ動きが多いのも代謝の表現なのか。

なので、テニスと新体操っぽい部分は唐突な感じはした。

もともとダンスと親和性の高い音楽に、照明効果も加わって多層的に見られる仕組み。

というか、照明効果が強い。

ダンス全般の話になってしまうけど、どうしても演目の感想というより、その演目を見た自分の感情の説明になってしまう。

 

《公演詳細(観劇三昧HP)》

■公演時期 2015/01/23

地域 関東

■キャスト
鶴見未穂子
森井淳
石垣文子
小山衣美

■スタッフ
映像:高橋啓祐
音楽:SKANK/スカンク
美術:カミイケタクヤ
照明:ヤン・ベッカー
衣裳:稲村朋子
音響:須貝一也
舞台監督:鈴木康郎・湯山千景
チラシ:カミイケタクヤ・岡本健+
企画・制作:precog

■あらすじ

【EPAD】

「リアルリアリティ」 身体を省略し拡張する 人はできるだけ動かなくてすむようにテクノロジーを駆使するそれに抗うつもりはない 楽がいい それでもどこまで省略しようとするのか ふと不安になる 人々の想像は 遥か彼方にある場所や 過去や未来にある時間をあたかも今ここにあるかのように具現化しようとする それでも人は遠くでおこっている悲劇を想像することすらできないそこにある身体を共有することができない なにもない場所に立ち リアルのない時間を過ごし 言葉のない声を聞き カラダのない人に出会う 死はすぐそこにあり 無限で 確定的で生きることはいまここにあり 限りがあり 不確定な未来にある 身体がなくてもいい時代を生きる私たちが実感できる身体をさがす 私たちは生きています

EPAD・・・「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業」
(文化庁「文化芸術収益力強化事業」)の略称です。
本サイトでは、同事業において、新旧の舞台芸術の映像を配信できるように権利処理した作品に【EPAD】の印をつけています。

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株式会社オフィスインベーダー『飛び降りたらトランポリン』

2024-03-08 10:20:23 | 観劇三昧

2024/3/7

疫病の感染者を殺す花火を発明した男が、感染者を殲滅したい権力者と、感染者たちの間で板挟みになる話。

主人公はヒラガバンナイという発明家で、コロリという病原体、エレキテル、からくり人形の女の子を発明しているという、江戸時代風のファンタジー。

コロナ禍以前の2008年の作品で、今はたまたま『オッペンハイマー』が話題。

疫病と大量殺人兵器を扱って全体的にコメディタッチなのは、どうしても隔世の感を抱いてしまう。このころは平和だった。

たぶん今上演したら全然違うタッチになるんじゃないかと思う。

目まぐるしくシーンが変わっているのに、高低の演技スペースと下段台部分をうまく使いこなしていて、転換方法の手数が多い。

演者の技術は全員安定していて、特に刀の使い方が全員すごくきれい。そして速い。

ほとんどの感染者が死んだだろうに、超自然的な力でヒロインだけ生き残ったのはハッピーエンドでいいのかどうかはよくわからなかった。

 

《作品詳細(観劇三昧)》

■公演時期 2008/06/03

■キャスト
白川侑二朗
弓削智久
堀田ゆい夏
佐久間麻由
東勇気
竹口龍茶(はえぎわ)
沖本健吾
小坂逸
安心くり太郎
斉藤きこり
若狭ひろみ
石澤智
田中圭

■スタッフ
作・演出:なるせゆうせい
舞台監督:西廣奏
照明:加藤学・中村浩平
美術:袴田長武・鴉屋
音響:田中亮太
音楽:佐藤こうじ(SugerSound)
衣装:片岡京子(業)・西垣彰彦(業)
宣伝美術:下川大助
振付:市川紅菊
演出助手:小林真二
制作:五十嵐珠実・冨田日出子
プロデューサー:上野真香人

■あらすじ
最後に奇跡しか信じられなくなった女の子、
最後まで自分しか信じられなかった女の子
そして、ひらめきを待ち続ける男

傾いた時代に翻弄されながらも、自分の信念を貫いた男と、
その男を取り巻く人々で構成された新世紀群像劇
果たして、世の中を少し明るくする閃きは訪れるのか

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マチルダアパルトマン『すべての朝帰りがいつか報われますように』

2024-03-06 00:17:39 | 観劇三昧

2024/3/5

一年前に公園で死んだ一人の男を偲んで、彼と因縁のある女性たちが集まって缶蹴りをする話。

夜の公園という、なにかと若者たちをそわそわさせるロケーション。

年齢的にも世代的にも缶蹴りはないだろうと思うけど、それをさせてしまう夜の高揚感には何となく覚えがある。

ピザは選んでいる時が一番楽しいという話に共感する。

何事もサクサク決められる人をうらやましく感じることは多いけど、うだうだ考える楽しさもある。

たぶんサービス精神だと思うんだけど、カメラが近めなのと、時間の編集が入っているので、舞台をどうやって使っているのか、場面転換をどう見せているのかがよくわからなかった。

個人的な好みかもしれないけど、時間の編集が入ると、演劇を見ている感じが結構目減りする。

団体のことも作品の内容も知らなかったけど、とりあえず見てみるかと思えるくらいにはタイトルが好き。

 

《公演詳細(観劇三昧)

■公演時期 2021/03/02

■キャスト
早舩聖
松本みゆき
かすみまい
小久音
久間健裕

■スタッフ
脚本・演出:池亀三太
撮影・編集:市川唯人
録音:長濱元希
音楽:大垣友

■あらすじ
彼氏の借金肩代わりにヤクザに売り飛ばされる女。
数年ぶりに突然やってきたかつての親友。
恋人から逃げてきた幼馴染。
それぞれの夜はいくつかの朝を迎えて、同じ夜に繋がっていく。
すべての朝帰りがいつか報われますように。

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アガリスクエンターテイメント『令和5年の廃刀令』

2024-02-27 00:17:00 | 観劇三昧

2024/2/26

・帯刀が常識となった令和五年の日本社会で、廃刀令の是非を問うタウンミーティングの様子を描いた話。

・『12人の怒れる男』『12人の優しい日本人』と同じ系譜の話。実際、展開も似ている。

・登場人物が事件をほぼ他人事として扱う「~優しい日本人」に比べて、各々の信念や利害がしっかりしている。

・結果、支持派と否定派の入れ替えによる起伏は少なめで、どちらかというと人物描写に重きを置いている。

・裁判員裁判よりもっと非現実的なシチュエーションだからこそ、登場人物の実在感が大切。

・肯定派と否定派のバランスをとるのはとても難しいけど、かなり注意深く練りこまれていたと思う。

・最初の「刀は日本の心」おじさんの言っている理屈は、そのまんまアメリカの銃規制反対派に置き換えられる。

・帯刀という現実の日本人から見るとバカバカしく思える風習でも、アメリカなら銃規制反対の人は普通にいるので、最初にこの言い分を持ってきたのはうまい。

・早いうちに「元々刀はごく少数の武士のものなので日本人の心と言うのはおかしい」というツッコミが入ったのもスッキリする。

・是非はともかく、理屈はわかるという主張が多くてタウンミーティングとしての質が高い。

・「抑止力は機能していたのでは」というツッコミがあったけど、抑止力と反撃能力は違うので違和感あった。戦闘になった以上、抑止力は機能していない。

・スマ刀から票取りのための駆け引きが始まるのも見ごたえがあったけど、二択を迫られたら投票は厳しい。

・自分があの場にいたら棄権するかも。

・ある種の政治家らしさを完璧に具現化した榎並夕起さん。正面を切るだけで笑ってしまう。ズルい。あのキャラクターがいるから、他の人も動きやすくなる。

・淺越岳人さんもよかった。弁が立ち知識もあるのに倫理観がおぼつかなくなっている作家。

・髭とガタイの良い作家に既視感ある。西村賢太さんかな。

・現実問題、傘ですら邪魔なのに、あんなに長くて重い鉄の棒の携帯が一般化することはないとは思う。自転車に乗るときにめちゃめちゃ邪魔そう。

・それでも思考実験として面白かったし、本作品より現実の国会中継のほうが作り物っぽいのは、ほんとに何とかならんものかと思ってしまう。

 

《公演詳細(観劇三昧HP)》

■公演時期 2023/05/01

■地域 関東

■キャスト
淺越岳人
伊藤圭太
榎並夕起
鹿島ゆきこ
古谷蓮
前田友里子
矢吹ジャンプ(ファルスシアター)(以上アガリスクエンターテイメント)
江益凛
斉藤コータ
声の出演:北川竜二

■スタッフ
脚本・演出:冨坂友
文芸助手・オーサリング:淺越岳人
演出部:川嶋芙優(片岡自動車工業)
衣装・映像・スタッフロール:榎並夕起
小道具・題字:前田友里子
配信・撮影:ニュービデオシステム
スチール撮影:石澤知絵子・井上亮二
宣伝美術・デザイン:津和野諒
制作:佐伯凛果
制作助手:樫村健人
プロデューサー:佐野木雄太
製作協力:Cuebicle
協力:オフィスキール・片岡自動車工業・CRAPER・コメディユニット磯川家・チーズfilm・俳協・ファルスシアター・大和田あずさ・竹田ユウヤ
企画・製作:アガリスクエンターテイメント

■あらすじ

―どうやら、日本初の廃刀令が出るかもしれないらしい。

二〇二三年、相次ぐ刀剣による殺傷事件を受けて、世間では一般市民の帯刀を規制する気運が高まる。
歴史上初めて出される「廃刀令」をめぐり、国内の世論は真っ二つに。
全国に先んじて条例を検討し始めた**区はタウンミーティングを実施。

そして、八人の男女が集められた。

これは、明治期に廃刀令が出されなかった世界の会議コメディ。

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「『池袋ポップアップ劇場 season2』Vol.11」

2024-01-30 15:38:00 | 観劇三昧

『池袋ポップアップ劇場 season2』Vol.11

2024/1/29

・4団体の20分程度の短編演劇4作品を上演。

シンクロ少女『レディ・オブ・イーストタウン』

・余命幾ばくもない男が、同郷というだけでほぼ他人の元オリンピック選手に最期を看取ってもらおうとする話。

・その奇妙な状況に至る経緯についてはほぼ説明がない。

・元選手の女性は50歳を超えて、人生がうまくいっていない。身につまされる。友達できてうれしそう。

・「タトゥーと人間性は関係ない!」。たしかに。

・ああいう感じで元気なまま死ねるなら悪くなさそう。

HYP39Div『万歳夫婦』

・夫婦漫才の夫のほうが、妻への嫉妬を拗らせて離婚寸前になるが、妻が陰で夫に尽くしていたことを知って、漫才の本番中に和解を試みる話。

・妻役の表情豊さんの声質、圧力がものすごく漫才師っぽくて聞き心地がよい。

・ギスギスしたつかみ合いからの喧嘩→左右にふっとぶ動きをくりかえすところ、何かおかしくて笑った。

・序盤の夫の嫉妬ベースのモラハラ感がエグいので、本当にハッピーエンドになっているのかよくわからない。

かわいいコンビニ店員飯田さん『どこよりも、あと少し。』

・助成金の申請期限ギリギリの状況で、バンドのメンバーが書類を作成しようとする話。

・「会ったらお金のことばかり」と言われていたけど、誰も大してお金の話はしていない。すぐ話がそれる。

・それどころかバンドの話もほとんどしていないので、バンドにも金にも興味ないのかなと思ってしまう。

・そのイライラする感じを楽しめばよかったんだろうか。

・明らかに助成金は手遅れなので、損失を減らす方法や負債の分担を話し合ったほうがいいと思う。

アナログスイッチ『池袋7時18分発 山手線内回り 5号車』

・満員電車の車内、乗客の男性が、iPhoneのAirDrop機能でメッセージを交換していた見知らぬ女性の正体を探ろうとする話。

・現代劇における新しい通信手段はすぐに廃れるけど、ここまで限定的だと時代が変わってもアリなのかも。作中で説明できているし。

・序盤の複線をきれいに回収している。前振りもしっかり拾っているけど、医者の可能性はなかったんだろうか。

・本来なら相性の悪そうな、都市伝説っぽい状況と、現代のテクノロジーをうまく融合させて作られていた。

 

【詳細(観劇三昧HPより)】

・公演時期 2022/09/28
・地域 関東

・キャスト
■シンクロ少女 泉政宏/横手慎太郎/中田麦平(以上、シンクロ少女)/加藤美佐江
■HYP39Div. 表情豊/金田侑生
■かわいいコンビニ店員飯田さん 家入健都/植万由香/江原パジャマ/高畑裕太(ハイワイヤ)/三浦葵(劇団いいのか・・・?)/村田正純
■アナログスイッチ 渡辺伸一朗/雨宮沙月(以上、アナログスイッチ)

・スタッフ
■シンクロ少女 脚本・演出:名嘉友美 
■HYP39Div. 脚本・演出:表情豊 
■かわいいコンビニ店員飯田さん 脚本・演出:池内風 
■アナログスイッチ 脚本・演出:佐藤慎哉

・あらすじ

観劇三昧×Mixalive TOKYO
『池袋 ポップアップ劇場 season2』
一度に4劇団×20分の短編演劇を楽しめるショーケースイベント

「いろんな演劇を楽しみたい、でも何を観に行ったらいいか分からない…」
「気になる劇団・役者さんがいるけど、観に行くのはなかなか踏み出せない…」

そんな隠れ演劇ファン、観劇初心者の方にもカジュアルに演劇を楽しんでいただける「池袋ポップアップ劇場season2」が、サブスク配信として帰ってきた!
▽詳細は公式HPをチェック!
https://popup.kan-geki.com/subscription/

【開始秒数】
「レディ・オブ・イーストタウン」1:13〜(1:47~)
「万歳夫婦」21:34~(21:55~)
「どこよりも、あと少し。」47:39~(48:07~)
「池袋 7時18分発 山手線内回り 5号車」1:10:44~(1:10:54~)

【作品詳細】(出演順)
各作品のあらすじは公式HPの「サブスク配信」>「作品紹介」から確認できます。

■シンクロ少女
「レディ・オブ・イーストタウン」

■HYP39Div.
「万歳夫婦」

■かわいいコンビニ店員飯田さん
「どこよりも、あと少し。」

■アナログスイッチ
「池袋 7時18分発 山手線内回り 5号車」

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ShowCaseBar「TOY+」〜その1 まだ支度中ですよ〜

2024-01-10 00:24:30 | 観劇三昧

ShowCaseBar「TOY+」〜その1 まだ支度中ですよ〜

2024/1/9

開業準備中のカフェで、たまたまやってきたお客さんを相手に、三人の店員がダンスを披露する話。

演劇作品というより、演劇やダンスをする人たちを題材にした映像作品になっている。

最初にダンスに対して厳しいダメ出しが行われている様子が映る。

最近、演劇の現実の現場でパワハラが話題になることが多いので、ちょっとハラハラする。

記号としての鬼演出みたいな表現なんだけど、こういう部分から直していかなきゃいかんのかなと余計なことを考えてしまう。

ダンスは、いろんなところで活躍されている方々のようなので、素人が見てもかっこいい以外の感想がむずかしい。

二人組が前後の立ち位置で合わせて踊るところは新鮮に感じた。

ダンスとダンスの間の極端な掛け合いはにどういう気持ちになればいいのかよくわからなかった。

意図的に茶番感を出して観る側の敷居を下げようとしているのかな。

目の前でプロレベルのダンスを見ることはほとんどないから、手品のクロースアップマジックが一ジャンルになっているように、こういうカフェの在り方も面白いのかなと思ったりした。

 

詳細(観劇三昧HP)

■公演時期 2020/08/16
■キャスト
椙山さと美
みお(nuance)
峰ゆとり
浅野康之

■スタッフ
演出・脚本・振付家:浅野康之
音響:大畑修平
照明:佐々木夕貴
音響プランナー・照明プランナー・衣装デザイナー・舞台美術家:浅野康之
楽曲提供:佐藤嘉風(KAFU RECORD)
映像プランナー:浅野康之

■あらすじ

【ShowCaseBar「TOY+」とは?】

「ドラマが振付する」をモットーに、劇団鹿殺しや劇団KAKUTA、劇団Patch、劇団ミスマガジン、他映像作品、横浜発のアイドルユニット「nuance(ヌュアンス)」などに振付を提供している振付・ステージングチームTOYMENが自らの振付を気軽に楽しんでいただくべきしてオープンしたダンスBar喫茶です。読み方はトイプラ。

今作品の第1回目はCOVID-19の影響で配信でのオープンになったものの、2回目以降は実際お酒を楽しんでいただきながらTOYMENメンバーでもあり「TOY+」の店主でもある浅野康之、通称YASU主導のもとお洒落なバー喫茶で会話も楽しみながらパフォーマンスを楽しんでもらう予定です(2020年11月現在)!生配信用に創られた今作品は、お客さん目線でワンカットで物語が進行しています。30分ほどの手頃に観られる作品です。普段、劇場で行われるような作り込まれた美術がきちんとあるわけでもないですしとてもシンプルな作品ですが、もどかしい情勢の中、たくさん悩み、配信で誰かを楽しませることができるのではないかと手掛けたモノのウチのひとつです。

ShowCaseBar「TOY+」〜その1 まだ支度中ですよ〜は浅野康之が、敬愛する佐藤嘉風さんの楽曲を使わせていただいております。誰の心にも広く受け入れられる、ポップで、海の景色や匂い、稲穂が風に揺られてる田舎の情景などがすぐそこに感じられるような優しく愛のある自由な曲と思えば、時には時代の最先端をいくような機械的で緻密に練られた衝動的な狂ったような曲を創られる佐藤嘉風さん。素晴らしい楽曲を創られる佐藤さんを知っていただくきっかけのひとつにでもなればとても嬉しいです。

【出演】
椙山さと美
みお(nuance)
浅野康之

【構成・演出・振付】
浅野康之

【楽曲提供】
佐藤嘉風

EPAD・・・「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業」
(文化庁「文化芸術収益力強化事業」)の略称です。
本サイトでは、同事業において、新旧の舞台芸術の映像を配信できるように権利処理した作品に【EPAD】の印をつけています。

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