2024/10/18
・戦時中、江別で木製戦闘機の開発に携わった人々が満足な成果を得ることなく終戦を迎える話。
・初演も見ているので、同演目二回目の観劇。
・「博士」は当時作られていた戦闘機の愛称。
・「無駄」というのは、実戦に間に合わなかったという時期の話でもあり、木製戦闘機で戦おうとする発想そのもののことでもある。
・戦争の悲惨さをセンセーショナルに見せるような作りではなく、地続きのはずの戦場と目の前の作業に追われる日常との乖離を見せる方針。
・戦場で肉親が死んでも死んだという情報しか残らない。
・大規模な自然災害もそうだけど、誰でも有事に直面するまでは平時。ネット社会の現代ですら、平時に有事のことを想像するのは難しい。
・滑走路を組み込んだ美術がかっこいい。上部のガラス部分の曇りも味がある。高村由紀子さんの舞台美術はいつも楽しみ。
・初演の記憶がそんなにあるわけではないが、にぎやかな女工三人の掛け合いの練度が上がっている。
・最後のお菓子を食べるシーンで「いただきます」と手を合わせるところ。頭で考えていたら、あんなにリズムよくできないと思う。
・温水元さん演じる所長の語り口が軽快。間の取り方やスピードがお客さんの呼吸を感じながら話してるよう。
・人は弁当箱の包みをくわえたまま話せるものなんだ。
・本庄一登くんの見た目の威圧感がすごい。特別な服装ではないのに、当時の雰囲気を感じさせる着こなし。
・見た目から女工三人との対比ができている。
・映画『風立ちぬ』で描かれていた、技術者の喜びと人殺しに携わる苦悩との葛藤を思い返すと、どこまで爽やかな青春劇として描いていいのかという疑問は残る。
・それも国の中枢と地方の温度差とは言えるのかも。
・アフタートークは作演出の町田誠也さんと街歩き研究家の和田哲さん。
・史実と創作の違いなど。宿探し以外は大体もとになるエピソードがあるとのこと。
・質問コーナーで、客席にも江別の方や作品関係者の方が来場されていたことがわかる。
・近現代の史実を題材にしている以上、上演して終わりではなく、現実との関わり方も重要になる作品なんだなと勉強になった。
(10/18 15:00 生活支援型文化施設コンカリーニョ)