遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

関野吉晴ゼミ・前田亜紀著『カレーライスを一から作る』

2018-08-24 11:08:24 | 読書感想文

 

カレーライスを一から作る: 関野吉晴ゼミ (ポプラ社ノンフィクション―生きかた)
クリエーター情報なし
ポプラ社

2018/8/24

どのくらいイチから作るかというと、畑を耕して種を植えるところから。

肉は雛から貰ってくるし、器は土から作る。買えば1時間くらいで済むところを9ヶ月かける。

武蔵野美術大学のゼミなので、参加者は大学生が中心。社会人も参加できる。

教授は探検家で医師でもある、関野吉晴さん。

ちょっと前に流行った命の教室のようなことも起きる。家畜とペットの違いは大学生でも線引きが難しい。

それでも「大事に育ててきたのは食べるためだ」と言い切れる意志の強さと、その言葉の責任を取る誠実さは大学生ならではかも。

逆にもっと年取っちゃうと、そのへんなあなあにしてしまうんだろうなと思う。

自分でもよっぽどの事態にでもならないと、無理。

そんな「正しさ」とは別に、やらかしてしまう松永さんに興味がつきない。

オチもふくめて愛らしくてたまらない。

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『世界の”現実”旅行』(全7回)

2018-08-23 01:40:06 | NETFLIXで観た・その他

2018/8/19

・ジャーナリストのデヴィッドが、世界各地の負の遺産を巡る。全8回。

・原題はそのまんま「ダークツーリズム」。邦題の意図はよくわからない。

・メキシコでの不法入国体験ツアー。本物の元密入国斡旋業者が運営しているそうだ。

・一応真似事なんだけど、犯罪者集団が本物の銃を突きつけてくるし、実際バンバン撃ち出すし、いつの間にか麻薬密売人扱いされるし、想定されるトラブルが本気すぎる。

・映画『ノーエスケープ』を思い出しながら楽しむ。

・日本は原発。変なホテル。樹海。軍艦島。

・参加者全員が放射線計を持って原発の事故現場へ向かうツアー。

・数値が高くなった高くなったと大騒ぎしているんだけど、数値がバラバラなんだから機械のほうが安物なんじゃないのと思ったりもする。

・変なホテルというだけでも場違い感があるのに、デヴィッドとロボットとの会話が全然成立してなくて、技術大国らしからぬ残念な雰囲気に申し訳ない気持ちになる。

・広島や沖縄には行かないのに何で変なホテルがピックアップされてるんだ。

・あんなに福島でビビッていたのに、カザフスタンでは核爆発でできた湖で泳いでいる。変なの。

・射撃体験自体は海外なら珍しくないけど、カンボジアでは生きた動物を撃つことができる。

・いいブードゥー教と、あんまりよくないブードゥー教の祭り。

・体験感覚で入信できるのは面白いけど、鳩の血を体に塗りたくられるのイヤだな。

・いつか白人の大量虐殺が起きると信じているキリスト教の分派。スイドランダーというらしい。ほんとに虐殺がおきるかどうかはともかく、大きな災厄に備えて日頃から準備しているなら、大規模な天災には強そう。

・完全に観光資源化しているケネディ暗殺事件。

・ガチの拷問が味わえるアメリカのお化け屋敷は、事前に契約書を交わす様子から怖い。

・拷問の企画者は自分自身をエンターテイナーだと思っているのがすごいし、ホントにそれを求めて世界中から人が集まるのもすごい。

・全体的に、見るだけならほんとに面白いけど、体験するのはイヤという感じ。

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上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』

2018-08-22 01:01:09 | 映画を見てきた

※ネタバレ含みます。そして本作が好きな人は不快になる可能性があるので、自己責任でお願いします。

 

 

2018/8/20

・映像監督が、様々なトラブルを乗り越えて、生放送ワンカットドラマの撮影をやりきる話。

・最初にそのワンカットドラマを見て、後からそのドラマの舞台裏を見せる構成。あとでネットで確認してみたら、最初のドラマは37分あったらしい。

・ものすごくカメラが揺れる。他愛なく酔ってしまい、げんなりする。ずっと見ているのがとにかくしんどい。

・途中退出するよりはマシだと思って、できるだけスクリーンから視線をそらして、音と節目のシーンだけ見て、どうにか話を追う。

・『サイタマノラッパー3』の長まわしシーンもそうだったけど、カメラぐらぐら系は文字どおり生理的にあわない。

・思わせぶりなシーンやセリフが沢山でてくるので、このあとにネタばらしがあるのはわかるんだけど、ドラマ部分だけ観ればただの安っぽいゾンビ物。37分間ひたすら困る。

・『ラヂオの時間』の現実を突きつけられたような気分になる。どんな裏で面白いことが起きてても、現実はこれだぞという。

・ドラマ部分が終わった時点で完全に体力が底を付く。

・そのワンカットドラマの舞台裏を見せる後半では、ドラマ中にあった前フリを回収していく。

・身勝手な役者やクセのあるスタッフも『ラヂオの時間』の人物造形にかなり寄せている感じがするので後半部分も作り物っぽく見えてしまい、こっちも劇中劇構造なのかなと邪推してしまう。

・調整タイプの監督が、役に付いた途端に鬼監督になって、めんどくさい俳優にキレているところは笑った。

・妻が大暴れしているところ、遠心力に負けてすっころぶスタッフの躍動感、ヒロインの女の子がどんどん真に迫った表情になっていく様子、それぞれかっこいい。

・笑ったところも多いんだけど、完全に周回遅れで楽しんでいる感じ。

・あれだけ皆面白いって言ってるんだから、酔うほうが向いてないんだと思う。

・世の中で自分ひとりだけがそんなに楽しめていないような気がして落ち込む。

・ただ、ツイッター見てたら、松本幸四郎さんが納涼歌舞伎で「カメラを止めるな」と叫ぶシーンがあったらしく、ほのぼのする。そりゃ、芸能の一族がああいう作品見たら嬉しいはず。

・評判を先に聞いて、ものすごく期待値の高い状態で見たのも良くなかった。

・次は10~100倍くらいの予算で、ぐらぐらしない作品を作ってほしい。

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きまぐれポニーテール『アピカのお城』

2018-08-21 02:25:49 | 演劇を見てきた

2018/8/19

・8月18日の千秋楽に見に行く。

・シェアハウスにアラサーの女性たちが集まって、仕事や恋愛に悩んだり励ましあったりする話。

・基本的に可愛らしい女性が集まっているのに、その可愛らしさに依存せず、体も心も切り売りするようなネタを詰め込んでいる。

・全体的にテンション高め。話のつながりよりも、勢いで押していく進行。

・初演のときはわりとケラケラ笑って見てたんだけど、何年かたって切実さが増したのか、演出の方針なのか、だんだん笑いよりもそんなに頑張らんでもいいよと心配になってしまう。

・自分がここ数年で年を取ったのかも。

・オムニバスになっていて各話各人ごとに衣装がコロコロ変わる。

・キラキラした人たちの見た目がどんどん変化していく様子は明らかに手間過多で、それをやりきっているのがえらい。

・曽我さんの役の私服のダサさが絶妙。ああいうかっこうしたおじさん、よく見かけるような気がする。

・上腕二頭筋のエッジをしっかりキープしていたのもえらい。

・情宣やグッズ展開も含めて、公演全体から「できることは全部やるんだ」という強い意志を感じる。

・全体的に似たようなノリでぐいぐい来るので、五十川由華さんの的確な引きの演技が入ると安心する。扇の要のようなポジション。

・「フリーメイソン?」は二回目でもおもしろかった。

・三つ編みってあんなに早くできるもんなんだろうか。

・装置のうえのほうの黒い部分にも装飾が入ってて凝ってる。

・今はアラサーの話だけど、本当に面白いのは、人生の振り幅がより大きくなる10年後かもしれない。

・離婚結婚がかわいらしく見えてくる問題が色々出てきそう。介護とか自身の健康とか。

・なので、10年たったら続編作ったらいいのにと無責任に思う。

・ただし、あと10年たっても同じことを言っている可能性はある。

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ELEVEN NINES『十二人の怒れる男』

2018-08-19 00:47:26 | 演劇を見てきた

2018/8/17

・12人の陪審員たちが怒鳴り合いながら少年の有罪無罪を議論する話。

・舞台装置すごい。かでるの舞台の原形が残ってない。

・近くのお客さんが「プロレスのリングやん」って言ってた。抜き身の感情をぶつけ合う場。まさに。

・冒頭から役者間の緊張感がすさまじい。会話に無駄な間がほとんどない。鼻をすする音や足をタンタン鳴らす音まで計算に入っているように見える。演技というより演奏のよう。

・喋らない人の立ち位置とか、給水のタイミングとか、それぞれ存在の立て方と消し方が本当にうまい。

・タイトルどおり、色んな演技の引き出しを開けて怒っている。日常生活だと、怒鳴る大人を長時間直に見続けることはそんなにないので、見る側も結構体力を使う。

・不快なのは話し方なのか話の内容なのかは結構大事なポイントだと思うけど、この作品ではこのへんわりと直接的につながっている。

・「あいつらは簡単に人を殺すんだ」と主張している人がまさに簡単に人を死に追いやろうとしているところは、時代や場所が違っても通じる普遍的な構造。

・「十二人~」の名シーンと言えば、第一○号の差別的な演説で他の陪審員が一人ずつ彼に背を向けていくところ。

・ただ、今回はそのシーンはなくなっていて、ほかの十一人は椅子に座ったまま、彼の演説を聞く。

・映画の演出なのかと思ってあとで市販の戯曲を確認してみたら書いてあった。

・あそこは他の人が態度で「拒否」を示すことが大事なのかなと思ったけど、どういう意図だったんだろう。

・演出と脚本の一番派手なところをカットして役者さんの演技力勝負にしたかったのかなと思ったり。

・好きなシーンだったので「スポンジと生クリームに目茶目茶こだわったから、イチゴはのせません」と言われた気分。

・ただ、そういう要素も新しいチャレンジなんだし、たぶん若い役者さんが「いつか自分も」と思える志の高い舞台なのはたしか。

・この企画を立ち上げて、高いレベルで実現し、かつ続けていることがすごい。

・女性向けにもこういう戯曲があったらいいんだけど、なかなかそううまいことハマる作品はなさそう。

・最後の守衛の一音「へ?」でほっとする。いいガス抜き。

・でも、世間の人を代表した反応なんだろうから、本当のラスボスは彼に象徴される世間なんじゃないかと思ったりもする。

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デイブ・マッカリー監督『ブリグズビー・ベア』

2018-08-16 00:58:26 | 映画を見てきた

2018/8/1

特殊な事情を持ったジェームズが社会的に成功する話(ネタバレ回避のためのぼんやりあらすじ)。

事前情報をほとんど入れずに見たので、序盤の「いったいこれから何が始まるんだろう」というわくわく感がすごい。

かなりトリッキーな入口から、オーソドックスなものづくりの話になる。

拙さが逆に大衆に受けるという現象は、とてもよくあるパターン。

ただ、拙さと大衆受けが両立する創作物って、本来は意図的に作れるようなものではない。

大体はお話のウソで処理するんだけど、本作はその「確かに拙いが魅力的なもの」を全力で作っている。説得力がものすごい。

敵かと思ったら味方のポリスがかわいい。

創作者がどんな罪を犯していたとしても、創作物は許されるべきなのかというデリケートな問い。

創作者への単なる批判にも賛歌にもならないギリギリのところに着地していた。

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劇団リベラルシアター『IQ』

2018-08-08 01:32:15 | 演劇を見てきた

2018/8/7

・ついに完成した人造人間の教育方針を巡り、二人の科学者とそれぞれの仲間たちが争う話。

・自分はリベラルシアターの本公演が初めて。なので解散公演というお祭りに乗っかる資格はなく、できるだけ自然体で臨む。

・人物描写やお話自体はわりとざっくりしている。

・最低限のシチュエーションで役者陣の自由演技を楽しむ感じ。

・演劇で自由演技ってなんだよ(セルフツッコミ)。

・解散をネタにしたり、衣装をいじったり、メタ視点のネタが多い。

・きゃめさんのキラーぶり。客演だろうとなんだろうと容赦なくねじ込まれる無茶ぶり。

・自分は役者じゃなくてほんとによかったし、特にリベラルに出る役者じゃなくてほんとによかったと思ってしまう。怖い。

・ウケるウケないにかかわらず、あの場へ果敢に飛び込める人こそ役者の適性があるんだと思う。

・劇団代表チヒロくんのシーンを見ていると胃が痛くなる。ニシウリさんの名前は面白かったのに、出オチすら許されない修羅場。まわりの人が容赦なさすぎる。

・そして、デザイナーの精神状態が心配になる、さとしんくんの奇天烈な衣装。

・「よしきた! どいたどいた!」という面白いセリフ。

・そんな危ういバランスの中で緊張感を損なわず2時間やりきれるところが、何年もやってるチームならでは。

・劇団は解散しても個々の活動は続くからそんなにウェットにならなくていいんだろうけど、この場このノリを他の団体で再現するのは難しそう。

・ついさっきまで内輪ネタで盛り上がってたくせに、クライマックスになると「最初からずっとヒューマンドラマやってましたけど?」みたいなノリで熱演しだす神経の太さ。

・ほんとにだまされそうになるから悔しい。攻守の切り替えが早い。

・爆発エンドが作風にとても合っている(その後もちょっと続くけど)。

・解散する選択をした劇団の最後の作品が、研究を続ける選択をした科学者の話というのが趣深かった。

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タルザン&アラブ・ナサール監督『ガザの美容室』

2018-08-06 22:53:21 | 映画を見てきた

映画『ガザの美容室』予告編

2018/8/1

・パレスチナ自治区、ガザの美容室で、血なまぐさい外の喧騒をよそに、女たちがガヤガヤしたりギスギスしたりする話。

・日常と非日常の対比がこれでもかというくらいきっちり分かれている。

・『この世界の片隅で』も似たテーマの話だと思うけど、日本と同じ場所の別の時代ではなく、自分と同じ時代の別の場所の話。

・現在進行形の紛争地帯なので、非日常の部分の臨場感がものすごい。

・ただ漠然と「怖い地域」というイメージしかない紛争地帯にも確かに人間らしい営みがあって、自分と同じようなことを考え生きている人もいるということが実感として理解できる。

・そういう意味では見る前の予想どおりの話だった。

・予想以上だったのは登場人物の魅力。

・花嫁とその付き添い、クレーマー一歩手前の小うるさい女、臨月を迎えた妊婦、話好きなおばさんに、敬虔なムスリム。そんな個性豊かな10人の客に加えて、店長と彼女の娘、雇われ理容師。

・ほぼ12人の密室劇。

・この座組みで乗り物パニック映画でも作れそうな、周到かつ意地悪に計算された組み合わせ。

・花嫁がどんどん美しくなっていく横で、自分の老いを気にする女性が文句を言い続ける配置もかなり意地悪。

・脱毛のシーンや娘がちゅうちゅう喋ってるのがじわじわおかしい。

・各キャラの掘り下げが丁寧なので、たぶん紛争地帯の話じゃなくても、良質なコメディが作れたはず。

・なのに、緻密に練り上げた構成を、重火器の迫力で台無しにしている。

・もちろん、その台無し部分は他ならぬガザだからこそ生まれた作品の魅力ではあるんだけど、もっと無害で知的なコメディにも成り得た話だと思うと切ない。

・重火器の音が怖いし、なにより無粋。

・最後も本来あるべき別のラストシーンがあるような気がしてしょうがない。

・女性(本作中の話。本来は男性でもいい)が美しくなろうとするのは立派な文化だし、その敵は暴力なんだということもよくわかる。

・ライオン怖いし狂気しか感じないんだけど、あの地域ではどのくらいありうることなんだろうか。

※監督は双子だそうです。

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