遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

トム・フーパー監督『キャッツ』

2020-01-28 23:10:56 | 映画を見てきた

映画『キャッツ』メイキング映像(A Look Inside)

2020/1/27

・腕に覚えのある猫達が年に一度の舞踏会に集まる話。

・超メジャー作なのに舞台で見たことがない。原作は確か読んだ。なので、ほぼ初キャッツ。

・それが映画でいいのかなと思いつつ、巷の感想を見て怖いもの見たさが勝る。

・ただ、演劇自体を見慣れているのでそんなに不安はない。猫がちょっと人型だったくらいで驚いていては、名作『11ぴきのネコ』は楽しめない。

・とはいえ、わりと生々しいゴミの集積場っぽいところで、隙間隙間からどう見ても人型の何かが出てくるとギョッとはする。

・普通、舞台は全体で見るけど、映画は集中して見るのでデフォルメが効きにくい。苦手な人がいるのも納得。

・まず頭の中のメモリを「演劇9映画1」にしっかり合わせて見るのがコツ。

・最初に次々と個性的なネコ達が登場する。少年マンガなら選手入場シーンにあたる。一番盛り上がる部分なので楽しい。

・とにかく歌っている。普通のミュージカルと比べても多い。歌のシーンをバトルに置き換えたらドラゴンボールみたいになりそう。これはこれで楽しい。

・ぐうたら猫のところのネズミとゴキブリのシーンだけは気持ち悪かった。ネズミはほったらかしで、ゴキブリをボリボリ食べるのも変な感じ。

・ネズミに子供をキャスティングしたせいでコンプラ的に食べられなかったのかなと邪推。

・中盤の舞踏会が始まる手前。とにかく歌える踊れる人たちが集まっている、ただただ楽しいシーン。

・それでも、節々でCGなのかなんなのか、身体表現+αがあるように見えて、演者の身体能力の素晴らしさが目減りしているような。映画の効果が話を強化する方向に働いていない感じ。

・視覚表現がとにかく具体的なので、「手品と魔法は別なのでは?」と、たぶん舞台なら気にならなさそうなところも気になってしまう。

・気球も物理法則で飛んでいるように見えるので、ウルトラクイズの罰ゲームを連想してしまう。

・なかなか見る機会のない舞台とは違って、この規模の座組みいつでも楽しめるようになったという意味では貴重だし、実験映画としても興味深いものの、やっぱり舞台か、本気で撮影した舞台の映像を見たいなという感想に落ち着いた。

 

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「中学生サンピアザ短編演劇祭」

2020-01-27 11:03:11 | 演劇を見てきた

2020/1/25

・参加中学は8校。各校、初日2日目で演目を変えて30分程度の作品を2作品上演する(あいの里東は初日のみ)。

・当日の昼ごろに公演の存在を知って後半4作品のみ見た。

開成中等教育学校『合格ラインがやってきた』

・恋人どうしの59点と60点の間に合格ラインが現れて二人の仲が引き裂かれる話。

・点数の擬人化というパンチの効いた設定。0点と100点の仲がいいというちょっとした哲学。

・既成の本で45~55分想定。終盤カットしても不条理としてギリギリ成立している。後味の悪さも味。

・59点の憑依型の演技。熱演で崩れないのは大事。今後も演劇続けてくれそうかなと勝手に期待。

あいの里東中学校『かごめかごめ』

・百物語を終わらせた人が後ろの正面に取り込まれる話。

・率直に話が怖い。中学生がやる話なのかなとは思いつつも、作品としての完成度は一番高い。

・観客に後ろを振り向かせる演出や、音の響きも計算に入れた言葉の繰り返しも効果的。

・それなりに大人の手も感じられるけど、例えば知らん顔して大阪の30GPに参加したら、質的に結構いい勝負できると思う(人数的には難しくても)。

中央中学校『要求は金のエンゼルと…』

・立てこもりの強盗が人質と引き換えにしょうもない要求をする話。

・肩の力を抜いて見られる定番設定。規定演技だからこそ、発声や体の使い方、会話スキルのような演者の基本性能が問われる。

・ノイズの少ない警部役の演技が映える。

・細かい部分はともかく、きちんと客席に笑いが起きていたので、この演目の一番大事な部分はクリアしていたと思う。

札幌札苗北中学校『伝えたい、』

・演劇部の発表会直前、一番やる気のあった部長が交通事故死してしまう話。

・やる気のない時期の演技とやる気が出てからの演技を両方並べる見せ方。

・演技力が問われる仕掛けに挑戦するだけあって、みんな演技が見やすい。

・そのぶん、講評でも指摘されていた、照明の加減で表情が見えにくくなっていたのがホント残念。

・元々20~30分の想定だけど、ちょっとダイジェストっぽく見える。もう少し時間使ってじっくり見たい話だったかも。

 

・初日閉会式の立川佳吾くんによる全校一気講評は、ちょっとしたボーナストラックだった。

 

潤色もありますが、下記脚本がWEB上でも読めます。
びぶ屋大本堂 『合格ラインがやってきた』(作:加藤のりや)
はりこのトラのあな『かごめかごめ』(作:木野意多)
シアターリーグ『伝えたい、』(作:高橋和生)

※『要求は金のエンゼルと・・・』(作:ひばら)は、
「はりこのトラのあな」出典とのことですが現在は掲載が確認できませんでした。

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クロード・バラス監督『ぼくの名前はズッキーニ』(2018年)

2020-01-26 10:10:39 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

「ぼくの名前はズッキーニ」予告編

2020/1/25

・事故で母親を死なせてしまった少年が、孤児院で子どもとしての生活をやり直す話。

・ストップモーション・アニメ。目が大きく具合悪そうな人形の造形。一度見たら忘れない。かわいい。

・極めて単純化された自動車や、ちょっとガサガサした動きも、クレイ風でかわいい。

・服の生地は細かい。

・一目でネグレクト状態とわかる家の内装。

・それでも母親を大切に思う9歳の子ども。形見がビール缶なのは不憫すぎる。

・事故の結果を見せるかどうかで決まる作品の方針。

・結果、見やすい話になったけど、彼にとって一生残る傷になる部分は見えにくくなっているかも。

・孤児院ではそれぞれ事情を抱えた子どもたちと生活する。

・やろうと思えば1クールくらいのドラマを作れそう。

・咀嚼音うるさいけど、子ども表現として強い。

・ちょっとした衣擦れの音や草むらの羽虫の音など、音表現はとても繊細。

・シモンは典型的なガキ大将。大人から見れば「まあ、そんなやつもいるか」くらいだけど、当時者目線だとホントにイヤだと思う。

・そんなシモンも色々な出来事を通じてちゃんと成長する。

・子どもだから短時間で成長することは当たり前なんだけど、人形でそういう表情のように見えるはすごい。

・さすがにあのなかにあの機械は入らないだろうとは思うし、入ってたら気付くはず。伏線にしてはずるい。

・気分予報の使い方。

・最後のほうにペットショップのペットみたいなことを言い出してちょっとかなしい気持ちになる。そこも成長を感じさせるところなんだけど。

・山小屋でDJパーティをしたり、ハロウィンでふざけてくれる先生。

・進んで道化役を引き受けてくれる大人が身近にいるのは頼もしい。

・制度的にああいう悪い大人が子ども引き取るケースってありうるんだろうか。お金もらえるにしても、リスクのほうが大きそうだけど。

・メイキング動画もおもしろい。演者の子どもに動いてもらいながら作る。立ち稽古見てるみたい。

・先に吹替版、あとから字幕版を見る。吹替版のズッキーニのほうが大人っぽい。字幕のほうが好みかも。

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弦巻楽団『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』

2020-01-22 21:16:14 | 演劇を見てきた

2020/1/21

・中年男性二人が、同居生活を通して、お互いのズルさと弱さをさらしてしまう話。

・間違いのない作演出に、間違いのない役者二人。

・とはいえ、間違いのない面白さにも種類がある。

・笑える笑えない、泣ける泣けない、わかりやすいわかりにくい、期待値が高いぶん、どの方向に舵を切っているのか楽しみにして見に行く。

・実際、本作には色んな面白さが含まれていたけど、とにもかくにも二人の会話が音として心地いい。

・どちらかというと、深浦君がベースライン担当で、村上君がメロディ担当という感じ。

・その役割分担は性格にも連動している。

・ヤマトは変化を好まない堅物の典型だし、サダクロウはその反対。

・対立は二人芝居の王道。定番と言えば定番だけど、この座組みで突飛なことやられても困る。

・型として強い関係性を楽しみつつ、そこからにじみ出てくる彼ら独自の人間性を味わう。

・ヤマトは、表面的にはちゃんとしているように見えるし、口も圧も強いから、奥さん大変だったと思う。

・ツイッターで、ベッドでパスタ食べるのが有り得ないという指摘を見て、「本人は自分のことを合理的で几帳面だと思っているけど、そうでもない人」なんだと納得。

・単なる自分ルールを合理的理論的な方向に理論武装してそうなので、考えれば考えるほど、奥さん側の話も聞いてみたくなる。

・彼の髪型の実在するのかしないのかの絶妙な加減。

・サダクロウはほんとに正反対で、なんでも後先考えずに受け入れてしまう。

・なので、たぶん元カノとも最後までいってる。

・根無し草のように見えて意外と考えてる人、みたいな感じになっていたけど、見せ方の順番の問題で、もう一周するとまたお金を無心していると思う。

・あえて後方の席で見たけど、奥行きのあるサンピアザ劇場の客席でも、しっかり情報が伝わる。

・装置の加減もあるけど、二人ともちゃんと大きく見える。

・壁の黄緑がかわいい。二人が並ぶと絵として楽しい。後ろのほうの席で正解だったと思う。

・オチ好き。

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メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』

2020-01-20 01:50:16 | 読書感想文

 

2020/1/15

フランケンシュタイン博士が生み出した怪物が、博士の周囲の人間達を殺してまわる話。

wikiによると、作者のメアリー・シェリーは1797年生まれ。1818年に本作の初版を出版。

200年前の20歳前後の若い女性が、どうやったらこんな話を完成させられるんだろう。

まだうっすら記憶の残るNTLの作品と比べる。

怪物側の立場を強調しているのはオーソドックスな今風のアレンジで、極悪人ではあっても狂人ではないし、なんなら犠牲者とも言える。

なので、小説のほうの、博士を高潔な人物として描こうとしているのは無理があるように見える。

最愛の人があんなにあっさり退場してしまうとは思わなかった。

もろもろNTL版に納得。

とは言え、追う者と追われる者が倒錯していく様は間違いなく構図として美しいし、長く語り継がれるべき古典作品だった。

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北海道富良野高等学校演劇同好会『へその町から』

2020-01-13 22:11:55 | 演劇を見てきた

2020/1/10

無人駅で遅れた列車を待つ演劇部員二人と、その友だちが、演劇という行為と向き合う話。

同好会活動二年目で全国。すごい。

演劇をやりたいという衝動のようなものがテーマ。去年の『放課後談話』も似たテーマ。

他作品でもわりと目に付くことを考えると、高校演劇のトレンドなのかも。

最近に見た他校の作品と比べても、たどたどしい話運びや記号的な動きにハラハラしてしまう。

大人が求める高校生らしさってこういう感じなのかもと思ったりする。

危なっかしい自虐ネタ、メタ的なネタはドンドン入れる。

「今年の演劇シーズンこれかよって思われるぞ」みたいなセリフが出てきて、正直、ドキッとした。

同好会であることを逆手にとってか、思い切りがいい。

何か言われても選んだ人のせいにすればいいので、全国大会でも伸び伸びと無責任にやってきてほしい。

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リンゼイ・ターナー監督『NTL/ハムレット』

2020-01-12 22:49:03 | 演劇を見てきた

2020/1/10

王子ハムレットが、父を殺し母と再婚した叔父クローディアスを倒そうとする話。

誰もが知る古典中の古典を、本場かつ最先端のキャストとスタッフで上演する。

見た目、現代風の衣装。400年前の話なので変と言えば変だけど、誰もが知る話はアレンジの許容度が高い。

ただただ普通の人っぽいホレイショーと、オフィーリアの明暗の振り幅がよかった。

休憩空けの舞台の変化もおもしろい。

ハムレット役のカンバーバッチが洪水のようなセリフ量をこなしていく。

解説やインタビュー、20分の休憩を含めて200分を超える。

ほんとにたっぷりやる感じなので、なかなか話が進まない。

画面から話を理解しようとすると、どうしても集中力が続かず、うとうとしてしまう。

気力で完全に負けた気分。見た気になれず、わりと落ち込む。

 

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まんきゅう監督『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

2020-01-09 23:38:52 | 映画を見てきた

『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』主題歌PV(60秒)11月8日全国ロードショー!

2020/1/10

すみっこが大好きなモノたちが、仕掛け絵本の世界に迷い込む話。

キャラクター自体は全然詳しくないけど、評判を聞いて見に行く。

一口にすみっこと言っても、単にすみっこが好きなだけだったり、生存のためだったり、すみっこそのものだったり、色々。

当たり前のように登場人物の一人として「ざっそう」が紹介されることと、彼の夢がブーケになることなのが、結構な不意打ち。

案外、数が多くて見た目が似ているので、全くわからないことはないものの、どうしても理解にタイムラグがでてしまう。

画面の端のほうでいろいろ踊っているのかわいい。

物語のカギになる謎のひよこ。

物語終盤で悪魔騎士編のジェロニモを思い出したのは自分だけではないはず。

たまたま同時期に見た、この世界の片隅にうちを見つけてくれてありがとうみたいな話だった。

 

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片渕須直監督『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

2020-01-09 23:36:28 | 映画を見てきた

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』予告編

2020/1/2

・広島県呉市の北条家に嫁いだ浦野すずの、太平洋戦争下の日常を描いた話。

・2016年の『この世界の片隅に』は映画館で2回、DVDや配信で何度か見ているくらい。

・よくわからないところもあったけど、原作やら作品評やら読んだりして、そこそこ詳しくなったつもり。

・(さらにいくつもの)は、前作の飛躍部分を埋めていくような感じで、全体的にわかりやすくなっている。

・もともとこう語りたかったんだなという気持ちと、前作くらいの情報量だったからこそ、後追いする楽しみもあったという、答えあわせするような気持ちで見る。

・逆に、よくここの完成形から「説明」の時間を「余韻」に変えながら最初のバージョンを作れた。ギリギリのバランスだったと思う。

・わかりやすくなったぶん、作り手の作意みたいなものも強めに出てくる。極端な話、オチのつくエピソードが全部作意的に見える。

・深刻さをはぐらかすためのユーモア。

・すでに登場人物に十分感情移入ができていることもあって、登場人物が「あちゃー」となっても、笑うというより一緒に「あちゃー」と思う。

・本バージョンの肝になるのは、リンさんとのエピソード。ほんとうに今さらだけど、鉱物由来のほかに、鈴とリンって音のコンビでもあるのね。

・今回は、色街に通うシーンが強めに出てくるので、すずさんは色街とは何かちゃんとわかったうえで、いつもと同じ調子でお話してたんだなと気付く。

・なので、キャラではなく、人間の部分が見えてくる。

・周作さんのダメなシーンで、より強く「ほんとにダメだよ!」と思うし「水原さんは紳士だな」って思う。

・片渕須直監督作品の『アリーテ姫』から続く、「物語が現実に干渉して来る話」になっている。

・人を助けるのは、スイーツなのか、スイーツの絵なのか、南の島なのか、南の島の絵なのか。

・気休めと言うには重すぎる、希望と言うには軽すぎる、物語なるものの位置づけ。

・それを担う、小さな魔法としてのすずさんの右手。

・どの登場人物もそういう物語のレイヤーをかぶせることで多層的に見えてくるように作られていた。

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