遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ピッパ・エリッシュ、ジェームス・リード監督『オクトパス 海の賢者は語る』(2020)

2020-12-30 22:29:00 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

仕事に疲れた映像作家のクレイグが、西ケープの海で見つけたマダコをひたすら観察するドキュメンタリー。

種としてのマダコではなく、一個体とずっと交流を続ける。

撮り方もあるんだろうけど、時間が経つにつれ、どんどん仲良しになっている。

そのうちクレイグが恋しているようにしか見えなくなる。

そういう前提で見ると、タコが泳ぐ時の足が二手に分かれるのも人間の足のように見えてきて艶かしい。

頭がいいとは聞いていたけど、ホントに軟体動物離れしている。

こんなに仲良くなれるのかと素直に驚く。

圧巻は天敵タテスジトラザメとのチェイスシーン。

ありとあらゆる手を使ってサメを出し抜こうとする。バリエーションがすごい。

一つのミスが文字通り命取り。たぶん、その辺のアクション映画よりおもしろい。

ドキュメンタリー離れした奇跡的な構図もある。

映像はきれいだし、西ケープの海は神秘的だし、ナレーションも先を読ませない絶妙な匙加減で最後まで緊張感が途切れなかった。(Netflix)


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鈴木智彦『サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~』

2020-12-27 22:09:00 | 読書感想文

2020/12/26

アワビ、ナマコ、ウナギの密漁、北方領土に築地、銚子…と、漁業とヤクザとの深い関わりを調査している本。

まず思うのが、なんでこんな危ないことをわざわざ調べようとするんだろうということ。

社会貢献的な意義も同業者と競合しにくいテーマを選ぶのもわかるけど、それにしても。

未経験かつ47歳で、バイトとして何ヶ月も築地で働きながら覆面調査しているのもどうかしている。

正義感や経済的な理由だけではムリ。

やっぱり楽しいのかな。

海外の紛争地帯に行くような人もそうだけど、いくらお金もらってもやりたくないことを、わりと好き好んでやって報告してくれる、ジャーナリストという人種はホントに貴重。

同時に取材される側も不思議。

特に密漁に関わってるなんて、部外者に話してもリスクしかないだろうに。

情報収集の意味もあるんだろうけど、やっぱり悪いことしてる人でも、人に話を聞いてもらいたい時があったりするんだろうか。





コメント (2)
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メガネニカナウ『赤魚島(あこうじま)〜漁業組合vs大阪暴力〜』

2020-12-25 16:02:00 | 観劇三昧

 2020/12/21

・観光と漁業で成り立つ小さな島にやってきた若者二人が、ヤクザと漁業組合の抗争に巻き込まれていく話。

・もともと、一度の漁で大きく稼ぐ漁師は、賭博と相性が良くて、その賭博を仕切っていたのがヤクザという関係性らしい。

・基本的には敵対してるけど、対立するほど、両者の境界線が甘くなっていくのが世の常。蛇の道は蛇。

・脚本の二朗松田さんもブログで紹介していたけど、この辺の事情はジャーナリストの鈴木智彦さんの著書に詳しい。

・「北海道がメッカ」はたぶん漁業ではなくて密漁の話。

・赤魚の密漁って聞いたことなかったんだけど、赤魚は必ずしも特定の魚を指すものではないようなので、その海域だけで獲れる珍しい赤い魚がいるのかも。

見てる間は密漁が問題なのかクスリの運搬が問題なのかはよくわからず。たぶん両方。売春、なんでもありの島とあって、後から理解する。

・食べてるときにジロジロ見るのは共犯感覚を共有したかったのかな。

・つい最近までご一緒していた野村有志さん演じる篠田がクズすぎてとてもよかった。ぷらすのと☆えれきの時も最低だったけど、本作では愛嬌すらなくて、ただただ怖い。はははははー⤴︎という笑い方も下品で夢に出そう。強い。

・他にも指方とか、柏木とか、渡辺とか、関連する役名の人たちが出てきて、クスリやら命やらのやり取りしている。あらためて篠田の配役が腑に落ちるんだけど、二朗松田さんの中でAKBってどんな存在なんだろう。

・篠田の意識が混濁しているところの見せ方が気持ちよかった。どんな曲をかけ、どんな物を使うのか使わないのか、どこまで飛躍させるか、ああいう演出は自分にはムリ。演出はBaghdad caféの泉寛介さん。

・特撮好きすぎて本職と遜色なく動けるようになっているオタクの鑑。リアルではないんだけど、リアルにしてどうするという場面でもある。

・映画とヤクザでいえば映画『地獄でなぜ悪い』の感じにも近い。ただ、本作では主人公が見ている人からかなり共感しにくいように描かれている。冒頭のパロディ動画の撮影シーンも悪意のほうが強い。

・結果、情熱を持てなかった人間の悲劇になっている。最後も気の毒というよりも、物語としてきれいに着地している感じ。

・終盤の時間が戻るシーンは、ぷらすのと☆えれきでも似た場面があったけど、うまく余白を作る効果があって、いろんなケースで応用が効きそう。


あらすじ

うだつの上がらないボンクラ二人。

ユーチューバーを名乗ってはいるが視聴者数は全く増えない。

彼らが最後の希望を求めて辿り着いたのはある南の島だった。

海は美しく、食べ物は美味い、

この世の天国とはしゃぐ二人だったが、

日が沈み夜になると、その島の闇の姿が現れる。

小さな市場で食べた海産物、それは密漁品であり、

漁業組合は地元のヤクザ組織と浅からぬ関係であることを知る。

そんな中、二人は古い友人と遭遇する。

まさかの出会いに喜ぶが、その雰囲気の違いに狼狽する。

友人は大阪を拠点とする暴力団の一員となっていた。

その暴力団は密漁利権を奪いにこの島へとやってきていた。

島の地元ヤクザと大阪ヤクザ、

二つの暴力の間に挟まれ、

ボンクラ二人は徐々にその渦に巻き込まれていく。


キャスト

飯嶋松之助(KING&HEAVY

井路端健一(演劇集団ザ・ブロードキャストショウ)

オオサワシンヤ

小西健太(リコモーション)

田代圭佑/田米カツヒロ(舞夢プロ)

為房大輔(劇団ZTON

野村有志(オパンポン創造社)

泥谷将(Micro To Macro

秋月美穂

大江雅子

たはらもえ(劇団レトルト内閣)

上杉逸平(メガネニカナウ)


スタッフ

:二朗松田(カヨコの大発明)

演出:泉寛介(baghdad café

音響:須川忠俊(ALTERNAIT

照明:西村洋輝

舞台監督:ニシノトシヒロ(BS-Ⅱ

映像:堀川高志(KUTOWANS STUDIO

制作:渡辺大(Limited_Spice







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ロバート・ゼメキス監督『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)

2020-12-14 11:07:00 | 映画を見てきた

2020/12/12

・30年前にタイムスリップした高校生マーティが、自分のせいで出会いのきっかけを失ってしまった両親の仲を取り持とうとする話。

・初見。「おまえ、まだそれ見てなかったのかよ」ランキングがあったら自分の中で1位になりそうな超有名作。(2位はトイストーリー)

・たまたま映画館でやってたタイミングで見にいく。4K、吹替版。

・語り口が軽い軽い。情報の出し方の効率がとてもいい。

・時計台にしても、選挙にしても、車にしても、テロリストの襲撃も、前振り→回収の流れがとてもスムーズ。

・変な寝相も話の区切りに活用している。

主要人物もかなり早い段階で出揃っている。

・一発で父親の若い頃だとわかる仕草。説明的でもスピードを優先。ただ動きがきれいなので何か納得してしまう。

・事故未遂前の父親の行動がしょうもなさすぎて笑った。今ならポリコレ的に微妙かも。

・味付け濃いめの吹替の演技に国も時代も違うこと。生々しさを感じにくい距離感も軽さを後押ししている。例えばアメリカの観客だったら、細部がわかってしまうぶん、印象が全然変わるんだと思う。黒人市長とか。

・全く同じ調子で邦画に置き換えたら生活感が出ちゃって見てられないかも。

・マーティのかっこよさが不可解。家庭環境とのギャップがありすぎる。どちらかというとビフの子供っぽい。

・若いビフを追い込むスケボーシーンかっこいい。絶体絶命からの一瞬で鮮やかな逆転劇。

・母親の、一歩踏み込んだ後に「これは違う」と自分で気づいて、引き返すのが好き。

・「どうやっても行かない」からの「ここは殴るしかないだろ」までのストレスとカタルシスの塩梅が絶妙。

・そこがピークなので、そのあとのコード繋ぐ繋がないとか、エンジンかかるかからないみたいなのは、わりとどうでもよく見えてしまう。

・盛り上がるポイントとは別に、騒動を通じて、マーティの中で両親の見え方がちょっと変わるところがうまい。それがなかったら、ただのマッチポンプの話だった。

・で、せっかく変わったその見え方が台無しになるところと、それを「ま、いっか」みたいな軽さでまとめるのがすごい。

・軽快を通り越して軽薄なんだけど、最後に疑問符をつけることでギリギリバランスを取っている。

・軽くて安定している調整の効いた作品だった。


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MTJJ監督『羅小黒戦記〜ぼくが選ぶ未来』

2020-12-03 00:17:00 | 映画を見てきた

2020/12/2

・4DX2Dで見る。もう他の形式ではやってなかった。

・人間を嫌う子猫の妖精シャオヘイが、人間ムゲンとさまざまな妖精たちとの出会いを通じて成長していく話。

・ざっくり言うと人間と妖精の超能力バトル映画。

・金属を操る超能力、炎使い、氷使い、植物使い、土使い、空間を操る、ジャンプ読者ならうんざりするほど見てきた属性ごとの能力者たち。

・目新しさがないぶん、とてつもなく敷居は低い。

・絵柄も懐かしい感じ。どこかで見たことがある設定に絵柄、笑いのテンポ。とても外国のアニメに見えない。

・下ネタがあるわけじゃないけど、ギャグのテンポで『シティハンター』を思い出す。面白いかどうかはともかく、緊張感を強制的にリセットしてくる感じ。

・ラジオ番組「アフター6ジャンクション」の特集を聞いてなかったら、単に古いと感じて終わったかもしれない。

・それでも今の作品だなと思えるのが強烈な戦闘シーン。

・やってることは80年代アニメでも、「なんかすごいんだよね」としか言えない迫力に仕上がっている。

・アクション映画の見せ場中の見せ場、「絶体絶命のピンチに現れるヒーロー」の現れ方がホントにカッコいい。

・あと、絵柄や設定に雑さがない。

・スパイダーバースの時も思ったけど、たぶんどこを切り取っても一枚絵で成立する。子供の手の丸っこいのかわいい。

・繰り返しのところはちゃんと省略されていて、同じ敵との戦いでも、属性が変化しているから飽きないようになっている。

・無から何かが生まれる白バックの演出や、敵の最後の選択もいいし、それに対するおじいちゃん妖精の一言も気がきいている。

・ほとんどモブみたいなキャラクターでも気になる特殊能力発動させているの好み。個人的には水使いがカッコいい。

・些細な描写から、人間と共存しようとする、妖精たちの活動の積み重ねも感じる。

・妖精が妖精であることを隠して過ごさなきゃいけないルールにもうちょっと説得力ほしいかも。このジャンルのお約束ではあるけど、共存と言っておいて個性を隠して過ごさなきゃいけないの変じゃないのと思ったり。

・元々WEBのフラッシュアニメシリーズとのことだけど、シャオヘイが成長して、もう少し人間と妖精との距離が近づいた近未来の続編を見たくなった。


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