遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

ビリー・ワイルダー監督『麗しのサブリナ』(1954年)

2022-04-22 00:03:02 | 映画を見てきた

2022/4/21

・堅物実業家の兄ライナスと遊び人の弟デイビットが、彼らの家の雇われ運転手の娘サブリナと三角関係になる話。

・序盤のサブリナは見た目も行動も幼くて心配になる。

・自殺の方法は他になかったのか。

・そんな彼女もパリ留学で変わる。当時のパリってそんなにすごいのか。自信がみなぎっている。

・「私の顔を忘れたら一番魅力的な女をさがして」。

・ペットの首輪までキラキラしている。料理学校通いながら、犬を飼う余裕があるんだ。

・特にドレス姿でテニスコートに佇むところが美しい。

・あの時代だと、サブリナパンツもさぞかし印象的だったんだろうな。

・身分違いの恋を描いた作品ではあるけど、その部分はそれほど強調されていない。

・今の感覚だと年齢差のほうが気になる。

・兄弟は正反対の性格だけどそれほど仲は悪くない。

・表面上は順調に事が運んでいるのに、三人の思惑がどんどんすれ違っていく描き方がうまい。

・弟の「悪い奴ではないんだけど、積極的には応援しようとは思いにくい」の加減が絶妙。特に説明がなくても、物語の進むべき方向はそっちじゃないとわかる。

・気持ちが離れたことを表現するキスと、遊び人だからこそそれを読み取れるというぴったりな着地。

・少女マンガならナレーションで説明が入ると思うけど、言葉がなくても伝わる。

・父親が絶望的に不器用。敵役になるには弱々しくてなんだかかわいらしい。

・古い映画だけど、意外なほど嫌なやつがいない。ちょっとした擦れ違いでハラハラして最後に収まるべきところに収まる。ストレスなく見られる。

・帽子の小道具演出がワイルダーっぽい。最後のほうにひと手間いれてくる。

・サブリナが父親の洗車を手伝っているところが好き。

・二人にとっては、たぶん大事なことなんだということもわかる。親子としての歴史が垣間見える感じ。

・事業の損失より(他者の)愛の成就を取ろうとする感じは『真夜中の出来事』にも通じる。

・テンプレっぽいけど、やっぱり効果的ではある。

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木下麦監督『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』

2022-04-21 22:56:15 | 映画を見てきた

2022/4/21

タクシードライバーの小戸川が、女子高生の失踪事件に巻き込まれていく話。

テレビシリーズはほとんど時系列順に話が進んでいたけど、映画版では登場人物の証言を追うことで事後から事件を語り直している。

なので、サブタイトルは芥川の『藪の中』の感じっぽい。そういう劇場化もあるのか。

ただ、事件の全容はある程度見えているので、ただの総集編っぽくもある。

白川さんが小戸川への気持ちをきちんと語りなおしてくれたのはよかった。あそこが結構謎だった。

劇場版にしかないシーンの意味はよくわからなかったけど、とりあえずこの劇場版はテレビシリーズのメイキングみたいな感じだと解釈した。

ああいう証言を集めて、テレビシリーズのオッドタクシーを作ったという。それでラストにもつながるかなと。

単純に「その後」が描かれているのはうれしいけど、それを見るために我慢して見てたところもあるので、もうちょっとサービスしてほしかったような気もする。

(札幌シネマフロンティア)

※劇場特典はステッカー。かっこいい。

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濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』

2022-04-16 23:07:13 | 映画を見てきた

2022/4/15

・ある演劇祭に演出家として参加した男が、稽古期間中の様々な出会いやトラブルを経て、妻の死にきちんと向き合おうとする話。

・地方の主催者が、おそらく文化事業的な感じで東京の演出家を招いて公演を行う。

・自分もあまり経験があるわけじゃないけど、おそらく内部はこんな雰囲気だろうと思える程度に生々しい。

・お仕事映画としても楽しめると思う。絵的に地味な読み稽古で映画のシーンを作れるのがすごい。

・演出家の家福は西島秀俊さんが演じる。特に話の方向性が見えない序盤は、彼の存在感が頼もしい。

・舞台上で不調になり変な間ができても実力のある舞台俳優らしくギリギリ乗り越える…という演技。大変。

・劇中の上演予定作品は『ワーニャ伯父さん』。

・家福の演出は、外国から俳優を招いて、それぞれの母語で会話をする形式。

・最初は意義がわからなかったけど、会話から言葉を抜き取ったときに何が残るのかを検証する感じ、なのかな。

・手話の話者が入っても違和感なく成立するのがすごい。

・舞台用の発声があるように、舞台用の手話ってあるんだろうか。なんとなく映像サイズに見えた。

・正しくない人の描写なのはわかるけど、オーディションのあれは別のことでやってほしかった。兆候はあったんだから演出家が止めなきゃいかんと思う。他の描写をきちんとやってるだけになおさら。

・屋外での読み合わせのシーンが楽しい。映画ならではの絵の美しさもあったし、演じていた二人の間で本当に演劇らしい何かが起きていたようにも見えた。

・三浦透子さんが演じる運転手のできるスタッフ感。寡黙で腕があって無茶ぶりにも対応している。

・だからって、演出家のメンタルケアのために広島から北海道までの運転をお願いするのはどうかしている。

・終盤のほうになると、できるスタッフを通り越して、彼にとっても、作品にとっても、とても便利な存在になっていた。せめてそれなりのギャラを貰ってほしい。

・上十二滝村って地名があんまり北海道っぽくないような。色々検索すると元は中頓別町だったらしい。

・『パターソン』の時も思ったけど、映画のなかだと、安全に自動車を運転するという行為だけで、結構な緊張感が生まれる。

・何気にワンコ映画でもある。フリスピー投げてもらえるところ好き。

・中盤くらいまでは映画と演劇がいい緊張感で両立していたけど、最後のほうは急激に小説というか、村上春樹っぽさが前面に出てきた感じだった。

(ユナイテッドシネマ札幌)

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順風男女『胸に迫るコント』

2022-04-10 20:01:00 | 観劇三昧

観劇三昧:順風男女『胸に迫るコント』

2022/4/8

王子様と従者が、シンデレラを探すという名目でガラスのブラジャーを候補者の女性たちにつけさせようとする話。約10分。

ガラスのブラジャーという発想がひどい。

元の話に出てくるガラスの靴ですら機能的に怪しいのに、ガラス製のブラジャーって、蒸れそうだし、転んだら危ないし、靴以上にサイズがあいまいだし、なによりどこも隠せてない。

この世界では存在しているのかどうかわからないけど、魔法使いの正気を疑ってしまう。

このワンアイディアだけで強い。

完全に下ネタだけど、女性たちのツッコミが鋭いので、そういうのが苦手な人でもだいぶん見やすくなっているはず。

オチはよくわからなかったけど、何か元ネタ的なものがあるのかな。

昔のコントであれば、老人とか美しくない女性をオチに持ってくるんだろうけど、急ブレーキ踏んでそんな古臭い終わり方を回避している感じだった。

 

《作品詳細(観劇三昧HP)》

■劇団名 順風男女

■公演時期 2017/10/14

■キャスト
伊藤摩美
今井英里
伊芸勇馬(以上、順風男女) 
伊藤美穂
岸波紗世子
鶴町憲
緑川大陸

■スタッフ
作:川尻恵太(SUGARBOY)
演出:足立信彦(順風男女)
撮影・録音・編集:降幡剛志

■あらすじ
時間を忘れて踊るシンデレラと王子様
しかし無情にも12時の鐘が鳴り
シンデレラはあわててお城を後にしました。
そう『あるもの』を残してー

今、最も忙しい劇作家・川尻恵太(SUGARBOY)が順風男女に書き下ろした渾身の1作!

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演劇ユニット ヒールアタック『トーキョーオールライト!!』

2022-04-09 23:10:28 | 演劇を見てきた

2022/4/8

1970年代のはじめ、北海道から上京してきた出てきた女の子が友人とアイドルを目指そうとする話。

旗揚げ公演。メンバーは大体二十歳前後だと思うけど、時代の選び方が渋い。

検索すると山口百恵が1973年のデビュー。他には、天地真理、桜田淳子、森昌子など。確かにアイドルが輝いていた時代と言ってもよさそう。

舞台美術好き。演技スペースを左右対称に並べて真ん中上にミラーボール。

目標を果たせなかった大人たちが、夢を追う若者たちを手助けする構図。

母子関係は悪くないし、ケンカもそれほど深刻なものではないので、作劇上の盛り上がり方は控えめ。

それでも旗揚げ公演独特の高揚感と、同性同年代の若者たちがわあわあ言い合っている空気感を共有できて楽しかった。

「断れない」って言ってたから、男のほうから言い寄ってきたのかな。

最近のニュースを見ていると、一概に時代のせいにもできず、ちょっと悲しい気持ちになる。

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磯部家『普通の人』

2022-04-09 01:02:53 | 観劇三昧

観劇三昧:磯部家『普通の人』

2022/4/8

脚本家が演劇仲間の作曲家と世間話しているうちにちょっとした知見を得る話。

ごく自然な世間話風の話をヘッドセットマイク使用で見せる。どういう公演形態なんだろう。

たった二人の人間が読書の片手間に話しているだけの10分弱の作品なのに、ちゃんと構成があってクスクス笑える。

二人の会話形式だけど、落語の小話を聴いている感覚に近い。

どちらも話し方が穏やかで激しいやり取りはない。

聴きなれたラジオのように聞いていられる。

反面、劇作家が作曲家にやさしく苦言を呈されているところは生々しくてざわざわする。

実生活でも使えるくらい穏やかな調子の苦言。逆に怖い。

脚本家はこのくらいの穏やかさで言われているうちに、脚本を書かなければいけないと、申し訳ない気持ちになる。

脚本家の自虐は心が痛む。

 

《公演詳細(観劇三昧HP)》

■劇団名 劇団WAO!
■公演時期 2021/12/18
■地域 近畿

■キャスト
磯部宗潤
金澤耕介

■スタッフ
脚本:磯部宗潤
演出:mai

■あらすじ
脚本家と作曲家が作り上げる
超絶シュールな二人の掛け合い
それは、日常のたわいもない会話から始まる

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金田淳子「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた乙女の記録ッッ」

2022-04-05 20:43:46 | 読書感想文

 

2022/4/5

BL研究者がBL視点で格闘マンガ『グラップラー刃牙』と『バキ』を読み解いた本。

刃牙シリーズは、自分も大体の引用表現に対応できる程度に読んでいる。

一時代を築いた格闘マンガなのに、読むほどに、BL視点との相性がよいことがわかる。

刃牙と花山薫と梢江の三角関係。

最初にマンガを読んだときには花山の行動が意味不明すぎて困惑したものだけど、BLで補助線引くと納得できてしまう。

完全に記載通りではなくても、ちょっとはそういうところがあるはず。

「SAGA」と「ドイルの男めぐり」も新しい見方を提示してくれる。

正直、マンガのほうはこのへんの良さがまるでわかっていなかった。

ドイルの心情にここまで寄り添った刃牙読者が他にいるんだろうか。

刃牙用語とBL用語が入り乱れた文章が読み応えある。

「はいはいおソバゆでましょ」を閑話休題のように使っている。

情緒が漏れ出していて、解説に留まりきらない注釈も楽しかった。

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シアン・ヘダー監督『コーダ あいのうた』

2022-04-01 21:31:40 | 映画を見てきた

2022/4/1

・聾者の家族のなかで一人だけ聴者として生まれた女子高校生ルビーが歌を唄うことを通して自立していく話。

・コーダ(CODA:Children of Deaf Adults)は聾者の親を持つ聴者の子供のこと。この映画で初めて知った。

・中型の漁船。使用感たっぷりの船体と網を引き揚げる機械のかっこよさに、ルビーが魚を分別しながら歌っている様子、最初から情報量が多くて楽しい。

・もう少し堅苦しい話なのかなと思ってたけど、下ネタはくだらないし、退屈なシーンもないし、素直に感動させられる。エンタメとしての完成度が高い。

・手話はわからなくても、手話が第一言語だからこそできる複雑なやり取りを感じることくらいはできる。英語は話せなくてもカタカナ英語の拙さはわかる感じの逆。

・聴者であるルビーも、育った環境から、手話のほうが複雑な感情を表現できるというシーンも納得だし、クライマックスへの前フリにもなっている。

・先生が人前で声を出せない彼女をリラックスさせようとする手際。演技指導にも通じる。

・パートナーの彼、簡単に許されすぎのような気もするけど、まだ若いからあんなものかもしれない。

・生まれ変わりの儀式としての飛び降り。

・欧米の人は自然の沼や湖に平気で飛び込む人が多い(偏見)。

・合唱部の生徒たちの素人っぽさが絶妙。歌の天才が才能を開花する話ではなく、あくまで熱意を持った素人が一歩踏み出すところに焦点を当てているところが上品。挑戦は一部の天才だけが持つ権利ではない。

・ただの恋愛話にも思える歌詞が何重にも意味がある。

・自分は聴者だけど、最後のほうに少しだけ聾者の世界にお邪魔するシーンがあって、「ああ、こういう感じだったのか」と納得。なんだか感動的だった。

・特殊な家族を描いているようで、父親、母親、兄、妹とそれぞれの役割で家族を愛そうとする様子は、ごく普通の恵まれた家族の関係性だった。

・特に憎まれ口叩きながら「家族の犠牲になるな」と妹に言っている兄。

・あの調査員、手話わかってたの意地悪すぎる。

・本作は見ていて気持ちよい作品だったけど、実際には、家族と共依存になって抜け出せなくなっているコーダの人もいるんだろうなということは頭に置いておきたい。

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