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「しずかに流れるみどりの川」  ユベール・マンガレリ  白水社

2005年09月07日 | ’05年読書日記
以前、この作者の別の本、「おわりの雪」…というやつを読みましたが、それよりは明るさがあり、分かりやすくもありました。

工場を解雇され無職状態の父親と、大人になる一歩、二歩手前くらいの少年の二人暮し。
家庭の状況は、電気を止められるほど貧しく、普通ならやけっぱちになりそうな状態ではありますが、この親子、「バラをビンいっぱいに育てて、それを売ってお金を儲けよう」…とか、そのお金で草むらや入り江を買おう、(…と、これは少年自身夢の中だけの話だと分っているようですが)など、夢のような事を考えています。

結局、バラは…と、最後まで書くと話がばれちゃうのでいいませんが、最後まで光の見えない状況でも、二人は(特にお父さんは)現実からフワフワと漂い出て、ほんの少しの(見えない)希望を夢見ながら、最後まで重苦しくなりきらずにお話は終わります。
また、親子の、互いに対する「強い愛情」が所々に感じられ、それもまたこのお話に「暖かさ」を与える重要な役割を果たしていると思いました。

現実の厳しさの中にもどこかしら明るさがあり、ユーモラスでさえあります。
少年は、「草むらの中を歩きながら、あれこれ空想するのが好き」な、子供です。
苦しい、つらい現実の中にも、何らかの”救い”を自分の力で見つけられる才能のある人は、やはり「強い」のだと、そう思いました。




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