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日本人として日々の暮らしの中で思うこと、知りたかったこと

同盟国のバランスシート

2019-12-07 01:36:49 | 米国
「世界を支配しているのは、実際のところ『米国法』の場外適用である」ともいわれるが、その「米国法」とは「国防権限法」と呼ばれる米国法などである。


国防権限法」とは米国の国防予算の大枠を決めるために議会が毎年通す法律のことで、2019会計年度(18年10月~19年9月)は18年8月13日、超党派議員の賛成とトランプ大統領の署名で成立している。


2019会計年度の米国防総省及びNASAの予算概要は国防費基本予算5970億ドル(同約65兆円)、国外作戦経費890億ドル(同約10兆円)を合わせて6860億ドル(同約75兆円)だそうで、これは対2017年度成立予算のなんと13%増。 
 



因みに世界の国別軍事費(一部推計値、日本の場合は防衛費に相当)に関して、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の集計によれば、
2017年国別軍事費
1位:米国が前年比横ばいの6100億ドル(対GDP比3.1%)、
2位:中国は5.6%増の推計2280億ドル(対GDP比1.9%)、
3位:サウジアラビアが694億ドル(対GDP比10.3%)で3位に浮上。
4位:ロシアが約20%減の663億ドル(対GDP比4.3%)で3位から4位に後退。

8位:日本は前年からほぼ横ばいの454億ドル(対GDP比0.9%)で、順位は変わらずの8位だったそうだ(注)




■米国の同盟国バランスシート
笹川財団が米国の同盟国バランスシートの分析を行った結果を参考としてみてみると、


米国の、対ロシア脅威に対する前線国がリトアニアで、リトアニアと緊密な協力を行うべき国がポーランド、欧州における支柱がドイツだそうだ。


ドイツには第二次大戦後の分割占領軍から米軍が駐留しており、大半が陸空軍で、冷戦時代は20万人以上でNATO防衛の最前線だったといわれているが、冷戦終結で大幅に削減。但し中東での作戦時には重要な輸送基地となった。


一方、対中国脅威に対する前線国は韓国ではなく台湾但し、アジア安定の要である日本と台湾とは日中関係とのバランスから公的な協力関係が結べず、米国と台湾との直接協力が必要であることから、「台湾関係法」という法律が以前からあったのだ。



そして、アジア諸国との安全保障や経済面での包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保証推進法」という法律が大統領署名によって今年の1月に初めて成立している。


「アジア再保障推進法」の内容
①台湾の防衛
中国の安保・経済面での台頭に対する米議会の危機感を象徴する法律であり、中国の軍事面での影響力拡大をけん制し、中国が軍事拠点化を進める南シナ海のほか、東シナ海で航行や飛行の自由を維持する作戦を定期的に実施することを定めている。

米国は中国に政治的配慮をし、台湾へのF-16戦闘機やイージス艦船の売却予定が凍結になっていたが、2019年8月20日、米中間で通商問題や香港のデモをめぐり緊張が高まるなか、米国務省はF-16戦闘機66機の売却を発表。台湾に対する武器供与としては近年で最大規模とされる。 


②ASEANによる海洋権益の維持→「インド太平洋戦略」推進
東南アジア諸国の海洋警備や軍事訓練などに今後5年間で最大15億ドル(約1650億円)を投じており、東南アジア諸国連合(ASEAN)が中国と共同で策定する南シナ海での紛争回避に向けた「行動規範」を通じ、ASEANによる海洋権益の維持を支援すると明記。つまり、ASEAN支援を明確にして、中国主導の規範づくりにクギを刺し、ルールに基づく経済秩序を目指す「インド太平洋戦略」の推進も盛り込んでいる。


③人権と知財保護
人権尊重や国際的な法規範の重視を改めて打ち出し、広域経済圏構想「一帯一路」を進める中国に対抗する姿勢を示している。知的財産保護についても、中国の産業スパイやサイバー攻撃を念頭に「罰則を含む法律執行の強化が最優先事項だ」と指摘。


法律の施行から米政府は180日以内にインド太平洋地域での中国による知的財産権の窃取の現状や摘発状況を議会に報告するとしており、サイバー分野でもアジア諸国と連携を深める、としている。



■米国の国防予算と財政赤字
ところで、米国議会に提出された2019年度予算教書によれば、歳入が3兆4220億ドル(1ドル109円換算で約373兆円)の歳入に対して、歳出が4兆4070億ドル(同約480兆円)で、財政赤字は9840億ドル(同約107兆円)となったそうだ。



米国の財政赤字は2019年だけで107兆円にもなるものの、国防予算を一気に削減することはその性格上難しいわけで、予算配分を米国の世界戦略に応じて再検討しつつ負担を減らす方向にあるというのが、現状らしい。


■NATO内での米欧間の亀裂
「冷戦初期から西欧安定の礎となってきた北大西洋条約機構(NATO)が今年の4月4日に創設70年を迎えたものの、「米国ファースト」を掲げるトランプ米大統領の登場で米欧間の亀裂が深刻化。一方NATOとロシアとの軍事的緊張が高まっており、欧州には米依存脱却を目指す動きもあり、世界最大の軍事同盟は岐路に立たされている」


12月3日にロンドンで行われたNATO首脳会談に先駆け、仏マクロン大統領が英誌エコノミスト(電子版)に7日掲載されたインタビューの中で、NATOの現状について「我々が今経験しているのはNATOの脳死だ」と語った。


昨年からトランプ氏が欧州に防衛費負担を増やすよう求めてきたこと(注)や、シリア北部での米軍撤退やトルコ軍侵攻を例に「米国とNATO諸国は、戦略決定では何も連携していない」と指摘。


昨年の首脳会合で米国はNATOとの集団的自衛権の行使を確約しなかったそうなのだ。


マクロン大統領はNATO加盟国に義務付けられた集団的自衛権が機能しているかも「分からない」とした上で、「米国の関わりを考慮してNATOの現実を再検討しなければならない」と表明。「もし目を覚まさなければ、(欧州は)いずれ自分たちの運命を決められなくなる」とも述べ、危機感をあらわにしている。



(注)日本の防衛費
2020年度予算の概算要求について、防衛省は米軍再編関連経費を含めて5兆3千億円超を計上する方向で調整に入り、過去最大になる見通しだ。当初予算ベースの防衛費は13年度から7年連続で増加している。年末の予算編成に向けて、米国が主導する中東・ホルムズ海峡の安全確保に向けた有志連合構想などによって額が上積みされる可能性もある。
20年度予算の概算要求額は過去最大の5兆2574億円だった19年度の当初予算に比べ約500億円以上増える。宇宙やサイバー空間といった新領域の防衛力強化などに充てる。最新鋭ステルス戦闘機F35の取得費など、米国からの装備品の調達費も盛り込む。



(注)2018年の7月、北大西洋条約機構(NATO)本部のあるベルギーの首都ブリュッセルでNATO首脳会合を開催され、2017年5月に次いで2度目の参加となったトランプ大統領が、NATOの本部運営や安全保障関連の共同投資、一部の統合軍事演習などに要する米国からの拠出金の大幅な削減を要求。

米国はこの種のNATO経費の約22%(総額約25億ドル、約2725億円)をこれまで負担しており、この比率をドイツの14.8%に見合うよう、約16%に引き下げ、経費削減分を他のNATO加盟国が引き受けることを2018年7月NATO本部のあるベルギーの首都ブリュッセルで開かれたNATO首脳会合の際に要求。

ドイツを中心にGDP比で2%支出の国防費を達成しないNATO加盟国をトランプ大統領は再三批判し、結果として全てのNATO同盟国が新たなコスト負担方式に合意し、大半の欧州の同盟国とカナダの拠出金が増えたとされる。

「(米国が)NATOや通商面でいいように利用されるのは間違っているが、それが実際に起きている。許してはならない」と強調し、航空業界や欧州の「デジタル課税」を含む欧米間の通商問題にも言及したといわれる。

引用:





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