ちょうど1年前の2018年5月、米トランプ大統領がラストベルト(中西部などのさびれた旧工業地帯)のトランプ支持層など、自国の自動車産業を守るため日欧製の輸入車に対して25%課税という大統領令を出すという方策を掲げた。
米国は鉄鋼製品を年間約290億ドル(約3.2兆円)規模、アルミニウム製品を同約170億ドル(約1.9兆円)規模で輸入しているそうなのだが、昨年の同時期に、通商拡大法232条によって鉄鋼・アルミ製品の輸入を対象に鉄鋼製品に25%、アルミニウム製品に10%の関税措置を発動。
日本製の自動車への追加関税が課されれば影響は鉄鋼・アルミ製品よりはるかに大きいと懸念されている。
「仮に第三国分にも20%の関税が追加されることになれば、日本車の輸出への影響は1.7兆円から1.8兆円で、自動車部品などへの影響も勘案すると約2兆円程度の関税を追加で負担しなければならなくなり、直接の輸出や現地生産もあるため波及経路は複雑で、乗数効果を考えて最終的に日本経済には4兆円程度のマイナスの影響が出る」と試算されているそうだ。
嘗て1980年代から90年代にかけての日米貿易摩擦で自動車や半導体などの様々な分野で「米国内で日本との競争に敗れる→その企業や業界団体が政治家にロビイングで働きかける→労組も主に民主党へ働きかける→米政府も動き出し、米通商代表部(USTR)などが日本に圧力をかける」というパターンだったそうだ。
しかし当時の共和党の指導者層にいた議員は「自由貿易主義者」が多く、議会で審議されていた対日制裁法案の内容が緩和されたり否決されたりすることもよくあったらしい。
2009年から米国で始まった保守派のポピュリスト運動である「ティーパーティー」は1773年に起こった「ボストン茶会事件」の名に因んで名づけられたもので当初はバラク・オバマ政権の自動車産業や金融機関への救済の反対、更には景気刺激策や医療保険制度改革(オバマケア)における「大きな政府」路線に対する抗議を中心として始まったものなのであるが「課税反対」は象徴的意味しか持たず、税金の無駄遣いを批判して「小さな政府」を推進しようという運動で「米国人の中核的価値への回帰」を訴える保守系独立政治勢力なのだそうだ。
「ティーパーティー」は保守派の観点からの憲法的価値観の復興を唱え、新自由主義者的な発想で国家の介入を嫌う一方で米国の孤立を恐れず、保護貿易主義に親和性があり、通商政策において共和党=自由貿易主義は過去のものらしい。
現在、米中貿易交渉が難航する中でトランプ政権は日本などからの輸入車やメキシコ・カナダからの鉄鋼などに対する関税をめぐり新たな方針を相次いで発表。
今月17日に米国政府が検討している日本などからの輸入車への追加関税についてはトランプ大統領は判断を最大で180日間先送りするという声明を発表。
しかし「輸入車の増加が米国の安全保障上の脅威になっている」とした上で通商代表部(USTR)に対し、180日以内に日本やEUなどと交渉し解決策を得るよう指示。期限内に合意できなければ「追加の措置を取る」のだそうだ。
トランプ政権は、輸入車の台数を減らすため数量を制限することや一定の台数を超えた場合に高い関税を課す「数量規制」の導入を想定しているとみられるが、日本は反対する方針で、トヨタの現地法人はトランプ氏の声明に対し「我々は安全保障上の脅威ではない」「アメリカの消費者や労働者、自動車業界にとって大きな後退だ」と反論。
トランプ氏はメキシコとカナダから輸入している鉄鋼とアルミニウムへの追加関税を撤廃することで両国と合意したと発表しており、共同声明によれば米国は2日以内に追加関税を撤廃するということで、メキシコとカナダも現在導入している報復関税を取り下げる方針らしいが、現段階では日本の鉄鋼やアルミニウムに対する追加関税は撤廃されていない。
昨年の米鉄鋼・アルミニウム関税を巡る米欧対立の際に、関税割当枠であるならば容認可能とする姿勢をEUが示唆。結局折り合うことができず、米国は関税賦課に踏み切った。
当時との違いは米国とEUが現在工業製品の関税引き下げに向け正式に交渉を進めており双方とも協議が続いている間は追加関税を導入しないとしている点のようだが、トランプ大統領は中国との貿易交渉が続いている中でも対中追加関税の引き上げをためらうことはなく、昨年EUについても「中国とほとんど変わらないくらい悪い」とも発言しており、EUの同盟国を特別扱いするという保証はなさそうだ。
「交渉中は貿易摩擦をエスカレートさせない」と米国と合意を交わしているのは日本も同様で、菅義偉官房長官は16日の定例会見で「昨年9月の日米首脳会談で、貿易交渉の協議が行われている間は共同声明の精神に反する行動を取らず、自動車およびその部品について追加関税が課されることはないと直接確認している」と述べた。
また茂木敏充経済再生相は17日の記者会見で、米国が自動車の輸出制限を日本に求めることはないとライトハイザー米通商代表部(USTR)代表に確認したことを明らかにしたそうだが、果たして今後の行方はどうなるのであろうか。
引用:
基本的に世界経済は自由貿易を目指すのは当然のことですから米国による関税の引き上げには賛同できません。ただ、中国は経済的な優位とともに軍事的な優位にも立とうとしており、知的財産を盗んでも意に介さず、ルールに従わない中国は関税の引き上げ以上に許容できませんので制裁はやむを得ないと思います。
一方、日本は米国の同盟国であって、トヨタが関税引き上げに反対し主張しているように、トヨタやナイキなどは、中国政府にあらゆる情報を提供してしまうファーウエイのような米国の安全保障上の脅威ではありません。ですから、米国による対中への制裁と対日やEUとの貿易交渉とはおのずから対処が違うことになるはずです。
日米で推進したTPPから抜け出たのは米国であって、日本側は米国に強く自己主張できる立場にあり、最終的にはTPP加盟国のカナダやメキシコが鉄鋼・アルミニウムの輸入関税について米国との間で折り合いをつけて撤廃させたのと同様にTPPに準拠した水準で落ち着くのではないかと思います。
ちょっと楽観的かもしれませんが。
米国の制裁の影響が身近な日本のスマホに及んできました。
アンドロイドの最新版が使えないのは影響が大きく日本では事実上ファーウエイの新機種は買えなくなりますし買わないですね。
これまでファーウエイが売れたのはチープだからであって、それは日米の知的財産を盗んで研究開発費を浮かしていたからです。ただ強盗のような行為を無くす気は中国にもファーウエイにもなく今後も続くでしょう。
これに対しては不買が重要ですね。