スティーブン・キングの短編映画作品集
「Nightmares & Dreamscapes」(2006年米国)
スティーブン・キングの短編映画作品集「Nightmares & Dreamscapes」という8つの作品の中に「クラウチ・エンド」という作品がある。
「クラウチ・エンド」はロンドンの郊外に実在する同名の田舎街(Crouch End)を舞台にしたホラー映画で短編集『Nightmares and Dreamscapes』(1993年)に収録。原作は日本語訳は文藝春秋より2000年に刊行された『ナイトメアズ & ドリームスケープスII』に収録されている。
本作の初出は『New Tales of the Cthulhu Mythos』(「クトゥルフ神話の新物語」(1980年ラムジー・キャンベル )ともいわれ、スティーブン・キングのキャンベルの作品へのオマージュともいわれている。
この作品の怖さは、ごく普通の街の中の通りをほんのひとつ隔てたとある地区の、図らずも迷い込んでしまった一画が、実は異次元の世界(地底世界?)と繋がっている異世界空間になっており、そこに足を踏み入れてしまうとこちら側の世界に戻ってこれなくなる、日常の中に潜む非日常という世界観。
作中で、そうした場所のことを、タクシーの運転手が「地球の表面の皮が薄くなっている場所」、「言ってはいけない場所」などと表現していた。
そのような場所にうっかり足を踏み入れてしまうと、飛んでもないモノにあちら側の世界に引っ張り込まれてしまい、行方不明になってしまうのだと。
ところで、地球上には実際に地表と地底とが繋がってしまった「地獄の入り口」「地獄の門」と言われる場所がいくつかある。
有名なもののひとつに、中央アジアのトルクメニスタン、アハラ州にあるダルヴァザという天然ガスの噴出口となっている人工のクレーターがある。
そこは嘗てはテケ族という遊牧民族が人口約350人くらいの集落を作っていたものの、2004年にトルクメニスタンの大統領命令によって「観光客にとって不愉快な光景だ」として壊され、現在は周囲に村落などがない場所となっているらしい。
周囲に村落がないのは、ここに有毒ガスが絶えず噴出する人工のクレーターが図らずも生まれてしまったせいなのかもしれない。
人工のクレーター誕生のきっかけは、「ダルヴァザの付近の地下には豊富な天然ガスが埋蔵されている」とされて1971年にソ連(当時)の地質学者がボーリング調査をしてガスを発見し、その過程で落盤事故が起きて採掘作業用の装置が置かれていた場所もろとも直径100メートルにもなる大きな穴が開いてしまった」という経緯だった。
ボーリングする前に最悪の事態を予測することや、起こってしまった現象に対する解決策を講じる技術力など共に不足していたため、わざわざボーリングをしたことで、「そこから有毒ガスが発生し続ける」人工のクレーターを作ってしまう最悪の現象が起こってしまったということらしい。
かくして、「有毒ガスの(周辺への)放出を食い止めるため、仕方なく噴出口に点火することになった」ということで、「有毒ガスが出てくる限り、そのガスを穴の中で燃やし続けなければならない」というの状況に陥ってしまった。
それ以来50年近く、可燃性ガスが地下から絶え間なく吹き出るため、延々と燃え続けているそうだ。
この穴を住民は「地獄の門」(Door to hell) と名づけ、現時点ではこの天然ガスの燃焼を食い止めることは技術的にとても困難で、天然ガスの埋蔵量自体が不明なため、今後いつまで燃え続けるのかもよくわかっておらず、現在でも消火するための解決手段は無く依然として燃え続け、一種の観光名所ともなっている、などとある。
2010年になり、トルクメニスタンが天然ガスの増産を計画するなか、グルバングル・ベルディムハメドフ大統領が現地を視察し、穴を封鎖するかまたは周囲のガス田開発のために対策を立てるように指示。
その後も周辺には同様の掘削坑が残され、それらの掘削坑はガスの圧力が少なかったために着火されることはなく、底に液体や泥が溜まった状態で放置され、泡が出ている様子が確認できるのだそうだ。
有毒なガスの拡散を防ぐために天然ガスの噴出地口の「地獄の門」に火を放って、以後50年間燃え続けている。
有毒な天然ガスの拡散防ぐためには「火口に蓋をする」ことが最良であるのだが、それが出来ないのであれば、火口で燃焼させてしまうしかない、ということらしい。
この現象はある意味現実社会においての暗喩のようなものかもしれない。
世界では思いもかけないことが起こっているのですね。ダルヴァザの地獄の門が人間の過信から起こった事故の結果とすれば「一寸先は闇」です。それが今も燃えているのは人間への戒めのためでしょうか。
1度起こってしまうと元には戻れない事例ですね。
これに付随して中央アジアは地下資源が豊富にあることと、トルクメニスタンの大統領が強権的であることを示しています。
kamakuraboyさんはスティーブン・キングの作品が好みですね。
キングの作品では「ランゴリアーズ」や「ローズ・レッド」なども印象に残っております。