夢の羅列<冠水フリンジーズ>
つづき。
王様のことはすっかり忘れて私は冠水した道路を足取りも重くしばらく歩いた。
それにしても街中が水浸しであった。
途中、女が二人連れで、しかし何事もない様子で反対側から歩いてきた。
二人とも若く、なぜか、いやなぜかではなく、まあ人の好きずきだが、
フリンジのたくさんついた革のコートを着ていた。
ひとりのコートは黄色で、もうひとりはごくライトなブラウンか。
ベージュに近いと言ったほうがわかりやすいかもしれない。
二人とも頭にはインディアンだか何だかわからないが、
妙に色の鮮やかなバンドを巻き付けていた。
そんな二人がヒザまで水に浸かったまま何事もないかのように私とすれ違った。
私はつい声をかけそびれた。二人の雰囲気に躊躇したのだ。まあ夢の中だし。
冠水の原因を知りたかったのだが、二人は私を見るでもなく通り過ぎた。
普通、これだけの災害であれば通行人同士、情報を交換しようという
何か切実な雰囲気を出しているものだが、二人には微塵もなかった。
これからそんなスタイルの集まりでもあって、皆でキメて踊りそうであった。
ヒザまで濡れているのに。
それに私もあのフリンジのコートまでは許容できるが、頭のベルトはちょっと怖い。
まあいいさ。そのうち状況もわかってくるだろう。
またジョボジョボとしばらく歩いた。
するとスナックの看板が目についた。
看板は「成れの果て」と読めた。この災害時にどうやら営業しているようだ。
それなら誰かいるだろう。私はドアを開け、階段を降りた。
つづく。
つづき。
王様のことはすっかり忘れて私は冠水した道路を足取りも重くしばらく歩いた。
それにしても街中が水浸しであった。
途中、女が二人連れで、しかし何事もない様子で反対側から歩いてきた。
二人とも若く、なぜか、いやなぜかではなく、まあ人の好きずきだが、
フリンジのたくさんついた革のコートを着ていた。
ひとりのコートは黄色で、もうひとりはごくライトなブラウンか。
ベージュに近いと言ったほうがわかりやすいかもしれない。
二人とも頭にはインディアンだか何だかわからないが、
妙に色の鮮やかなバンドを巻き付けていた。
そんな二人がヒザまで水に浸かったまま何事もないかのように私とすれ違った。
私はつい声をかけそびれた。二人の雰囲気に躊躇したのだ。まあ夢の中だし。
冠水の原因を知りたかったのだが、二人は私を見るでもなく通り過ぎた。
普通、これだけの災害であれば通行人同士、情報を交換しようという
何か切実な雰囲気を出しているものだが、二人には微塵もなかった。
これからそんなスタイルの集まりでもあって、皆でキメて踊りそうであった。
ヒザまで濡れているのに。
それに私もあのフリンジのコートまでは許容できるが、頭のベルトはちょっと怖い。
まあいいさ。そのうち状況もわかってくるだろう。
またジョボジョボとしばらく歩いた。
するとスナックの看板が目についた。
看板は「成れの果て」と読めた。この災害時にどうやら営業しているようだ。
それなら誰かいるだろう。私はドアを開け、階段を降りた。
つづく。