最近この感じの蕎麦屋さんが多いと思う。
半民芸っぽい出前もやってる街蕎麦とは一線を画しているこだわりのお店、そんな感じがこのたたずまいから感じられる。そしてたまに、その「感じ」にまんまとダマされることもあるのだ。実は、この店に来る2週間前一軒のそういうお店に入った。表参道と渋谷のちょうど中間くらいにあるその店は、いかにも、という内外装。BGMはジャズ。
まんまとダマされた。
加水が悪いのか、そば粉が悪いのか、ねっちゃりしていて、その蕎麦にコシを出すためゆで時間を短くした感じ。コシはそうやって出すもんじゃない。これではただ固いだけ。
あまりまずい店を紹介しても仕方がないので書かなかったが、そんな風に書かれない部分で涙している場合も多いのである、ぼくの場合。
さて、気を取り直して「蕎庭」。場所は地下鉄三田線の千石駅そばの不忍通り沿い。実は会社から歩いていける距離にあるのだが、なぜか初めての訪問。
あさりの酒蒸しをつまみに昼からビール。うまい。料金もお手頃。あさりが半分くらいなくなったところでせいろを注文。
変な話だが、おいしいと思ったお蕎麦屋さんは、まず薬味が美しいのだ。仕事が丁寧だからかもしれない。ネギは白い部分だけをものすごく細く刻んである。さびは本わさびなんだけれど、わさびの皮をちゃんと剥いてある。いい感じ。
いただきます。
細切りの蕎麦は十分にコシがあるが、固くない。コシと固さは同じ概念ではないのだ。 つゆも薬味もいらないくらいおいしいお蕎麦屋さんに限って、つゆも薬味もうまいのだ。そばだけで食べておいしい。丁寧に刻まれた繊細なネギと一緒に食べてもおいしい。皮を剥いてすり下ろされたわさびの峻烈な味も蕎麦に合う。
つゆはぼくの好みの辛汁で、だしの風味がたっぷりきいている。
すっかり堪能したところで蕎麦湯が登場。
猪口に注ぐと、とろんとろんの蕎麦ポタージュ。もうひと味堪能させて頂きました。
家から歩けるところに岩舟があり、会社から歩けるところに蕎庭があるということの幸せをしみじみかみしめて生きていこうと思いました(大げさな………)。