昔に別れた恋人と出会うような感じで、街で偶然再会した一枚のCD。それが山下洋輔。昔に比べ音楽を聴く時間が極端に落ちた上、聴くものといったら軽めのものばかり。こういうの一生懸命聴いてた頃があったんだよなあ、と昔を思い出して、しばらくは山下洋輔週間を繰り広げてしまうことに。
まずは「Breathtake」。
ジャンルで言うところのクラシックの現代音楽とフリージャズがきわめて近い位置にあった時代。特にドイツでその二つが融合し、ドナウエッシンゲン音楽祭にアーチー・シェップが登場した1960年代後半から70年代。
誕生したばかりのフリージャズが、既存の方向性を否定することに終始した印象を与えるのに対して、70年代のフリージャズ、あるいはポスト・フリージャズは、そこから何かを作り上げようとする気がする。たとえば「リターン・トゥ・フォーエヴァー」がもたらしたあの自由感あふれる感覚は、何かを否定しようとするものではない。
このディスクの7曲もそう。エントラムにかすかに響く「Someone watch over me」とか、ブレステイクでのヴェーベルンっぽい響き、どれも素敵だ。ここにもやはり何かを否定しようという影はない。そして特筆すべきは、発売されて30年が経過するのに、これらの曲がみな古くなっていないことだ。