1968年、エリス・レジーナElis Reginaはフランスのテレビ番組「dim dam dom」に出演、パンチの効いたUpa Neguinhoを披露している。「dim dam dom」は1965年から1970年まで月に一度、日曜夜に放送された音楽番組で、当時人気の高かったフランス歌手(ミレーユ・ダルク、シルヴィ・バルタン、フランス・ギャル、フランソワーズ・アルディ、クロード・ジャド、マリー・ラフォレ、シーラ、シャンタル・ゴヤ等)がこぞって出演している。
このZazueiraが収録されているアルバムには他にビリー・ジョエルのJust The Way You Are、ロバータ・フラックがヒットさせたFeel Like Making Love、キャロル・キングのYou've Got A Friendなど時代を代表する名曲の数々が洗練されたアレンジで歌われており、私の愛聴盤の一枚になっている。
Mas Que Nadaは作曲者であるジョルジュ・ベンJorge Benによるフォーキーかつファンキーなオリジナル曲と、アメリカ市場を意識してスイング感を前面に押し出したセルジオ・メンデスSérgio Mendesによるアレンジ曲の二通りの楽しみ方が出来る傑作であり、この曲をカバーするアーティストもフォーキーか、スインギー(ダンサブルと言っても良い)のいずれかのアレンジでこの名作の素晴らしさを世に伝えてきたと思う。
この曲が世に出て50年以上経った今でも誰かがレコーディングしているはずだ。そして私は見知らぬアーティストの手になるMas Que Nadaにめぐり合えると、果たしてカバーしたアーティストはジョルジュとセルジオのどちらの曲調を踏襲したのだろう、と胸が高鳴ってしまうのだ。
今日紹介する映像は1970年代後期にジョルジュ・ベンとセルジオ・メンデスがテレビ番組でMas Que Nadaを競演したもので、世界的に人気の高いジルベルト・ジルGilberto Gilもギターとコーラスで参加している。
ボサノヴァは男女のデュエットで歌われることが多いが、この3月の水Águas de Marçoはデュエット曲として最高傑作の呼び声も高い。そしてアントニオ・カルロス・ジョビンAntonio Carlos Jobimとエリス・レジーナElis Reginaによるオリジナルバージョンこそが史上最高と評価されるに相応しい。
カテリーナ・バレンテCaterina Valenteは1960年代において世界各国のテレビ番組にゲスト出演しているのだが、自分の看板番組も多数持っていた。調べてみると、イタリアだけでもBonsoir Caterina(12回放送)、Nata per la Musica (12回放送)、Bentornata Caterina(3回放送)、そしてUn'orainsieme (特別番組) という数多くの番組でイタリアの視聴者を魅了していたことが分かった。
彼女がパーソナリティをつとめる番組のひとつ、Bentornata Caterina! (直訳すると「おかえりなさい、カテリーナ!」)でブラジル音楽を取り上げていた映像があった。曲は1967年にリリースされたEdu LoboのUpa Neguinhoなのだが、ゲストでお洒落にアレンジされた伴奏を披露するのが、なんとSergio Mendes & Brasil '66だ。この時代から音楽ビジネスはグローバルだったのだなぁと感心する。
Mas Que Nadaはアルバムの冒頭を飾る曲で、このセルジオ・メンデスのアレンジを元に幾多の歌手に歌い継がれて来た。CMにも何度も取り上げられており、1998年にTamba Trioの演奏がNikeのCMに使われた時は曲と映像のコンビネーションの良さにうなってしまった。2006年にはBlack Eyed Peasとのコラボレーションで若い世代にもアピールしたのも記憶に新しい。
今日紹介するのは the 12 Cellists of the Berliner Philharmonikerというベルリン交響楽団の12人のチェリストから成るパフォーマンス集団が演奏するMas Que Nada。指揮するのは同じくベルリン交響楽団の管楽器奏者Sara Willisで、指揮というより余興でやっている感じかな。
Nicki Parrottはオーストラリア ニューカッスル出身のジャズ・ベーシスト/ヴォーカリスト。幼少より音楽に親しんだNickiは15歳の時にはベースを手にし、シドニーの音楽院でジャズを学んだ後CDデビュー。1994年に活動の場所をニューヨークに移し、Rufus Reidにジャズ・ベースの手ほどきを受けた後、N.Y.のライブスポット Iridium でLes Paul Trioのベーシストを務めるなど、ウッド・ベースを弾きながら艶やかにシルキー・ヴォイスで歌うスタイルで注目を集める。日本で'07年にリリースしたアルバム"Moon River"と翌年にリリースした"Fly Me To The Moon"はスイングジャーナル誌のベスト・ジャズ・ボーカルアルバムを二年連続で受賞するなど日本での評価も高い。Nickiはブロードウェイのショーでも演奏している他、“The Gossip Girls”などのテレビ番組にも出演している。
本日紹介するのは、'08年にリリースしたアルバムFly Me To The Moonの中のタイトル曲で、シドニーのVenue 505というクラブでのライブ映像。
是非アルバムも聴いて欲しい。演奏良し、アレンジ良し、そしてとりわけボーカルが素晴らしい。
Fly Me To The Moon
01. Bei Mir Bist Du Schoen
02. I Love The Way You're Breakin' My Heart
03. Do It Again
04. Fly Me To The Moon
05. La Vie En Rose
06. Waltzing Matilda
07. I Never Had A Chance
08. Evil Gal Blues
09. For All We Know
10. Charade
11. I Never Dreamed You'd Leave In Summer
12. Them There Eyes
13. Two For The Road
彼女のボーカルが味わえるライブも紹介しよう。上述したN.Y.の Iridium で'12年7月に演奏しWebcast発信したYou'd Be So Nice To Come Home Toだ。
Nicki Parrott - vocals and bass
Lou Pallo - guitar
John Colianni - piano