ある事件

おのおのがバラバラなまま奇妙な感じでヒートアップ

生々しい現場は毒々しい感じでもあった

チームワークなんてものはどこにもなく
すべてが荒みきってバラバラで
どこを目指しているのかまったくわからない状態だった

とりあえず現状を把握しようとするが
頑として受け付けないという様子ですべてが固まっていた

この惨劇を引き起こした羽根は舞台の外側に転がっていた

パウンドケーキ作りそこなった！

捨てようとしたが固まったそれは動こうとしない
それでも、水分を補給させると
少しずつ固まっていたものはほどける

あきらめたらそこで終わりですよ！

そんな言葉が浮かんで苦笑する

水をさらに加えてなんとなくまだいけそうな気がして
再度焼いてみることにする

羽根を入れるのも一苦労で小麦粉と格闘してなんとかはめる

回転を加えるともうおれらがまとまることはないんだと
ばかりに羽根の外側で固まる

少しずつ中にいれハタと思いつき、もう一個、卵を加えると
ついにまとまろうとする兆しが

あとベーキングパウダーももう効かないかなと考えて
少し加えてみる

再びゲームセットの笛が鳴る
完全にまとまるということはなく
そぼろ状ではあるがパウンドケーキはついに完成した

ひとつ運が良かったのは
その時に食パンを焼こうとしなかったこと
イースト菌が入っていたらこうはいかなかっただろう

二度とこの惨劇が起こらぬよう
ホームベーカリの蓋に消えかかった
羽根！という文字を再び刻む