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リラの会は、ソプラノ歌手関定子門下の声楽家集団。
「関定子」先生という声楽家は、人間を超越した「芸術品」だと、私は思っています。
それは、イチローと似ています。人間の能力の可能性と芸術性を、
生きていることで知らしめる存在。
私は、声楽家住吉和子さんの伴奏で出演しました。
実は、私がソロのピアニストとしてデビューしたのが、この音友ホールでした。
全く無名の私を、関定子先生が推薦して下さり、ニッポン放送のクラシック番組「新日鉄コンサート」で
2週に渡り、私のリサイタルが放送されることになったのです。
40歳でのソロデビューはクラシックピアニストとしては前代未聞?!
ありえない幸運を関先生から頂いたのです。
そのデビューコンサートで、「死んだ男の残したものは」を
ピアノソロ曲にアレンジして演奏しました。
そして、昨日偶然にも、同じ作品を
今回は歌の伴奏(私のアレンジ)で演奏することになったのです。
住吉さんが歌い始めると、聴衆の空気が変わりました。
すると私に、本番独特の集中の入り口が現われ、すーっと入っていきました。
そこからは、もう無心で覚えていません。
歌が終わったとき、すぐには立てませんでした。
ブラボーがかかり、呆然と立ち上がりました。
ステージをはけて、強烈な脳の疲労感に襲われ楽屋で座り込んでしまいました。
初めてこの歌をアレンジしたときも、私は放心して自宅のピアノ室で
床に横たわったまま動けなくなりました。
この歌は、ただの反戦歌ではありません。
抗えない力、真理の核が込められていると感じます。
演奏するたびに、脳に強烈に何かが起きる。
それが何なのか、未だわからないけれど、
作品の成せる業だということは、わかっています。
13年の時の流れを経て、再び演奏した「死んだ男の伸したものは」。
自分の歴史と、変わらぬ作品の力。
感慨深い本番でした。