優しい色合いが目を和ませる「シデコブシ」。絶滅危惧種のようだが、今では園芸種としてふつうにみかけるようだ。
(2023年春 川崎市)
2023年春の花シリーズ
「ジャイアント・スノードロップ」(春の花シリーズ 23-01)
「セツブンソウ」(春の花シリーズ 23-02)
「ユキワリイチゲ」(春の花シリーズ 23-03)
「福寿草」(春の花シリーズ 23-04)
「ミチノクフクジュソウ」(春の花シリーズ 23-05)
「福寿海」(春の花シリーズ 23-06)
「ロウバイ」(春の花シリーズ 23-07)
「シナマンサク」(春の花シリーズ 23-08)
「八重寒紅」(春の花シリーズ 23-09)
「カラスノエンドウ」(春の花シリーズ 23-10)
「クモマグサ」(春の花シリーズ 23-11)
「スイセン」(春の花シリーズ 23-12)
「ペーパー ホワイト 」(春の花シリーズ 23-13)
「キズイセン」(春の花シリーズ 23-14)
「スイートアリッサム」(春の花シリーズ 23-15)
「ヒマラヤユキノシタ」(春の花シリーズ 23-16)
「クロッカス」(春の花シリーズ 23-17)
「ツルニチニチソウ」(春の花シリーズ 23-18)
「ムスカリ」(春の花シリーズ 23-19)
「キルタンサス」(春の花シリーズ 23-20)
「サクラソウ」(春の花シリーズ 23-21)
「ジャノメエリカ」(春の花シリーズ 23-22)
「芝桜」(春の花シリーズ 23-23)
「ネモフィラ」(春の花シリーズ 23-24)
「カレンデュラ」(春の花シリーズ 23-25)
「ヒアシンス」(春の花シリーズ 23-26)
「菜の花」(春の花シリーズ 23-27)
「バラ咲きジュリアン」(春の花シリーズ 23-28)
「沈丁花」(春の花シリーズ 23-29)
「キュウリグサ」(春の花シリーズ 23-30)
シデコブシはモクレン科モクレン属の落葉小高木で、日本固有種である。かつてはレッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されていたが、2006-2007年発表のレッドリスト第2次見直しの結果、準絶滅危惧(NT)に指定されている。 分布は、東海三県の丘陵地に限られ、具体的には岐阜県の東濃・中濃地域、愛知県尾張・三河・渥美地域、三重県北勢地域で、特に愛知県渥美地域、三重県北勢地域の集団は隔離分布をしている。これらの地域には他にも多くの固有種、準固有種があり、これらの種は東海丘陵要素と呼ばれている(植田 1989)。シデコブシの生育する立地は、湧水のある山裾や小さい谷の湿った谷底(Ueda 1988)、丘腹斜面の小規模な水路(リル)(後藤 1992)、丘陵斜面の水路底(菊池 1994)である。
シデコブシの局所集団は通常小さく、湿地や小さな川沿いに断続的に出現し、局所集団は全体としてメタ個体群構造をとる。樹高は10m以上、胸高直径が20cm以上にまで及ぶ。根元から萌芽幹を出し、しばしば株立ちする。花は早春に、開葉に先立って咲き、雌性先熟の両性花を咲かせる(写真1)。1つ花の開花期間は約10日で、株全体では20日間程度開花する(Setsuko et al. 2008)。同じモクレン科のコブシやタムシバと比較して、花被弁が9-25枚と多いのが特徴である。花粉は主に甲虫によって媒介されるが、セイヨウミツバチやマルハナバチの訪花も観察されている(Yasukawa et al. 1992, Setsuko et al. 2007)。果実は8-9月に成熟し、最大で40個程度の種子を含む集合果をつける(写真2左)。種子はしばしば樹冠下に落下しているのが観察されるが、ヒヨドリ等の鳥類が散布に寄与していると考えられる(写真2右) 。