寒い。いきなり寒くなりましたよ…
前回Presepio(プレゼピオ)について書きましたが、それを書きながら1つ思い出したことが有ったんです。
既に10か月も前、昨年末から今年の頭にかけてのお話です。
実は昨年の12月から1月6日にかけて、首相官邸で Presepe d'Italiaというイベントが有り、予約は必要でしたが、首相官邸内に展示してあるイタリア中から集めたプレセピオを見る機会が有りました。
てっきりこの話、アップしたもんだと思っていたのですが…ということで、今更ながらですが紹介させていただくことに。
以前もブログに書いたことが有るとは思いますが、Presepio(プレゼピオ)の起源はSan Francescoと言われています。
Assisiの聖フランチェスコ大聖堂に描かれたGiottoのこの作品が有名です。
Presepe di Greccio(グレッチョのプレゼぺ) と呼ばれる作品。
これは教会の中の様子ですが、実際はGreccioというRieti県内、UmbriaとLazioの境の街の洞窟で行われたといわれています。
このエピソードは聖フランチェスコの伝記に登場しています。
1223年のクリスマスの夜、フランチェスコはキリスト誕生の様子を再現しようと考えます。
この頃フランチェスコは聖地ベツレヘムから戻って来たばかりで(実際には行っていない、という説も有りますが)
Greccioが選ばれたのは、ベツレヘムに似ていたから、と言われています。
この時は人形ではなく、生身の人間で。
今でも生の人間を使ったプレゼピオは各地で行われています。(赤ちゃん風邪ひかないで~)
聖人伝によると、ミサの最中フランチェスコが生の(?)赤ちゃんを抱いて、ゆりかご(飼い葉入れ)に置いたそうです。
この絵もそのシーンを描いていますよね。(実際は教会内ではなく、洞窟内だったとも言われています)
「キリスト誕生」のシーンを扱った絵画などはこれより以前も存在するのですが、教皇Onorio III公認の元、”プレゼピオ”として、3次元でキリスト誕生のシーンをクリスマスに再現したのはフランチェスコだったようで、ここから彼がプレゼピオの創設者と言われる所以になっています。
ちなみにPresepio、Presepeとは元々ラテン語のpraesaepeから来ていて、本来飼い葉(まぐさ)入れ(おけ)を意味しています。
本題に入る前にもう一つ、クリスマスツリーですが、実はこちらも飾られていなかったわけではないようです。
”木”はキリスト教にとっても、とても重要なアイテムの1つ。
原罪を負ったアダムの墓から生えた木で、キリストの十字架は作られる。
またイブは木になっていたリンゴを取って食べたことで、原罪を負わされることになるわけですから。
ただ、木に飾りつけをした、現在のクリスマスツリーの原型が登場するのは1605年の事でした。
この最初のクリスマスツリーの飾りはリンゴと聖体(ostia:聖別されたパン)だけだったそうです。
ドイツ圏のクリスマスのお菓子は、この聖体が発展したものなんだそうです。
前回書いたメトロポリタン美術館のクリスマスツリーの下にプレゼピオを飾る形は、特別珍しいものではなかったんですね。
でも本場ヨーロッパではこのスタイルほとんど見かけないから、やはり素晴らしい。
カソリックとプロテスタントの融合ということももちろん有るでしょうが、
救世主の誕生と原罪から救世主の背負わされる十字架、キリストの総合的な運命をイメージしたものなんですね。
いやいや、ここら辺の事はキリスト教徒ではない日本人には難しすぎました。
昔買ったプレゼピオの本を引っ張り出してきて読みながら書いているのですが、この本も宗教ありきで書かれているので、難しい…
いや、最近全然イタリア語の本、ちゃんと読んでないせいかな?
そしてもう一つ気がついた。
実は身近に同じ飾り方をしているところが有るじゃないですか。
それはヴァチカン。
ヴァチカン広場ではそろそろクリスマスツリーとプレゼピオの準備が始まります。
あっ、既に先週クリスマスツリーは設置されたみたいです。
今年はツリーはTrentinoから、プレセピオはMaltaから来るそうです。
こちらは12月9日から2017年1月8日まで。
いや~そうだったのか。
今まであそこの木は、ハイジの家の後ろに生えてるモミの木くらいの重要性しかないと思っていたけど(この例えはいまいちかな?)、そういうことではなかった、ということですね。
知らなかった…というより、今まで意識した事なかったですわ。
今日も新しい発見が有って良かった、良かった。
ようやくここで話を首相官邸に戻しますが…ここからは軽いですからねぇ。
この日も雨がすごかったです。
なんか今年はRoma行くと雨が多かったなぁ…
入り口で荷物チェツクを受け、みんな一緒に中に入ります。
撮影は禁止、と言われて入ったんですよねぇ。
でもプレセピオの展示されている場所は撮影Okでした。
室内にはイタリア全土、20州から1個づつ出展されていた…ん?カタログには21体有るぞ?
プレゼピオだけではなく、天井の装飾なども気になるのですが…
せっかくなのでカタログと同じ順番(アルファベット順?)で1つづつ紹介していきましょう。
どうも古いものではないみたいなんですよね。
このイベントのために新しく作ったり、別のイベントのために作ったものを持って来たみたいですが、どれもその州の特徴を活かしているそうです。
Abruzzo
古いものではありません。
切り株を使っています。きのこ付き?
Basilicata
私はこれが良かったですねぇ。
世界遺産にも登録されているMateraのSassi地区を表現しています。
Calabria
1950年代をイメージした服装などになっています。
Campania
Napoliを擁するCampania州はさすがですねぇ~良いですねぇ。
1700年代のテクニックを使って、ローマ時代の神殿をイメージした作品。
Emilia Romagna
こちらは70体のグループの中の5体。
実はBolognaはNapoliと並んでプレゼピオが盛んだったんです。
Napoliとの違いはこちらは洋服も一緒の彫刻や鋳造で、顔や腕が木やセラミックで出来ていたり、布でできた衣裳を着たお人形さんはこのEmilia Romagna地区のプレセピオには有りません。
こちらもCeramica(陶器)でできています。
Friuli Venezia Giulia
ちょっと面白い。
この地方の特徴的な鐘楼とビザンチン美術の特徴の入り混じった作品。
Lazio
この写真では分かりにくいですが、ランプの中にはSan Francescoがいます。
最初にお話した通り、聖フランチェスコがプレセピオの創設者ということで、この作品。
Liguria
こちらはGenovaのもので、衣裳がすごい。
1600年初めから1810年頃まで、木製の人物マネキンに特化した木彫り工房が沢山Genovaには有ったそうで、
そんなことからGenovaでもプレセピオは盛んに作られていたそうです。
Lombardia
こちらは木製。それに着色したもので、ちょっと古いもの。
1800年の終わりごろ、宗教美術の制作、修復をしていた彫刻家一家に生まれたOnorato Ferrari(1897年生まれ)の作品。
Lombardia地方のプレゼピオは2つの木と石膏の2種のマテリアルから出来ているものが多いです。
Marche
南国ちっく。パレスチナをイメージしているそうです。
2階建てになっていて、上にキリスト生誕と東方三博士の来訪、下に馬小屋が有ります。
上のプレセピオの一部にローレートのSanta Casaの石が使われています。
Molise
Piemonte
こちらは2004年から2008年の間に作られたもので、一番下の段にはGelindo(羊飼い)と召使のMaffeo、その家族などがいます。
他も昔のピエモンテのプレセピオの典型的な人物が集められています。
Puglia
こちらは張り子。
洋服はパレスチナ風。
Sardegna
これは今までのとは違ってすごく小さいんです。
コルクと石で出来てるらしい。
Sicilia
こちらはTrapaniで作られたサンゴで出来たプレゼピオ。
Toscana
Luccaのもの
Umbria
これは現在のものだけど、この彫刻の手法は17世紀から伝わるもの。
Valle d'Aosta
Giovanni Thoux作で、2010年から制作を開始した作品。
農民の生活からイメージを受けた新しいキャラクターも一緒です。
Veneto
Veneziaと言えばガラス。ということでこちらはガラスのプレゼピオ。勿論Muranoの職人さん作。
Alto Adige
これヨーロッパハイマツという樹齢100年以上の木一本からできてるんですって。(2パーツに切れてるけど)
最後がTrentino
以上です。
そして帰り際に
ぽつんとクリスマスツリー
ここを訪れたのは1月4日でしたしね。
とまぁこんな感じで大統領官邸で行われたプレゼピオの展示会でした。
今年はないのかな?
と思って公式サイトを見たら、中国関係のイベント開催中のようです。
ともかく今年もこれから1か月強、どんなプレゼピオが見られるか楽しみです。
やばっ、また結構長くなっちゃった…
これで連想するのは ルカ デッラ ロッビアが開発したらしいあの青と白の美しい聖母子像の先行形態に、こういうものがあったのではないかと想像したくなりますね。東京のカトリック関係の集会所?のウィンドウにも12月ごろにロッビア風の小さな陶像が飾られてありましたし。
日本でもキリスト教関係の施設では見られるんですね。