イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

今年はルーベンス

2015年12月16日 20時55分36秒 | イタリア・美術

昨日行きの電車が暇だったので、珍しく投稿してみました。
ミラノに到着したのが9時過ぎ、帰りの電車が8時45分発(遅れた!)のでほぼ12時間滞在できたので、
6か所の展覧会と1教会、クリスマスのイルミネーション撮影など、盛りだくさんな内容で満喫できました。
但し、気持ちは「もっと、もっと」と思っていても、普段の運動不足のせいか、足が前に出ませんねぇ。
もう一か所くらい行けたかな?とも思うんですけど、最近はなかなか。
まぁ2万歩ですからそんなもんですかね?

疲労困憊で11時頃家に戻ったにもかかわらず、今日は朝寝坊できなかったんですよ。
実は今朝クリスマス休暇に入る前に教授に論文を預ける予定だったんです。
教授に面会できるのは水曜日と金曜日。
本来論文関係の人は金曜日なのですが、休暇直前の今週は、もしかしたら教授が受けないかも…ということで無理やり今朝行こうと思っていたのですが、
月曜日論文を印刷してびっくり、書式が1章と2章で違っている!
行間の広さが合ってないんですよ!

教授の指定で行間を1.5行に揃えないと行けないのですが…何で???
それに気が付いたのが月曜日、印刷しちゃった後。
そして直そうにも何故かうまくいかない。
何度やっても、コピーして貼り付けしなおして、など色々試したのですが、どうしても同じにならない…なんで???
昨日は1日出かけることになっていたので、帰ってから、とも思ったけど…
40枚近く有るから家のプリンターではできれば印刷したくないし。
結局教授にわけを話してとりあえず内容だけチェックしてもらおうと出かけたんです。

すると教授の部屋に行ったら、生徒がいっぱい。
あれ?と思って女の子に聞いたら「今日は試験が有る」と
あああ、ということで出直しです。やはり金曜日に。
まぁそれでやり直すことが出来たんですけど。

全く便利なんだか何なんだか?
どうしよう~と思っていたら、結構ちょっとしたことで解決できました。
コツさえわかれば、というレベルの”事故”でした。
ええ、さっき正しいのを印刷して確認しました。
これで金曜日教授がいなかったら…あり得るからなこの国。

さて、なぜ昨日ミラノに行ったのか?
ミラノにこの時期に行くには理由が有るんです。
毎年ミラノ市が無料で見せてくれる傑作を見に。
今年はルーベンスだったんですね。

ルーベンスと言えば、「フランダースの犬」
こう考えただけでも悲しくなります。
何度見ても涙、涙。
昔(かれこれ20年くらい前かなぁ)確かアメリカに行った帰りの飛行機でこの映画版が流れていたんです。
確か当時は個人スクリーンではなく、大スクリーンでだったと思います。
飛行機でこれを流すって…あの最後のネロとパトラッシュが死んでしまう最大のクライマックスが来たとき、ものすごく雰囲気が重くなり、
終わった同時に大勢がトイレに立ちました。
この物語は大スクリーンではなく、一人で見るもんですよねぇ~って思ってしまいました。

で、私は今晩ルーベンスのどんな絵だったかなぁ、と思ってまたフランダースの犬を見返してびっくり!
何度も見たことが有るはずなのに、今まで全然気が付かなかったけど、アントワープの大聖堂にはルーベンスの絵が2枚有ったのね。
映画版を見直していたら、最初にネロが大聖堂に入った時に「ここに2枚ルーベンスの絵が有るんだ」って友達に言ってるじゃないですか。
そしてあの号泣の最終回。
ちゃんとネロは2枚見てましたよ~

キリスト磔刑図と

キリスト降下

それにしてもただただ悲しいお話しと思っていたけど、これ結構よくできてる。
この開閉式の祭壇画ってこの地方の特徴の1つだよね。
たぶんカーテンだけでなく、普段はこの扉も閉まっていたはずなので、ネロは偶然カーテンが揺れたりしたとしても、中の絵は見えなかったはず。
そしてネロが偶然にも絵を見られたのはこの日がクリスマスイブだったから。
というよりあれは既にクリスマスになってるね。
だって、クリスマスのミサのために絵のカーテンが特別に開けられてたんだから。

そしてカーテンねぇ…
「金貨一枚出さないと見れない」ってネロは言ってたけど、全くどんだけ高いんだか。
しかしカーテンのせいでどれだけの美術品が消えてしまったことか。
というのも昔教会の中はろうそくを灯していましたよね。
これが倒れてカーテンに火が移り、多くの作品が灰に。
イタリアではカバルカセッレがそこに言及してイタリア国内ではカーテンが廃止されたと最近どこかで読んだなぁ…と思ったんだけど思い出せないんですよね。
とにかく当時の様子を忠実に再現した、とてもよくできたアニメだこと。

だってフリッツ食べてる~
ホントに子供向けのアニメなんだろか???
そしてなんでここまでかわいそうなお話なんだろう。
実はこのお話しってイギリス人が書いたもので、イギリスでは全然有名なお話ではないとか。
こんなに悲しいお話だしねぇ…
と映画版を見ながらまた号泣しておりますので、なかなか先に進めません。
やばやば、本気で泣いてしまった…

え~何でしたっけ?
”フランダースの犬”本で読みたいですね。(イタリア語版ってあるかしら?)
って何を書こうと思っていたんだっけなぁ…
そうそう、このミラノ市が毎年やってる展示会には当然この時期にふさわしいテーマのものがやって来ます。
昨年はブタベストからRaffelloが来てたんだよねぇ・・・と思ったらこの作品、今回別な展覧会でまた展示されていました。
もしかしたらお家に帰らず、ずっとミラノにいたのでは?
他にもCaravaggioだった時も有ったし、後は…覚えてないな。
とにかく毎年良いもの見せてくれるので、欠かさず行っているわけなんです。
こうしてみると今年は本当にフランドル派(オランダ、ベルギー関係)に縁が深かったし、改めて開眼した年でもありました。


9時半開場ということで、丁度良い時間に到着したんですよね。
でも既に結構並んでいました。
普段は並ぶの嫌いなイタリア人も、こういうところでは結構並んでいます。

そしてどう見ても開場してない…
後ろの人の話では「毎年来るけど9時半に開いたためしがない」とのこと。
まぁここはイタリアですからね。
更に今年は入り口でセキュリティーチェツクが入りました。
とにかく人が集まるところには銃を持った軍人さんなどが目に付きます。
Duomo広場にも大勢いました。
ということでこれ例年以上に時間かかるなぁ…ということで早く来てよかった。
9時45分位に入場が始まり、何とか2番目のグループで入れたので、列が動いてからほとんど待たずに済みました。

今年はフラッシュ抜きなら撮影OKということなので撮らせていただきました。
例年通り説明のお姉さんが引率するグループで見学となります。
ということで、かろうじて覚えていることを思い出して書いて行きましょう。

Marche州FermoのPinacoteca civile(市立美術館)所蔵
ということで、あれ?って思ったんですよね。
そして中に入って、その思いを強くしました。
もしかしたらこのイベント今年が最後かも…なんて。
だって今までと比べたら…どこも経済難ですし、世紀の大イベントエキスポが終わってしまった今、ミラノ市がそれほど経済的に余裕が有るとは思えないんですよねぇ…
まぁ来年の事は私も分からないので、よしとしましょう。

テーマはAdorazione dei pastori(羊飼いの礼賛)
この場面はルカの福音書の記述を参考にしたもので、
ルーベンスはもともとカルヴァン主義だったのが、キリスト教に改宗したと言っていましたね。
更に対抗宗教改革の影響をまともに受けた作品を描いています。
この作品、この夜の感じはCorreggioが同じテーマで描いた通称La notte(夜)

という作品↑をルーベンスが直に見たことを物語っています。
似てるでしょう?
こちらの現在ドレスデンに有るということで、数年前に見たはずなんですけどねぇ…
ルーベンスは8年間イタリアに滞在しています。
特にMantovaのVincenzo Gonzagaの元で外交官として働きます。
この時代のゴンザーガ家には既に過去の輝かしい栄光は有りませんでしたが、資金援助を受けていたようです。
後年、ヴェネツィア派の影響が強くその中でも明暗の描き方など、特にTizianoから多大な影響を受けています。

実はこの作品最後のルーベンスの作品と言われているそうです。
というのもルーベンスはアントワープに帰ると、大きな工房を持ち、多数の弟子を雇うようになるんです。
そうなるとどこまでがルーベンスだけの作品かということが分からなくなる。
ということで、これがルーベンスが一人で描いた最後の作品と言われる所以です。

絵を見てみましょう。
実はこれ1900年代始め、美術史家でうちの大学の教授でもあったRoberto Longhiによってルーベンスの作であるとお墨付きをもらった作品で、
1608年ルーベンスがローマ滞在時にFermoのSan Filippo Neri教会内のCostantini礼拝堂のために描かれたものです。
ローマ滞在時にカラバッジョの作品を見たんでしょうね、当時既にカラバッジョはローマを出てナポリに滞在していましたが影響が強く出ています。
対抗宗教改革の影響だけでなく、バロック様式の特徴である大げさな感じとか、まぁ色々な要素の混じった作品ということが出来るでしょうね。
良いとこどりした作品とでも言えばいいのかしらん? 

面白いのは、背景に十字架と思われる木が描かれています。
本来、キリストの将来を思わせるような”小物”を絵に描きこむことが多く、
受難を意味するものをキリストが生まれながらに持っていることが多いです。
例えば首から下げたサンゴのネックレスとか。
この作品にはそれが描かれていない替わりにこの馬小屋の梁のような木が、実は十字架のようにも見えるんです。
他にも上空を飛んでる天使がもっている紙には救世主が現れたことが書かれているそうです。


他にも色々説明が有った気がするんですけど、思い出せません。
ということで目も腫れているので(泣きすぎ)今晩はこの辺で…って大したこと書いてない気がします。
すみません。

実は今週末からちょっとお隣へ。
本当はついでにベルギーにも行こうと思ったんです。
でもドイツはそれほどでもないけど、なんとなくブリュッセルは心配かなぁというのと
一度では見切れない!(欲張りだからねぇ、わたし)
ということで今回は卒論関係で見逃している一番大きな美術館とクリスマスマーケットを狙ってフランクフルトとその周辺に行ってきます。
このためにも早めに卒論の下書きを教授に見せたかったんです。

ドイツと言えば同じ時期にドレスデンとベルギーに行った時に悪夢がよみがえりますが(大雪で3日足止めを食らったあげく、電車で戻って来た)
今年は暖かいので、それだけはなさそうです。 



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