イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

イタリアのクリスマスのお菓子はPanettoneだけじゃない!ー北イタリア3州その1

2020年11月30日 17時41分24秒 | イタリア・食

昨日完全にドイツモードになった私は、凝りもせず今日KALDIでシュトレンを購入。

食べ比べ~食べ比べ~
って、新型コロナウィルスの感染者が増加し、外出を控えているため運動不足なのに、またこんなカロリー爆弾を食べても良いのだろうか?

さて、昨日シュトレンのことを書き終えた後、はて?今はイタリア全土でクリスマスと言えばPanettone(パネットーネ)やPandoro(パンドーロ)だけど、それって交通網が整備されたりした最近でしょ?
絶対地方の伝統的なお菓子を食べていたはず…ってことが気になって、今日はまたまた甘いもののお話です。
美術の話はしばらくお預けです。

イタリアのことだから、当然前20州、それぞれの伝統的なお菓子が有るとは思っていたけど、こんなに違いが有るとはね。

まずこの地図を見て下さい。


この地図によると、1洲につき最低1個、多ければ4種類くらいのクリスマス用のお菓子があるみたい。
ということで1洲ずつ見ていきましょう。

Valle d’Aosta(ヴァッレ・ダオスタ州)
スイスやフランスとも国境を接するイタリア北西部の州ヴァッレ・ダオスタにはMicoòula(ミッコーウラ)というお菓子があります。

写真:https://www.vdgmagazine.it/
これは小さくておいしい丸いパンで、12月8日の無原罪の御宿りの日からクリスマス期間中に食べられます。
ライ麦と小麦を混ぜたこなに天然酵母、水が基本。そこに茹で栗や乾燥イチジク、細かくした胡桃、干しぶどうやチョコレートなどを入れ、味を豊かにします。
見た目カントゥッチだけど、味はどうかな?

Piemonte(ピエモンテ州)
トリノ(Torino)を州都とするピエモンテ州の伝統的なクリスマスのお菓子はTronchetto di Natale(クリスマスのトロンケット)

写真:https://www.turismo.it/gusto/
ってあれ?
これはフランスのビュッシュ・ド・ノエル (仏: bûche de Noël) ではありませんか?
フランスでもクリスマスに食べられていますが、ピエモンテ州でも伝統的なクリスマスのお菓子。
まぁ地理的には近いですからね。
古い伝説では暖炉にくべた大きな切り株が新年に祝福をもたらすとか、ピエモンテ州の農民たちはクリスマスの夜からエピファニア(1月6日)までの12夜、毎晩暖炉に切り株をくべ、それをなるべく長く燃やし、吉兆を占っていたとか、いわれは色々あります。
材料の主役は栗のクリーム、チョコレート。
卵とバター、マスカルポーネ、ブランデーに生クリームってこれまさにカロリー爆弾(これ私が行ってるんじゃなくてイタリア語の記事にも書いてあるの”una vera e propria bomba calorica”)
フランスの”ビュッシュ・ド・ノエル”も意味は「クリスマスの薪(木)」だから意味は同じだけど、どんな違いが有るのかは、完全に私の専門外なので、興味がある方は自分で調べて下さいね。

Liguria(リグーリア州)
海側に降りて来ました。リグーリアも西はフランスと接しています。
リグーリア州の伝統的なクリスマスのお菓子はPandolce(パンドルチェ)

写真:https://www.oggicronaca.it/
パンドルチェ、つまり「甘いパン」か。
砂糖漬けの果実や干しぶどうなどが入った柔らかいフォカッチャ。
作り方は簡単で、ごくごく自然な味わい。
リグーリアではクリスマス時期に色々な習わしがあるようなので、それもご紹介。

San Martino, si assaggia il vino novello(聖マルティヌス、新ワインを味わう)
11月11日のSan Martino(トゥールの聖マルティヌス)の日は、農業の1年最後の日を表す。
この日にはクリスマスの前最後の最大な昼食を取り、カンティーナからその年の新しいワインを出して飲み、焼き栗なども食べる。

Santa Lucia: l'uccisione del maiale(聖ルチア、豚)
12月13日、Santa Lucia(聖ルチア)の日は一年で一番昼間が短い日。
何でこの日に豚を殺すのかは不明だけど、これ生贄を捧げる宗教儀式。
そしてこの日に殺した豚を余すところなく全部食べる。
まず骨は塩漬け。cavoli neri(カーボリネーリ、黒キャベツ)の近くに入れて安く付け合わせにする。
頭は保存され、focaccia di granoturco(トウモロコシのフォカッチャ)やfarinata(ファリナータ)と一緒にクリスマスの深夜のミサの食べる。
中でも一番の御馳走はberodo(ベロード)という豚の血と脂の腸詰。
って、普通に日本人には全くイメージできないんですけど…こわっ。

Alla Vigilia si fanno le pulizie e i natalini(クリスマスイブは掃除とナタリーニ)
クリスマスイブには掃除をし、家にクリスマスの飾りつけをする。
長い糸ひもにginepro(ジネプロ、ヒノキ科の針葉樹)、月桂樹、オリーブの小枝、マカロニ、クルミ、ハシバミの木を通す。ちょっと文字だけでは想像できないんだけど…
午前中、女性はクリスマスのためにパンドルチェとラヴィオリの準備。natalini(↓写真。マカロニの長いや)やブロードの準備も忘れずに。
暖炉にはオリーブと月桂樹の枝を燃やす。弱く弱く燃やして元日まで持たせるのは、年の瀬を象徴している。
イブの昼食、夕食はごくごく軽く、キャベツを煮てオリーブオイルをかけたものや、ファリナータ、家で焼いたパンやトウモロコシのフォカッチャなど。

A Natale cappone lesso e natalini (クリスマスは去勢した雄鶏とナタリーニ)
クリスマスの朝、マンマたちは子どもたちに白パンを買ってくるようにと家から出す。
パン屋さんはパンを買いに来た子供たちにtorroncini(ヌガー)をくれる習慣がある。
25日の午後から夜遅くまでお祝いは続く。
テーブルの上にはご馳走が並ぶ。また
罪の贖いの象徴となるものも欠かせない。
それはクリスマスの深夜のミサで祝福されたscopino di erica(エリカ<ツツジ科>のほうき), 塩一握り、 la cassoa(穴のあいた玉じゃくし)、貧しい人のために白パンのバラの花形のパンと動物の為の食べ物など。

クリスマスの昼食の最初の御馳走はブロードに入ったナタリーニ。

写真:http://genova.erasuperba.it/ricette-genovesi-natale-natalini-in-brodo
続いて茹でた去勢した雄鶏にマスタードを添えて。
もし雄鶏がない時は"capponmagro”(カッポンマーグロ)にすることも。
”カッポン・マーグロは「断食日の鶏(Capon)」を意味する。カッポン・マーグロは肉を使用していないことから、クリスマス・イヴを含む伝統的なカトリックの断食日に最適な料理とされる。カッポンという名前の由来としては、クリスマスに鶏の代わりにこの料理を食べることから、富裕層が鶏の一種であるカポン(Capon)をもじった名称をつけたと考えられている。この料理は堅パンを使用していることも特徴の一つであり、スライスしてニンニクをすり込んだパンをスープやサラダボウルの下に敷く、フランスのchaponと比較されることもある。また、この料理には「カッポーネ」と呼ばれる魚(ホウボウやウミヒゴイに似た魚)の一種を使用する。”(引用:Wikipedia
長いクリスマスのお祝いは、tombola(トンボラ)のようなゲームをして終わり。
お金をかけるか、かけないかはその家族次第。

Pandolce una fetta anche per i poveri (パンドルチェの1片は貧しい人に)
12月26日のSanto Stefano(聖ステファノ)の日は、ラヴィオリを食べ、前日の残りが準備される。
昼食後にはクリスマスのお祝いで待ちに待った一皿の登場。
月桂樹の枝で飾られたパンドルチェ。
家族で一番若い人が、月桂樹の枝を取り、パンドルチェを切る。
そして一番の年配者は参加者に取り分けるだけでなく、一部を貧しい人のために取っておく。
クリスマス関連の昼食は胡桃、ドライフルーツ、ぶどう、古代リンゴ、西洋梨のシロップ漬けなどで幕を閉じる。
このパンドルチェについては、テーブルについた一番若い人がオリーブの小枝をパンフォルテに指します。
そして一番年長の人が全員に切り分ける、という説もある。
ちょっとグロテスクな写真はこちらの参考サイトでご覧ください。
https://www.alimentipedia.it/tradizioni-del-natale-in-liguria.html

これを読んでいると、クリスマスがイタリアでは如何に大切なものかということがよく分かると思う。
イタリアではいくら宗教心が薄くなっても、
”A Natale con i tuoi, a Capodanno con chi vuoi”.
「クリスマスは両親と過ごし、元旦は好きな人と過ごす」のが未だに普通。
今年は大変なクリスマスになることでしょう。

20州一気にやろうと思ったけど、長くなったので今日は北の3州で終わります。
残りはまた明日!!

最初の地図と本文参考:https://www.italianfoodexperience.it/notizie/dolci-tipici-natalizi/#



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