イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

クリスマスの匂いはBrodoの匂い!?-イタリア

2020年12月01日 18時19分42秒 | イタリア・食

今日から師走。
今年は出かけないので、コレクションのPresepio(プレゼピオ)の一部を出してみた。
本当は12月8日の”無原罪の御宿り”の日に準備するのが一般的なのですが、今年はアドヴェントを出したくて今日出しちゃいました。

こちらはコレクションの一部。
銀の左手前は球形になっている部分がきちんと閉まる。
その隣の隣は去年ドレスデンで買った木彫りで胡桃の殻を被っている。
後ろの洋ナシは確か教会のバザーみたいなところで買った手彫り。
場所がないので、小さいものだけ出しました。
アドヴェントはこちら↓

1には何が入っているのかな?(買った年、一度しか開けてないので中身をすっかり忘れてます)

中身は馬小屋でした。(これだけじゃなんだか分からないな。笑)
これから毎日載せていきますね。

さて、昨日の続きと行きたいところですが、昨日リーグリア州の伝統を書いていた時、ふと「中身は違えど必ずbrodoを食べるけど、意味はあるのか?」という疑問がむくむくと。
今日はそちらにしました。

brodo(ブロード)とは、辞書を引くと
(主にコンソメ)スープ
(スープを作るための)煮だし汁
ブイヨン
とある。

コンソメとブイヨンって違うものだよね?でも違いは?
コンソメもブイヨンもフランス語で、「コンソメ」は「完成された」という意味で「ブイヨン」は「出汁」。
ブイヨンをベースに煮込んで味を調えたものがコンソメ、となるそうです。
あれ?知らなかったの私だけ?
参考:https://tg-uchi.jp/topics/4026

で、イタリアではクリスマス大抵このブロードになにかパスタを入れた料理が出ます。
イタリア人の実に9割がこのブロードの匂い=クリスマスと感じているようです。

ただ、イタリア人はクリスマスにしかブロードを食べないというわけでも、クリスマスには特別なブロードを作るわけでもない。
例えばブロードは典型的な病人食(ちょっと回復したらミネストローネ)。
だから普段子供は食べたがらないし、マンマは冬の夜には作りたくない。
そんな悪夢を抱えつつも、イタリア人は最後の晩餐には自家製のcappelletti(カッペッレッティ)を食べたいと言うし、最低でもリゾットを作る時はブロードが欠かせないし、scarpetta(皿をパンなどできれいにふき取る)は行儀が悪いと分かっていてついついやってしまう。

実はクリスマスのお料理の真の主役はブロード!?
実はブロードは大切な役目を担っている。
ブロードはprimo piatto(1番目の料理)とsecondo piatto(2番目の皿。メインディッシュ)とを分け、消化を促す。
ゲストのお腹に次にやって来る新しい大量のご馳走の為に準備をさせるのがブロード。
だからクリスマスのブロードには固形のも、顆粒のも既成のものは入れない。(昨今は多少事情が変わっているかもしれないが…)
老いた雌鶏のお肉と季節の野菜だけをじっくり煮込んだブロードを使う。

写真・参考:https://primabergamo.it/

お肉、野菜もしくはお魚を煮込んだブロード無しでは真のクリスマスと言えない。
Valle D’Aosta(ヴァッレ・ダオスタ州)ではzuppa alla Valpellinentze

写真:https://www.lacucinaitaliana.it/ricetta/piatti-unici/zuppa-di-valpelline/
Trentino(トレンティーノ)はcanederli(カネーデルリ)と一緒に。

シチリア島からサルデーニャ島まで、12月25日のイタリア国内の全てのテーブルの上にはブロードが欠かせない!!
特に有名なのはやはりtortellini、cappelletti、 casoncelliなどの詰め物をしたパスタ、もちろん手作りの、のお供に。
 
昔はクリスマスイヴにもブロードが食べられていた。
これは贖罪を意味する”貧しい”食事だったから。
例えばPiemonte(ピエモンテ州)、Liguria(リグーリア州)では伝統的に”una zuppa di pane cotta in brodo di trippa”(トリッパ、牛の胃袋、のブロードでパンを煮たスープ)を食べながら質素な食事でキリストの誕生を待ちます。この習慣はLombardia(ロンバルディア州)にもありますが、こちらは0時のミサから戻った家族が集まってトリッパのブロードを飲むことになっていました。

24日の夕食にブロードを食べるという習慣はほとんどなくなってしまいましたが、今でもMolise(モリーゼ州)だけは"brodetto alla termolese"をCenone(クリスマス前夜の正餐)に食べるという習慣が残っています。

写真:https://www.lacucinaitaliana.it/ricetta/piatti-unici/zuppa-di-valpelline/
こうしてみると”貧しい”とは程遠い魚介のスープですけど、昔は庶民の食事で漁師の妻たちが売り物にならない小さな魚を煮込んで作っていたそうだ。

クリスマスのブお肉のブロードは白身のお肉cappone(去勢された雄鶏)、gallina(雌鶏)、tacchino(七面鳥)の3種類がよく使われるが、manzo(去勢された)雄牛、豚、更に両方を混ぜたものがある。
去勢された雄鶏と雌鶏のブロードは一番歴史が深く、更に時間もかかる。
25日にこの料理を食べるようになったのはルネサンス時代!?
1500年代には既に去勢された雄鶏のお肉が柔らかいことが分かっていて、貴族の食事に登場していた。
庶民は大きなイベントの時だけ、このご馳走を頂くことができた。それがまさにクリスマスだった。

今日Emilia Romagna(エミリア・ロマーニャ州)では去勢された雄鶏のブロードは伝統的なtortellini ripieni(詰め物されたトルテッリーニ)の為に準備されます。Toscana(トスカーナ州)やMarche(マルケ州)ではcappelletti(カッペッレッティ)、Veneto(ヴェネト州)ではravioli(ラヴィオリ)を入れる。

写真:https://www.lacucinaitaliana.it/ricetta/primi/tortellini-in-brodo/
Lombardia(ロンバルディア州)は三日月形をした詰め物パスタcasoncelli(カソンチェッリ)、Varese(ヴァレーゼ)エリアではrisotto allo zafferano(サフランのリゾット)を作るために使われる。

雌鶏のブロード、こちらもイタリアのクリスマスには欠かせない。
こちらは特に南イタリア、シチリア島で食べられているが、現在ではクリスマスだけでなく、冬は生パスタのためにどこでも作られている。
Sardegna(サルデーニャ島)では、クスクスに似た“fregula(フレグラ)”という島独特のパスタと一緒に食べる。 (クスクスもパスタの一種)

写真:https://blog.giallozafferano.it/
七面鳥のブロードは特にBasilicata(バジリカータ州)。
こちらはレタス(scarola)、キャベツ(verza)、カルドン(cardo)をベースにしたミネストラ(スープ)として食べる。

去勢された雄牛のブロードはvaldostana(ヴァッレ・ダオスタ)エリアで使われる。
キャベツ、フォンティーナチーズ、トーストした黒パン、シナモン、クルミで作った”zuppa alla Valpellinentze”になる。

豚のブロードは古いレシピによるとアバラ肉、プロシュットの骨、ソーセージ、皮と一緒に煮込んでミネストラ(スープ)に。Campania(カンパーニャ州) 、 Calabria(カラブリア州)で愛される料理です。

ミックスブロードは南イタリア。
色々なレシピが残っているが、それは家族で代々伝わって来たもの。
豚のブロードに牛や雌鶏、去勢された雄鶏などを入れたもの。

参考:http://mangiarebuono.it/a-natale-tutti-fan-brodo/

食べ物の話って、書いているうちにホントにお腹が空いてくる。
大分寒くなってきたので、こういう体の温まる料理が食べたいわ。
しかし今晩はおでんか…

追記:昔アブルッツォの伝統的なクリスマスの料理をご馳走になった時の記事が有りました。
https://blog.goo.ne.jp/fontana24/e/7c889755f141d0698e0413ccb7fd7df7
参考まで!



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