イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

「食堂メッシタ」を読んで思うこと

2018年09月09日 15時25分01秒 | 

イタリアに関係ありそうな本は極力読んでいる。
本屋で見かけて面白そうだったので、図書館で予約。ようやく到着した。

「メッシタ」とはイタリア語で「酒場」を意味する。
イタリアがらみの本というだけで読み始めたが、読み終わって、あまりにもリアルな名前が数々登場するので検索してみたら、この「メッシタ」、実際目黒に有ったお店だったのね。
ということは、この本ノンフィクションとフィクションの間ということか、と勝手に理解した。(もしくはノンフィクション?)
お金出して本買わなくて良かった。なぜなら、周りからこういう話は五万と聞かされているし、こういう人沢山見て来た。

ICIFというその筋では有名な料理学校に留学。
たかだかそれくらいのキャリアで自分は出来ると信じ込み、日本の有名イタリアンに乗り込むが、そこには腕はいいが態度は悪いカリスマシェフがいて(パワハラ、セクハラなんて日常茶飯事でフライパンが飛んでくるだの、暴力、やけどさせられただの飲食業は未だにかなりブラックだと聞くし)、結局そこで自分が何もできないことに悔しい思いをする。

ここまでなら、こういう人は多い。まぁだからそれだけなら本にはならないだろう。
「イタリア留学経験あり」を押すようなシェフは、大抵がこんなタイプだろうと私は信用しない。
いや、むしろ厳しく点数を付けたくなる。意地悪したくなる。(だから妹は私とイタリアンに行くのは嫌がる)
私は10年以上イタリアにいたけど、料理は素人。だから私が知っていることでちょっとゆさぶり(笑)かけてみたり…
お金を払って入学できる料理学校やその学校が紹介してくれた研修先で働いたって…だからなに?
学校では「教えてもらっている」んだし、研修先は「お金を頂いている」んだからむげにするわけはない。

「半年やそこらイタリアに行ったからって、経歴になんてなんねーよ」(本文より抜粋)
と言われても返す言葉もないだろう。

ここで負けたら物語は続かない。
自分が何もできないことを認め、それでもイタリア料理の世界で生きて行きたいと、再びイタリアに渡ることを決めた主人公。
渡伊前にやったのはイタリア語の特訓。


「半年イタリアで研修する間に、ある程度しゃべれるようになったんじゃないの?」
「幼稚園児程度にはね。でもそんな語学力じゃ相手に信用してもらえないじゃない。料理をする上でも、言葉って大事だよ。」(本文より抜粋)

「私は料理を勉強しに行くんだから、イタリア語なんてどうでもいい」という人がよくいる。
そう聞くたび、「こいつはダメだな」、と思っている。
いくらグローバル化が進んでイタリア人に英語を話す人が増えても、言葉は基本。
その国の料理を知りたくて行くのに、言葉をおろそかにするなんて間違っている。
語学は単なるコミュニケーションの1つの手段かもしれないが、その国の文化や伝統が知りたいなら、その国の言葉なしには理解できない。
文法通りきちんと話せるかとか、ビジネスレターが書けるかとかそういうことではない。
ただおろそかにして良いものではないし、きちんとしたイタリア語を話せるだけで相手の印象が変わる。
語学をちゃんと習得して彼女は始めてイタリアに受け入れられ、そして料理の世界にも受け入れられた。
もしこれからイタリア、いや他の国でも、に料理留学したいと思っている人は読んでみるといい。

ただ、時代は移り変わっているし、彼女は彼女であって他の人が同じことをしてもうまく行くとは限らない。
物語の中で彼女も感じているが、彼女を最初の留学へと送り出してくれた人たちの世代は、イタリア料理をそのまま日本で提供したところで、受け入れてもらえず、日本風にアレンジしないとダメだった。
それが主人公の時代になると、いかにイタリアで提供されているものに近いものを出すか、ということが求められる。
そしてこの先は…
ただ変わらないのはしっかりしたベースの上に成り立つ、際立つ個性だろう。
もう「イタリアの有名店で修業してました」では客は呼べないし、都内の名店だけに人は集まらない。

様々な料理の名前やレストランの名前は気になった。
彼女は初めの留学のころ通っていたレストランは名前は聞いたことが有っても、実際行ったことがないレストランばかりだったけど、後半に出て来たフィレンツェの「トラットリア・ソスタンツァ」は私も大好きなお店の1つ。

あの店でしか食べられない「Pollo alla burro」(本にはこう書いてあるけど、実際はPollo al burroですよ)
それが主人公の店で食べられると知った時、彼女の店に行ってみたいと思った。
ただ、現在主人公がやっているお店は完全紹介制とのこと。
まぁ、イタリアは狭いので、あらゆる伝手を駆使すれば、行けないこともないだろうけど、それもご縁ということで。

本を読み終わって思ったのことは「あ~Pollo al burro食べたい!」だった。


実は前回(4月末)久しぶりに食べてた。
シンプルなのに何でこんなにおいしいんだ~



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