イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

座ると1年以内に結婚できる「アッティラの玉座」!?ーTorcello(Venizia)

2021年03月21日 12時05分17秒 | イタリア・美術

昨晩TBSの「新・情報7daysニュースキャスター」を見ていたら、面白い話が出ていた。
イギリスの呪われた椅子「バズビーズ・チェア(Busby's chair)」から始まったこの話題だが、イタリアにも座ると一年以内に結婚するという椅子があると言うではないか⁉
その椅子はこれ。

写真:Wikipedia
通称Trono di Attila(アッティラの玉座)
この大理石の椅子はVenezia(ヴェネツィア)のTorcello(トルチェッロ)島にある。

ラグーナの島々は、5世紀以降のフン族、ロンゴバルドの侵攻によって本土から逃げて来た人々によって形成される。
トルチェロ島はそんな島々のなかで、次第に経済的にも社会的にも重要な街の1つとして成長する。
人口は一時20,000人に達し(2021年1月現在は11人しか住んでいない⁉)、638年にはAltino(アルティーノ)から司教座が移転されCattedrale(司教座大聖堂)が建設される。

写真左奥がBasilica di Santa Maria Assunta(サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂)

フン族は4世紀初めにヨーロッパに現れた。
その後フン族最強の王アッティラは東ローマ帝国へ侵攻、451年には西ローマ帝国のガリア州へ侵攻し、カタルーニャ原野の戦いではローマ人とゴート族の連合軍と戦い、452年にイタリアに到達した。
北イタリアの街々を次々に陥落させ略奪を繰り返すアッティラは458年イタリア北東部の中心都市アクイレイアが完全に破壊。アクイレイアの市民および付近の小さな集落の住民たちは潟湖に逃れ、ヴェネツィアやグラードの町の基礎を築いた。
ちなみにアッティラはアクイレイアの市街が燃える様を見るために丘の上に城を築き、これがウーディネの街の基になったという伝説があり、今なお城跡を見い出すことができる。
その後ローマ教皇レオ1世と対面したアッティラはイタリアから撤退し、453年死亡する。
アッティラの死後、フン族の力は急速に弱まっていった。
参考:Wikipedia

ローマ帝政末期に広がっていたキリスト教の信者からは、「神の災い」や「神の鞭」と恐れられたアッティラ、トルチェッロを訪れた記録はないし、フン族は遊牧民で、船を操って、島を征服することに興味があったとは考えにくい。
ではなぜ「アッティラの玉座」がトルチェロ島に???

歴史書はこの大理石の肘掛け椅子(scranna)について言及してはいないが、これは多分島の支配者が会議の時に使ったとか、執政官が使っていたのではないか?というのが有力な説。
じゃあ、なんで「アッティラの玉座」と呼ばれるようになったんでしょ???
その辺は全然わからない。
更に「この椅子に座ると一年以内に結婚できる」という伝説はどこからきたんでしょ???

イタリア人も「そんな噂聞いたこと有るけど、実際どうなの?」とわヒソヒソ言ってるみたいだが、残念ながら私はこの椅子の伝説を知らなかったため、椅子に座っていないので、伝説の信憑性を示すこともできませぬ。

写真を探してみたら…

おお、なんと誰か座ってる!?(左奥の黒い人)
これは是非次回島に行って試してみましょ。(笑)

ちなみにトルチェッロ島にはもう1つ有名な伝説がある。

イタリアにはPonte del diavolo(悪魔の橋)と呼ばれる橋が多数あるのだが(Wikipediaに名前が載ってるだけでも26本)、これもその1つ。
大抵の”悪魔の橋”は一晩で橋が架けられたから、悪魔の仕業だ、なんていうのが一般的だが、ここの場合はちょっと悲しいお話。

ヴェネツィアの貴族の娘とオーストリアの将校が恋をした。
そのことを知った娘の家族は、すぐに娘を街から遠ざけた。
その後、将校は死体で発見される。
恋人の死を知った娘は絶望の淵に落とされるも、古い友人が二人は必ず再び会えると約束し、彼女を魔女と引き合わせる。
魔女は悪魔を呼び出すために、7人の死産(生まれて間もなく死亡した)だったキリスト教徒の赤ん坊の魂をガラスの瓶に入れて持って来れば死んだ恋人に合わせると約束をする。
魔女は悪魔を呼び出し、悪魔が握っていた鍵で反対の岸に死んだ将校を呼び出した。
恋人の姿を目にした娘は、橋を架け渡り二人一緒に消えてしまった。
魔女は悪魔を呼び出した7日後、ガラスの瓶を悪魔に届けなけらばならなかったのだが、魂の救済を望んだ若者の手で殺され、悪魔は魂を手に入れることはできなかった。
ということで現在でも約束の12月24日の夜は、黒猫に姿を変えた悪魔が”報酬”を受け取るために、橋に姿を現わすらしい。

参考:https://ilnuovoterraglio.it/la-leggenda-del-ponte-del-diavolo-a-torcello/

ちなみにヴェネツィアには446本の橋が架かっているが、欄干がないのはトルチェッロの”悪魔の橋”と本島のponte Chiodoの2本のみ。

くれぐれもよって足を踏み外さないように…



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
子宝 (カンサン)
2021-03-22 00:12:15
fontanaさんへ、どの国でも子宝に恵まれる言い伝えのある場所があるんでしょうね。
日本にも各地の神社や、温泉など多数ありますね。
土曜日に京都御苑に行ってきました。ここには見栄えのするシダレザクラがあります。
朝、早く行ったけど、すでに大勢来ていました。
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Unknown (Maki)
2021-03-22 07:50:13
ご無沙汰をしています。トルチエッロ島の橋、写真を撮った事を思い出しました。昭和の時代でしたが、今も雰囲気は変わっていないようですね。

こちらのブログで知ったグロッセートのボッティチェリのトンドは今日で終了。
1月の時点でここまでロックダウンが延長するとは思わなかったのでEU間移動ができるなら…と微かな期待を
していました。
また、ワクワクする投稿を楽しみにしています。
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2019年に (fontana)
2021-03-23 17:35:06
カンサンさん
私も2019年3月31日に京都御苑でこのしだれ桜を見ました。と考えるとやはり今年はかなり早い開花でしたね。
東京は昨日満開とのことですが、横浜はまだ3分くらいです。
緊急事態宣言が解除になったとはいえ、なかなか京都までは行けないのが残念です。
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ありがとうございます (fontana)
2021-03-23 17:39:06
Makiさん
コメントありがとうございます。
イースター休暇に向けて規制が更に厳しくなるようですね。日本は緊急事態宣言が解除になった途端桜の開花も相まって、あちこちで人出が増えて心配です。

出来るだけ楽しい投稿が出来るよう頑張ります!
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