イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

太田記念美術館で葛飾応為

2017年10月19日 16時03分22秒 | 展覧会 日本

また寒くなりましたね。
これが10月だなんて思えない…
しかし、フィレンツェも朝晩の温度差が20度とか、あ~もう世界中が寒いのかぁ。

さて、秋の長雨(?)の一休み、秋晴れが見えた昨日は大っ嫌いな街渋谷へ。
展覧会なので仕方がなく、なんですけどね。
でも昨日初めて地下の近道を発見してちょっとほっとしたんです。
それにしても嫌だは渋谷。特に駅は何度行ってもわからん。

実は最初に行ったのはBunkamuraミュージアムで開催中のオットー・ネーベル展だったのですが、これが予想以上に良い&空いていたので、3時間も居座ってしまいました。
天気も良いし、行ければ3か所行こうかと思っていたのですが、この時点で2時半過ぎていたので断念して2か所で止めておきました。
オットー・ネーベルの方はちょっと時間がかかりそうなので次回ということで、まずは2軒目の太田記念美術館のお話を。

Bunkamuraから原宿の太田記念美術館までは歩いて向かったのですが、明治通りを歩いているとほとんど外国人?というくらい観光客多いねぇ…まぁ私も観光客のようなものだけどね。
美術館の前にも結構外国人いましたね。

このポスターの「神奈川沖浪裏」の写真を撮っている外国人がいました。
中に入るとやっぱり混んでる…そんなことだとは思ったけどね。

みなさんお目当てはこれでしょう?


葛飾北斎の3女お栄こと葛飾応為が描いた「吉原格子先之図」
NHKで「眩」というドラマが有ったので、これに集まっているんだよね。
会場に居てもあちこちから「NHKの」とか「宮崎あおいが」とか言っているのが聞こえました。
かくいう私もあのドラマからかなり北斎にはまっている一人なんですけどね。

美人画を描かせたら父北斎も舌を巻いていたというくらいの腕前だった彼女の作品は世界中に10点くらいしか残っていない。
父親の助手をしていたわけだから、その多くが父北斎の名で世に出ているってことなのかもしれないが。
だからこれは数少ない彼女の真作のうちの1枚。
そして、こんな絵、見たことがない。
すごいなぁ…

昨日見ていた番組でも言っていたけど、日本の絵、特に浮世絵には影がない。
それを見たゴッホは「日本は影が出来ないほど太陽が強い国なのか」と勘違いしたとかしないとか。
陰影か…カラバッジョ?いやそれとも違う。
だって黒い背中を描いた絵、西洋には有るかな???
漫画とかアニメとかを見慣れた現代の私たちが見ても全然”おかしさ”はないけど、江戸時代の人が見たらこれは革新的な絵だったことだろう。
そうだ、やはりカラバッジョだ。

今このドラマの原作になった浅井まかてさんの「眩」を読んでいるのだが、その中で浮世絵師渓斎英泉の妹として吉原で働く3姉妹が出てくる。お栄は彼女たちをモデルにこの作品を描いたのか?
それともこの絵を見て小説に入れられたのか?

いや、なにより気になったのはWikipediaを見ていたら、これはボストン美術館蔵の真作らしいけど、なんとジェノバのキヨッソーネ東洋美術館(Museo d'Arte Orientale Edoardo Chiossone)にも同名の作品が有るとか。
ただジェノバの作品は
”全体に雑で、女性の帯や衣などが異なり、琴の弦の数が1、2本多い(ボストン本は13弦)ことから、本図の模倣品とする説がある”(Wikipediaより)そうです。
キョッソーネ東洋美術館、行ったことはないんですけど日本美術のコレクションは15000点にも上るという、イタリア一の日本美術を持つ美術館だったんじゃないかなぁ?
あ~行けば良かったと今更後悔。
向こうにいる時は自分の国のものなんて、全然興味がなかったんですよねぇ。

「吉原格子先之図」の隣には、北斎の肉筆画”源氏物語”が出ていました。

それに加えて「富嶽三十六景」全四六点(実はこちらが現在開催中の展覧会)
去年ミラノで全部見たはずなのに、なぜか「初めて見た~」という作品が有ったのはなぜなんだ?

この作品が見られるのは29日まで。
そのあとは先週行って来た大阪で開催中の「北斎展」へ
あ~その話もしていませんね。



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2 コメント

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浮世絵 (山科)
2017-10-21 07:53:17
>「富嶽三十六景」全四六点(実はこちらが現在開催中の展覧会)去年ミラノで全部見たはずなのに、なぜか「初めて見た~」という作品が有ったのはなぜなんだ?

想像でしかありませんが、「刷り」の違いでしょう。初刷り後刷りで色が全く違っていることや、部分が違っているものがあって、別のものにみえたのだと思います。

葛飾應為の、、影については、
URLのような、江戸時代の影の遊びというようなこともあったと思います。東洋で影の描写が少なく、西洋でルネサンス以降行われたのは、信仰や俗信や迷信など先史時代まで遡る問題かもしれません。

なお、こういう影、黒いバックの描写は明治の小林清親も多用してますし、https://ja.ukiyo-e.org/image/ohmi/Kobayashi_Kiyochika-Views_Of_Japan-Cherry_blossom_at_Night-009847-01-31-2009-9847-x2000

20世紀の高松次郎の影シリーズにも影響してるかもしれませんね。


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ありがとうございます!! (fontana)
2017-10-21 13:26:41
山科様
いつも色々教えて頂き本当にありがとうございます。
安藤広重の版画、すごいですね。江戸の”粋”を感じますね。宗教的な縛りが強かった西洋とは違って、日本ではこんな自由で面白い絵が描かれていたとは驚きです。
更に小林清親、いやはや日本人ってすごいですね。西洋の画家たちが日本の版画に心を奪われた気持ちがよくわかります。
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