イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Lorenzo Lottoを追いかけて

2017年02月24日 18時42分12秒 | イタリア・美術

「(スリにあって旅行は)もう懲りたかと思った」と母は言っていましたが、そんなことで応える私ではないですよ~
ただ確かに今まで以上に神経は遣っているので、ちょっと後ろに人の気配を感じるだけでびくびくしています。
まぁしばらくはこれで良いでしょう。

そういうことで、昨日おとといとちょっと北の方へ行っていました。 
最初の目的地はBergamoです。
26日までLorenzo Lottoが関わった現在Duomoに保管されている象嵌細工の特別展を見るためでした。

ここの美術館は他にも良いもの持っているので良いのですが、ちょっと予想外でした。
なんとうりの象眼が1枚しか来てなかったんですよ…

これだけ…後はビデオで。
このビデオがすごく良くできていたのが余計腹立たしい。
あれ?それにこれはLottoが描いたものではないんじゃないの???
ツーリストインフォメーションで以前もらった案内書を見たら、Lottoの手が認められたのは
Sommersione di Faraone(ファラオの潜水?)

写真ちっちゃ!
すみません、Wikipediaから取った写真なもので…

Arca di Noè(ノアの箱舟)
 

Giuditta(ユーディット)


Davide e Golia(ダヴィデとゴリアテ)

の4枚。
美術館で見たこれはCreazione del mondo e di Adamo(天地とアダムの創造)ですよね。

現在 Santa Maria Maggiore教会の内陣席を飾っている象嵌細工。
全部で69枚有るのですが、現地でも普通は8枚しか見られません。
この4枚とこの4枚を覆っている4枚、それも日曜祭日のみ!!
1524年から1532年の間に象眼細工師Giovan Francesco Capoferriの手で制作されましたが、下絵を描いた画家の中にLorenzo Lottoもいたと考えられています。

この美術館は元々多数のLottoの作品を所有していますが、この特別展に合わせて
Romaの Palazzo Barberini 所蔵の

Sposalizio mistico di Santa Caterina d'Alessandria e Santi
アレッサンドリアの聖カテリーナの神秘の結婚と聖人たち
この聖カテリーナが色っぽ過ぎます。

と、Bergamo校外のCelanaのChiesa di Santa Maria Assuntaから

Assunzione di Maria、マリアの被昇天
ちょっと脱線ですが、マリアは被昇天(Assunzione)キリストは昇天(Ascensione)なのですが、これってキリストは自力で昇天したのに対してマリアは引き上げられたからということで言い方が違うそうです。
何かでその話を聞いてどこかに書いたはずなのに、どこだかわからなくなってしまったので(よくあるなぁ、こういう事)ここにメモっておきますよ~
このCelanaは結構行き難いところだったので、これを見られただけでも良しとするか。

美術館に約2時間いた後、天気が良くなったので、お昼も済ませてバスでもう1枚Lottoの作品を見に行ってきました。
Accademia Carraraのそばのバス停から7番のバスで行くのですが、Aで行くか、Bで行くかで降りるバス停が異なりますのでご注意を。
私はよく考えずにBに乗り、降りたのが…多分SorisoleのVia Madonna dei Campi fr.24だと思います。
実はこのA.Bの差をちゃんと調べずに乗ったんです。
だからGoogle Mapを頼りに適当なところで降りました。
でもちゃんと調べたAの停留所Via IV Novembre 65だったら上りだったので、こちらのバスに乗って良かったのかも。

バス停から20分位かな?歩きます。
Bergamoに着いた時は、結構深い霧も出ていて寒かったのですが、午後は青空になり、かなり気温も上がって暑いくらいでした。

目的の教会に到着。

ちゃんとLottoの作品が有ることも書いてあります。かなり色褪せてるけど。
正式名はChiesa dei SS.Vincenzo e Alessandro
ただ、どう見ても閉まってるなぁ…やっぱり。
一応前回Bergamoに来た時に調べたら、毎日9時半から12時半、15時から17時 開いてると書いて有ったのですがねぇ。
仕方がない、よく有ることです。
ということで、とりあえず教会をぐるっと回って何か面白いものないかなぁ、と。
見た目はゴシックかなぁ、なんて思って一周したら、遠くから手招きする人が。

いひひ、ラッキー!!
教会の管理人のおじさんが話しかけてくれました。
更に「君日本人?Lotto見に来たの?」と言ってうれしいことに教会を私の為だけに開けてくれました。
これがイタリア、やっぱりいいよね。 

お目当てもLottoはこちら

通称Polittico di Ponteranica、ポンテラニカの多翼祭壇画,1525年頃の作品。
 "L. Lotus / 1522"と年号とサインが入っています。
上はCristo risorto tra l'angelo annunciante e la Madonna、受胎告知に挟まれたキリスト復活
下の段はSS.Pietro, Giovanni Battista, Paolo、聖ぺトロ、洗礼者ヨハネ、聖パオロ
祭壇画の下は、トスカーナの画家(名前忘れた)の作だと説明してもらいました。
保存状態が良いのは、きっと最近修復すみだからでしょう。
この絵画構成は

Tizianoが描いたPolittico Averoldi(アヴェロルディの多翼祭壇画)とよく似ている。
Tizianoは1520年から1522年の間にこの多翼祭壇画を描いたとされ、現在はBresciaのcollegiata dei Santi Nazaro e Celsoに保管されている。
更に驚いたのは、ここ、この写真で分かるかな?


それぞれの絵にライトを当ててるの。
初めて見たよこの装置。お金かかってるなぁ…
これが無料って、見る方にとっては非常にうれしいですけどね。
わざわざ開けてもらったので、長居は出来ず、とにかく写真を撮って、でもじっくり観察しましたよ。

その後イタリア語が分かるということで、管理人さんが少し教会のことを説明してくれたのですが、この教会は非常に珍しい構造をしているそうです。
見ただけでは「どこら辺が?」という感じだったんですけどね。

ゴシックとロマネスク様式が合体した1身廊式の教会が残っているのは非常に珍しいんだそうです。
聞いても「そうなの?」という感じでしたが。
身廊は5つのスパンに区切られていて、その上にはアーチが交差するリブ構造の天井。
こちらは1800年代後半に改築されています。(フレスコ画もその頃のもの)
ゴシック様式の特徴は先が尖ったアーチを持つ(sesto acuto)窓によく現れています。


後陣部分がロマネスク、というのですが、その要素は全く分かりません。
「外に出ると分かる」、と管理人さんは言っていたので、後陣の建築様式ですね。 

10分位で退出。もう少し見ていたかったけど、贅沢は言えません。
一見古い鍵なのですが、これがすごく近代的、って私に見せて良いのか?
3重で守られているそうですが、「1個壊れてるので2重だよ」と管理人さんは笑っていました。
残念ながら教会からの盗難は後を絶たないですから、これだけ重要な作品が有る教会では、警備に力を入れないといけないですよね。

現在ここでは宗教儀式はほとんど行われておらず、向かい合って建っている新しい(と言っても18世紀だが)教会で行われているそうです。

そちらも見せて頂きました。ありがたや、ありがたや。

実はここ、冬季(多分11月から2月)は入れないそうです。
来月から午後だけ開いている、とか。
管理人さんは丁度こちらの新しい教会で作業中で、偶然私を見つけてくれました。
イタリアではよくあることですが、本当にラッキーでした。 

ということでBergamo市内に戻ったわけです。
これでBergamoに有るLottoの作品はほぼ網羅したことになりますが、やはり象嵌細工が見たいですね。
でも日曜、祭日にここを訪れるのはなぁ… 



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