イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

ブルックリンからバルジェッロ

2017年12月04日 22時37分01秒 | イタリア・美術

昨日は月に1度の国立博物館・美術館などの無料開放デーでした。
今までイタリアに住んでいた時は、無料の日はどこの美術館も混んでいてゆっくり作品を見ることができないので、極力避けていたのですが、多少混んでいても無料には変えられないと、昨日は朝の8時から17時までどっぷり無料の恩恵に与っておりました。
そして頭も体も酷使したおかげでようやく時差ボケから抜け出すことができたようです。

では9時間も(休憩時間1時間弱)どこに行っていたのかと言いますと、今回イタリアに戻って来たら色々調べようと思っていた陶器関係で、まず確かここには結構いいコレクションがあったはず、と思って出かけたMuseo nazionale del Bargello、バルジェッロ国立美術館でした。
8時半開館で並んでいるかと思いきや一番乗り…
ここにはマヨリカ焼きの結構良いコレクションがありますが、それよりも先に気になっていたのは、特別展。
丁度Della Robbia(ロッビア一族)のこともまとめないといけないので、丁度良かったのですがアメリカからこの作品が里帰りしています。

特別展のタイトルは“DA BROOKLYN AL BARGELLO“(ブルックリンからバルジェッロへ)
1898年ブルックリンに渡って行ったLunetta(リュネット、半月形の彫刻)がバルジェッロ美術館に戻って来たことを示唆しています。
この作品はアメリカに渡った一番初めのロッビア家の作品でした。

このリュネットは1520年頃Niccolò di Tommaso Antinori (1454-1520)がGiovanni della Robbiaに依頼したものと言われています。
アンティノーリと言えば、今もワインで有名な、フィレンツェでも1,2を争う旧家中の旧家で、この辺りでは知らない人はいません!
そして製作者のGiovanni della Robbiaの方は、父はAndrea。
Andreaはロッビア一族の始祖Lucaの弟Marcoの息子、だからAndreaにとってはLucaは伯父になるわけよね。
Andreaと言えば、こちらは今日行って来たんだけど、Spedale degli Innocenti(捨て子養育院)の柱廊のメダリオンの赤ん坊が有名。


とここら辺で話をリュネットに戻しますが、テーマは「キリスト復活」
中央に立つキリストの向かって左側に、この作品を依頼したアンティノーリが跪いています。
両端下にはアンティノーリ家の紋章が付いています。
このリュネットは46パーツからできていて、2016年Marchesi Antinoriが出資してこの作品を修復しました。
背景の景色や枠などは非常に細かく、生き生きと描かれています。
この枠にはフルーツがいっぱい乗って(?)いるだけでなく、カエル、トカゲ、へび、かたつむり、かに、りす、イタチにハトがいるっていうのですごいです。

1898年 Aaron Augustus Healy (1850-1921)が買い取りアメリカ大陸へ。
Brooklyn Museumにリュネットを寄付するつもりでした。
Healyはブルックリンでは非常に有名人だった上に、25年間もBrooklyn Institute of Arts and Sciencesの校長をしていました。

すごく広い部屋には、この作品と一枚の肖像画。
1907年John Singer Sargentが描いたAaron Augustus Healy の肖像画でした。
同じ部屋で流れていた修復の様子のビデオも、すごく興味深かったです。
この作品は昨年以来 Museum of Fine Arts di BostonとNational Gallery di Washingtonで展示されていました。

こちらのバルジェッロ美術館では、2018年4月8日まで公開。

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4 コメント

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帰属問題 (山科)
2017-12-06 08:07:28

ロッビア一族の作品については、帰属の問題
は相当、混乱しているようですね。

私が読んだ2つの本でもかなり違います。

ピストイアの大きな陶彫「訪問」にさえ2説があるようです。

ボストンの最近での展覧で本がでたそうですけど、よくわからないなあ。

このジョヴァンニのリュネット ジョヴァンニの作品としては、 それほど良いほうではないかも? 里帰りの意味はあるでしょうが。。

メトロポリタンにも、ロッビアの作品は良いものがあるようです。

いずれにせよ、 確実な物から、押し広げていくしかない問題なんでしょうね。

このような、多彩な釉で動物果物などを造形するのは、後のベルナール  パリッシー派の作品に流れ込んでいるのかもしれませんね。





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動画2種 (山科)
2017-12-08 05:57:41
ブルックリンのリュネットの公式のブルックリン美術館公開の修理動画がありました
https://www.youtube.com/watch?v=rx_rS1E9nGA

冒頭が、あまりにもアメリカンなので、吹き出してしまいそうになるのですが、中身は非常にまともで
物体としての美術品を再認識いたします。



ピストイアの訪問については、こちらの動画が美しいようです。現物と対照して色合い肌合い光沢などどれだけ再現できているでしょうか? ご教示くだされば幸いです。
La Visitazione Della Robbia - a Pistoia - 2017
https://www.youtube.com/watch?v=S0A-vyeD2l8

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よくできていますね。 (fontana)
2017-12-08 17:03:44
山科様
リュネットの動画はバルジェッロ美術館の会場でも流れていました。イタリア語字幕で音楽も入っていたので、もっと自然でしたが。最初の挨拶もサラッと流していたので、それほどおかしくなかったです。

ピストイアの方は、この動画きれいですね、非常によく出来ています。4K映像なんですね。肉眼ではここまで気泡(?)とか、黒い細かい点は見えませんでした。色も現物に近いですね。現物はもう少し温かみがあるように見えましたが、それが人間と機械の目の差でしょうか?
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ありがとうございました (山科)
2017-12-08 18:37:16
貴重なお話、ありがとうございました。

やはり、あの動画, 相当良いのですね。。
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