忘れないうちに一言。
最近都内のリピーターでは、「リピーター割」なるものを導入している美術館が多い。(「今更」、と思った方は読み流して下さいね。)
これは、同じ美術館の前回(1年間の縛りがある所もあるが)のチケットを持っていくと、100円から200円くらい割引してくれるというもの。
ネットに割引券を載せているところも多いけど、捨ててしまいがちなチケットも、よく美術館に行く人にはちょっとうれしいアイテムになるかもしれないので、お忘れなく。
ちなみに三菱一号記念館美術館には「美トク」と言う、丸の内ブリックスクエア内対象店舗で美術館のチケットを提示すると、お得なサービスが受けられる特典あり。
さて、「芸術の秋全開」の第2弾は、25日まで三井記念美術館で開催中の「仏像の姿(かたち)」~微笑む・飾る・踊る~です。
結果から言いますと、この展覧会、予想以上に良かったです。
それなのに、失敗したのは時間。
てっきり閉館18時だと思い込んでいたんです。
17時閉館って早くないですか?ブックショップなども同じというから更に困った。
私が会場に到着したのは、4時15分前くらいだったんです。
う~ん、かけあしで周ったわけではないですが、もう少し時間欲しかったです。
この展覧会には「仏師がアーティストになる瞬間」というサブタイトルがついています。
キリスト教徒でない私は、教会には大抵「作品」を見に行きます。
宗教画や彫刻などが美術館や展示会会場に展示されているのを見ても、それを見て祈りたくなったりなどの宗教心はいっさい起こりません。
しかし、仏像に関して違います。
お寺や神社の中に安置されている仏像は、あくまでも芸術品ではなく「仏」であり、信仰の対象ととらえています。(といっても私自身の信仰心薄いですけど)
これがひとたびお寺や神社の外に出て、美術館や展覧会の会場に展示された時、そこには信仰心は有りません。
「仏」は本来の居場所を離れた瞬間「彫刻」に、「作品」になります。
依然、博物館のガラスケースに収められ展示されている仏様に祈りを捧げながら、展示を見ている人を見かけたことが有りますが、こういう気持ちには一切なれません。
これがこのサブタイトルの言いたいことなのでは、と勝手に理解したからこそこの展覧会に興味を持ったのですが、そういうわけでもなかったようなのですが…
展覧会は「顔」「装飾」「動きとポーズ」の3つのテーマで構成されていて、仏師がいかにこれらの点を優れた感性と技術によって追求しいくか。これらの作品は一仏師という立場を超え、芸術家の粋に達している。
これが本当に「仏師がアーティストになる瞬間」の意図らしいのです。
いやいや、一番目の作品から本当に度肝を抜かれますよ。
何これ!!
初めて見た。
こちらは迦陵頻伽立像…って読み方だって分からないじゃん。
「かりょうびんがりゅうぞう」と読むんですと。
迦陵頻伽とは「極楽浄土に棲む想像上の鳥で、上半身を人身とする。その鳴き方は、妙音と説かれ、日本では、華鬘(けまん)や経箱などの工芸品の意匠、浄土変相図や涅槃図などの絵画に描かれている」そうです。
翼の生えた子供で表されるケルビムみたい。
15世紀頃の作品で、現在両羽はないけど、右足を支え軽快に舞う姿が素晴らしい。
作品番号1番がこれだったので、この先の作品もすごく期待し、時間が1時間しかないことをひどく後悔。
それから今回すごく良かったのは、キャプションに青で「みどころ」が書かれていたこと。
これ、すごく役にたつ!!
他の展覧会でも是非やって欲しいと思います。
次に気になったのはこれ
地元称名寺所蔵の「観音・勢至菩薩立像」
この会場には真ん中の阿弥陀様はなかったのですが、何でも今年の春、三尊そろって金沢文庫で見ることができたみたいです。
この脇の2体の衣の装飾、襞の動きなどなど、本当に近くに寄らないと、実物を見ないと分からない細かさ。
このクオリティーが13世紀には出来ていた仏師ってすごくないですか?
ミケランジェロもびっくり!!(よく言ってるけど)
特にすごいのは表面に施された截金(きりかね)という技術。
詳しく説明してたらそれだけで終わってしまうので、技法について知りたい方はこちらを見てくださいね。
金装飾フェチ(そんなのあり?)の私としては、この技法を知っただけでもこの展覧会はおつりがきました。
対の仏像と言えばこれも良いですね。
写真の画像悪いですね。三井記念美術館のオフィシャルサイトから借用しているのですが…
これ大阪四天王寺の阿弥陀如来の脇侍です。
注目すべきは足。
片足を跳ね上げています。日本では珍しいタイプなんだそうですよ。もちろん私も初めてみました。
なんとも躍動的。
同じ時代でも全然違うこちらの2体。
東京国立博物館蔵の阿弥陀如来立像。
これとても珍しい仏像なんですって。
まず1点は逆手阿弥陀という左手をお腹の前に下ろし、右手を上げて手のひらを見せるスタイルで、中国・南宋で流布していたすたいるなんだそう。京都泉涌寺伝来。
そして2点目は、仏像としては非常に珍しい蒔絵の技法が使われていること。
着衣は黒漆地に金銀の蒔絵で蓮華唐草文など多彩な文様が描かれています。これも本物見ないと分かりませんよ。
さらにこちらの仏像
この迦如来像も鎌倉時代の作品。
こちら、実は模刻。と言っても京都・清涼寺の釈迦如来像を模刻したのは13世紀。いわゆる清凉寺式釈迦如来像の1作例なんですと。
「清凉寺釈迦如来立像は、入宋した東大寺の僧奝然(ちょうねん)が、優塡王(うでんのう)造立と伝えられた釈迦瑞像を模刻させて請来したもので、三国伝来の生身の釈迦像として信仰を集め、鎌倉時代以降に多くの模刻像が造像された」その1体なんだそうです。(日本語が難しい…)
頭が螺髪ではなく縄目を渦巻いたり、衣の首が詰まっていたり、衣が同心円状に細かい衣文を刻むなど、非常に特徴的な仏像なんだそうです。
ほほ~
とこんな珍しい仏像が並ぶ中で、私が一番お気に入りだったのは
これ。今年マイブームの1つだった十二神将がここにも出展されていました。(左:卯神、右:寅神。会場には子から巳までの6体が展示されています)
これは奈良国立博物館蔵で、もともと地元横浜市金沢区に所在する太寧寺薬師如来の眷属だったそうです。
太寧寺?聞いたことないけど何処だろ???
調べました。自宅からはちょっと遠いですが、機会が有れば行ってみたいです。
「本尊の薬師如来は『へそ薬師』といわれ、運慶の流れをくむ人の作」ということです。なぜ「へそ薬師」なのかはこちらを見て下さい。
この辺には十二神将多いなぁ。
こちらは鎌倉・覚園寺の十二神将像(現在の像は室町時代)の形状と一致し、覚園寺の前身である大倉薬師堂の運慶作十二神将像の形式を踏襲したと言われているそうです。
これも良かったわ~
そして最後の展示室には東京藝術大学文化財保存学(彫刻)が協力して作成した模刻品、修復作品が展示されていました。
私、これが理解できなかった。
先日もテレビを見ていたら、名刀を復活させるためにクラウドファンディングでお金を集め…というプロジェクトについてやっていたのですが、「復刻させてどうするの?」と。
芸術と言われる作品は、その作品が背負ってきた歴史も含めて「芸術」だと思っています。
今の技術でその作品の「コピー」を作ることにどんな意義があるのでしょうか?
勿論それが研究の一手段であることは分かります。
展覧会のチラシにも「仏師の技術や感性が未来にどのように継承されていくのか考える」ために模刻や修復を行ったと書かれています。名刀の方は、戦時中に紛失した名刀を復刻させ、その刀が奉納されていた神社に再び奉納するといいます。(された?)
勿論理解は出来るのですが、なんかやはり違和感があるんですよね。
う~ん、西洋の場合保存を考えてコピーを元の場所に置いて、本物は美術館などで保管する、ということはよくありますが、これとはちょっと違いますよねぇ?本物有ってのコピーではないでしょうか?
こうして展覧会に飾られた模造品を見ながら、そこに未来が見いだせない自分が残念でした。
とこんな感じで、本当に予想以上に興味深い展覧会でした。
まだ1週間開催期間が有りますので、是非足を運んでみてください。
17時に美術館を出たら外はすっかり真っ暗でした。
帰りがけ、この美術館のそばにある福徳神社にお参りしてから帰りました。
高層ビルの合間に静かに立つ神社です。
参考:仏像の姿図録
写真:三井記念美術館オフィシャルサイトより借用
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/
URLの蔵王権現なんかどうでしょう。これはパッカード氏の購入を日本の学者が嘘言ってまで阻止しようとしたものです。
また、平等院鳳凰堂の奏楽菩薩たちも良いと思いますよ。
ありがとうございます。
すごいですね、この動き。う~んなんでこういうものを国外に出してしまったのか…
平等院鳳凰堂の奏楽菩薩は、今年実物を見て感動しました。