イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

一番最初に”署名”された彫刻家ーモデナ大聖堂

2020年05月11日 16時04分15秒 | イタリア・美術

ここのところ、美術作品に書(描)かれた署名についてちょっと調べていたら、イタリア語のちょっと面白い記事を発見したのでその話をします。
が、その前に、「一番最初に署名をしたのは誰?」ということを考えてみた。

よくためになるコメントをくださる山科様のブログには、古代マヤや中国では非常に速い時期の署名が残っているらしい。
https://reijibook.exblog.jp/28977920/

片やイタリアは?と言いますと…
これは、昔大学に通っていたとき、一番最初の授業だった美術史の初歩的かつ全体を網羅した授業を受けていた時、初めて聞いて驚いたので、名前のめどはついていた…
しかし実際は私が思っていた人ではなかったのだが、昔の教科書を引っ張り出してきて、確認した。

イタリア(その当時は”イタリア”という国はなかったが)で一番古い”署名”は、絵画ではなく彫刻。
当時彫刻は絵画よりもずっと先を行っていた。
最先端芸術は彫刻。
彫刻家の方が画家より上、というのはこの辺からもあるのかな?
ミケランジェロはあくまでも自分は彫刻家だと言い張っていた。

イタリア初の署名があるのはここ。

Modena(モデナ)のDuomo(大聖堂)にある。
この大聖堂は1099年に建てられた。
宗教関係者のためだけでなく、市民のための教会で、「カノッサの屈辱」で有名なMatilde di Canossa
(マティルデ・ディ・カノッサ)も建設に当たって援助をしている。

この大聖堂のファサードにお目当ての”署名”がある。

この下の彫刻がそれ。
そこにはラテン語で
< Inter scultores quan/to sis dignus onore, cla/ret scultura nunc Wiligelme tua>
と書いてある。
多分こんな意味。
「あまたの彫刻家の中で、ヴィリジェルモよ、そなたとそなたの作品はなんと光栄なことよ」
他にもどんな理由で建てられたかと書かれている。

このポスターのような大きな紙のようなものを支える2人はEnoch(エノク)とElia(エリヤ)で、不滅を表すことから、大聖堂もこの彫刻達も不滅であることを暗示している。
この彫刻がイタリアで一番最初に書かれた(彫られた)”署名”と一般的に考えられている。
ここから自我に目覚めた彫刻家は、”職人”ではなく、”芸術家”になった。


この正面中央のドアの両脇に座る、檻に入れらえたライオン、いやいや、檻ではなく、作品を守るために柵がはられているだけ、こちらは古代彫刻の再利用。
ライオンは教会内に悪いものが入らないように見張っている。

またファサードには他にも「創世記」がテーマになった彫刻群がある。

Dio Padre creatore. La creazione di Adamo. La creazione di Eva. Il peccato originale
創造主の神→神がアダムを作り→イブを作り→蛇にそそのかされて、リンゴを食べちゃう「原罪」まで。

Il rimprovero ad Adamo. La cacciata dall'Eden. Il lavoro dei progenitori.
アダムが神様に叱られ→エデンの園から追放され→人間の祖先として仕事を始める。服も着ないとね。

Le offerte di Caino e di Abele. Caino uccide Abele. Caino risponde al Signore
アダムとイブの息子、カインとアベル捧げものをする→カインはアベルを殺害する→カインはアベルの行方を尋ねた神に嘘を答える。これが人間が初めてついた嘘。

リアルな撲殺シーン。
人類史上最初の殺人の被害者と加害者。
この辺りはフランスのルネサンス彫刻と類似性を指摘する人も。

La vendetta di Lamech. L'arca di Noè. Noè e i suoi tre figli.
ラメクの復習→ノアの箱舟→ノアと彼の息子たち。
単純だが、非常に分かりやすいロマネスク彫刻の代表作。

モデナの大聖堂は、中も面白いので是非時間を取ってゆっくり訪ねたい。
この辺は美味しいものいっぱい有るし。

今日の前振りはこんなところで。
次回は署名の記事のお話を。



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