ネットを見ていたらこんな記事を発見。
ミケランジェロを売り飛ばすか、150人の職員を守るか─イギリス名門美術館の苦悩
イギリス最古の美術学校「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(以下ロイヤル・アカデミー)」が保有するみMichelangelo(ミケランジェロ)の作品を売却し、人件費に充てる、という噂が真しやかに囁かれているらしい。
記事によると、当のロイヤル・アカデミーの広報は
”「所有するコレクションのどれも売り出すつもりはありません。私たちには素晴らしい芸術作品を守る保管者としての恩恵があり、責任があります。現在、そして今後の世代のために私たちはコレクションを守り続ける義務があるのです」とコメントし、『タッデイ・トンド』の売却を否定している。”とのこと。
しかし、ロイヤル・アカデミーの経済状況はコロナ期以前から逼迫しているようで、”噂”を取り上げた英紙ガーディアンによると、ロイヤル・アカデミーは、年間で150人分の人件費にあたる800万ポンドの削減が必要とのこと。これは、全職員のおよそ半分にあたる。
「ロイヤル」と名前にあるように、ここは「王立美術館」なのだが、国から支援は受けてなく、収入源の多くをチケット販売やショップ、会員費や寄付金など、美術館の運営から得ている。
売却が噂されているのはこちら。
写真:Wikipedia
英国唯一のミケランジェロ作品とされる「Tondo Taddei(トンド・タッデイ)」
この大理石の薄肉彫りの彫刻の具体的な価値は定かではないが、2017年の「アート・ニュースペーパー」は、「売却されれば1億ポンド(約134億2000万円)以上の値はつくだろう」としている。
私はロンドンに行った時、時間がなくてロイヤル・アカデミーには行けなかったので、実際この作品は見ていないのだが、この作品、ちょっと調べてみたところ、ミケランジェロの作品と100%認められているわけではないらしい。
Vasari(ヴァザーリ)曰く、制作はDavid(ダヴィデ)がPalazzo Vecchio(ヴェッキオ宮)に設置された直後で、その頃ミケランジェロは数点個人的な作品を制作した。
この作品はvia de' Ginori(ジノリ通り)のTaddeo Taddeiの為に制作された。宮殿に宿泊させていただいたお礼らしい。
1823年、当時RomaのWicarコレクション(Jean-Baptiste Wicar)に有ったものをSir George Beaumont(ジョージハウランドボーモント卿)が購入したことで、ロンドンに渡った。
1829年、Lady Margaret Beaumontにロイヤル・アカデミーに寄贈された。
このジョージハウランドボーモント卿は画家でもあり、収集家で、フランスの新古典主義の作品を集めていたが、ローマへの旅行中にWicarのコレクションも購入した。
Wicarはミケランジェロのデッサンの蒐集家というだけでなく、イタリア、フランス、オーストリア、オランダでナポレオンの美術作品略奪にも関与している。
同じ時期に作られたこちら
写真:Wikipedia
Tondo Pitti(トンド・ピッティ)
こちらは100%ミケランジェロ作のお墨付き。
Bartolomeo Pittiの為に制作されたもので、1873年からMuseo del Bargello(バルジェロ美術館)に有る。
Tondo(トンド)とは絵画、彫刻で形が円形の作品のことを言う。
15世紀のフィレンツェで特に制作されたもので、元々はdesco da partoというトスカーナ特有の産婦に食事を供する木の盆から派生したと考えられことから、聖母子像が描かれたり、彫られたりすることが多い。
多分、円は幾何学的に完璧な形であることから、キリスト教における倫理上完全なキリストとその母という組み合わせを用いていると考えられている。
ミケランジェロ作品には3つの「トンド」が有るが、一番有名なのはこれだろう。
Uffiziに有るTondo Doni(トンド・ドーニ)別名「聖家族」
2年前、久々にウフィツィ美術館に行った時に、スマホで撮った写真。
大分展示の仕方が変わっていて驚いた。
3点とも持ち主の苗字が付けられている。
確か数年前、Tondo Taddeiの為に、ロイヤル・アカデミーは改修もしたはず。
写真:https://www.ilgiornaledellarte.com/
2018年から、防弾ガラスに入れらてしまった。
この記事を読んだ時、実は気になったのはミケランジェロではなく、隣にあるダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を模写したジョヴァンニ・ピエトロ・リッツォーリ (Giovanni Pietro Rizzoli 通称Giampietrinoジャンピエトリーノ)の作品。
Giampietrinoはダ・ヴィンチが「最後の晩餐」を制作した時、そばにいたとも考えられている。
例えばこの模写には、元本にあたるダ・ヴィンチの作品にはない、テーブルの上のガラスのコップや壁の花柄などが描き込まれているのが興味深い。
噂とは言え、火のないところに煙は立たず。
フランスではLeonardo da Vinci(ダ・ヴィンチ)のモナリザを売却してフランスの文化を助けよう、なんてありえない噂も有るらしい。
参考記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/
https://www.ilgiornaledellarte.com/articoli/
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