イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

名は体を表す Prosecco VS Prošek(プロセッコ対プロシェック)

2021年10月10日 11時46分49秒 | イタリア・食

”「スパークリングワイン」は、一般には3気圧以上のガス圧を持った発泡性ワインの総称です。
(3気圧以下のものは弱発泡性ワインといいます)。その中で、
「シャンパン」はフランスのシャンパーニュ地方でつくられ、かつフランスのワインの法律(AOC法:原産地呼称管理法)に規定された条件を満たしたもののみ名乗ることができる名称です。
条件にはつくられる地域やぶどうの品種、栽培や伝統的製造方法(メソード トラディショナルと呼ばれる製法で、シャンパン製法とも呼ばれる)、アルコール度数などの項目があります。”
(引用:https://www.suntory.co.jp/customer/faq/001818.html

フランスのシャンパンだけでなく、スコットランドのウイスキー、果てはメキシコのテキーラなどその名前を名乗るためには厳しい条件がある。
イタリア一有名なスパークリングワイン、プロセッコ(Prosecco)しかり。
しかし今その名前を脅かす存在がイタリアを脅かしている。
その名もProšek

写真:Wikipedia
正しい発音は分からないが、「プロシェック」と変換された。
欧州委員会は、クロアチアが提出した伝統的な用語「プロシェック」の保護申請をEUジャーナルに掲載することに同意したのだが、これに猛反対しているのはイタリア。
政府も州も戦々恐々。デモが起きたりもしている。
2013年、既にシャンパンを抜いて世界で最も売れているスパークリングワインになったプロセッコは、現在生産数およそ6億本以上、そのうち4億本は輸出されている。

プロセッコの起源はローマ時代に遡る。
当時既にぶどうの品種、グレラはすでに知られており、ラテン語でプシヌスと呼ばれる白ワインが生産されていた。
プロセッコの一番古い記録は、1591年英国の探検家で作家のFyner Morysonが、「Prosecho」という名前のグレラ品種で生産されたワインについて言及している。
”L’Histria è divisa tra il Forum Julii e l’Histria propriamente detta. Qui cresce il vino Pucinus, ora chiamato Prosecho, assai celebrato da Plinio”.
Histria(イストリア)はフォーラム・ジュリー(Forum Julii)とまさにイストリア(Histria)とその名でよばれる部分に分かれていました。ここではプシヌス(Pusinus)というワインが育つ、現在はプロセッコ(Prosecho)と呼ばれる、プリニウス(Plinio)にも絶賛されたワインだ。

実は昔グレラ種のぶどうのことをこのエリアでは「プロセッコ」と呼んでいた。
そしてこの「プロセッコ」というぶどうを栽培していたのはヴェネト州だけだはなかったことが災いして、人気が出て来たヴェネトの「プロセッコ」に便乗して、シチリアなど他の州でも「プロセッコ」が販売されるようになってしまった。
当時は法律などで規制することが出来なったので、間違えて購入することも増えてしまった。
本家本元のプロセッコ生産者は、本来のぶどうの品種名に戻し、プロセッコと表示できるものには厳しい制限を設けることで便乗商法を打破したのだ。

プロセッコと呼べるものは以下の通り。

写真:https://www.italianowine.com/it/classificazione/mappe/prosecco/

ーProsecco DOC (プロセッコ)
ーProsecco Treviso(トレヴィソ) DOC
ーAsolo Prosecco(アッソーロ) DOCG
以下はより厳しい条件が付けられる。
ーConegliano-Valdobbiadene Prosecco (コネリアーノ ヴァルドッビアデネ)DOCG
ーConegliano-Valdobbiadene Prosecco Superiore (スペリオーレ)DOCG
コネリアーノ、ヴァルドッビアデネの丘陵地帯に広がる、より限られた畑からつくられる。スペリオーレは収量制限や規定アルコール度数がより高い。
ーConegliano-Valdobbiadene Prosecco Superiore di Rive DOCG
上記の地域内で、特にテロワールに優れた43の村からつくられるプロセッコ。収穫量の制限がより厳しくなり、収穫は手摘みに限られる。
また、必ずヴィンテージが表記される。
いわばプロセッコの村名格で、ワインには「Rive di ~(村名)」と表記される。
ーConegliano-Valdobbiadene Prosecco Superiore di Cartizze DOCG
1969年の制定以来、独自の規制を設けて最高のプロセッコの評価を保つ地区。
 異常がProseccoと呼べるスパークリングワイン。
 2009年にはDoc、Docgのプロセッコと呼べるものは、産地がトリエステからヴィチェンツァ(Vicenza)の9の地域に限られるという法律が出来、欧州連合の原産地名称保護制度で保護されいる。

片やプロシェックは、クロアチアのダルマチア南部で伝統的に作られている甘いデザートワインで、主にぶどうはマルヴァジーア種を使っている。
マルヴァジーアはイタリアワインにもよく使われていて、1202年、コンスタンティノープルを征服し後、90代で盲目のドージェエンリコ・ダンドロ(Enrico Dandolo)がギリシャのポルトワインをMonemvasiaから持ち帰った。
これがイタリア語のマルヴァジーア (Malvasia) の元になったと言われるが、ヴェネツィアから地中海沿岸でマルヴァジーアが普及していった。
そしてぶどうの品種はマルヴァジーアではなくても、アドリア海沿岸で作られた度数の高いワインをマルヴァジーアと呼ぶようになった。

クロアチアのプロシェックは元々子供が生まれた時に仕込まれ、土の中に埋められ、そこの結婚式に飲むという伝統があったそうだ。
主にクロアチアの南、ダルマチア地方で生産される食後酒で、イストリアやドゥブロブニクのマルヴァジーアをベースに他のローカルなぶどうで作られている。
ちなみにプロセッコも昔はブドウを乾燥させ、糖度を高め甘口ワインにしたり、瓶詰め後スパーゴと呼ばれる紐で口の部分を結び地中埋め、お祝いの時などに掘り起こして飲まれていたらしい。
この辺りの文化は兄弟のように似通っている。

プロセッコがスパークワインで、プロシェックが甘いデザートワインと全く別物とは言え、イタリア人なら絶対間違えないが、スパークリングワインをシャンパンとなんの迷いもなく呼んでいる圧倒的多数の国に輸出されたら、やはり間違えて購入されてしまう恐れもあるだろう。
名は体を表す。
これはやはり死活問題…なのかな?
そうそう間違えるかな?

クロアチア政府は2013年、プロセッコとの戦いに敗れているのだが、果たして今回もイタリアはこの戦いに勝利することが出来るのだろうか?

参考:https://www.corriere.it/



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4 コメント

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ワイン (山科)
2021-10-10 15:33:36
デザート ワイン プロシェックとか表示するようにしたらいいかもしれませんね。

ところで、チウ・チウ京橋ワインが、結構輸入しているようで、
  最近、チウ・チウのセットが、かなりお徳用でした。URL。
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わお!! (fontana)
2021-10-10 16:48:59
山科様
コメントありがとございます。
ホントですよね、出来るだけ問題を起こさないようにしたらいいのに、と思います。

チウ・チウ情報ありがとうございます。
この値段なら現地とそれほど差がないので、お買い得ですね。
あ~懐かしい。マルケ州に飛んで行きたいです。(理由は明日わかると思います)
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シャンパン (カンサン)
2021-10-11 07:14:46
fontanaさんへ、2021年7月にはロシアがロシア産のものしかシャンパンと言ってはいけない、と言い出して、フランスが猛反発したというニャースがありましたね。
フランスのシャンパンメーカー中にはロシアへの輸出を継続するため、ロシアの新規定に沿って表示を変えて事業継続しているそうです。↓ 参考 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/world/20210713-OYT1T50223/

海外の美術館からの展覧会が今年は少なくなりました。関西ではほとんどありません。でも、滋賀県の佐川美術館でスイすのプチ パレ美術館展を開催しているので、日曜日に行ってきました。
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何を考えているんですかね? (fontana)
2021-10-17 10:48:02
カンサンさん
すごいニュースを教えていただきありがとうございます。
何なんですかね、これ!?ロシア人の思考が理解できません。

佐川美術館も知りませんでしたが、スイスのプチ・パレ美術館も知りませんでした。既に美術館は閉館しているということで、来年の夏SOMPO美術館に巡回してくるようなので、見てみようと思います。
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