イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

福田美術館ー京都嵐山

2019年10月12日 15時24分46秒 | 日本の美術館

雨と風がいよいよ強くなって来た。
停電しないうちに…

10月1日、京都嵐山に新しい美術館がオープン。
嵐電嵐山駅から歩いて5分ほど、桂川沿いにある。

駅のあちこちに

こちらのポスターが貼られていたが、私たちが着いたのは閉館一時間前だったせいか、オープン翌日だったせいか、ほとんど人はいなかった。回っている間も10人いたかなぁ…オープン早々これではまずいか?

こんな不景気な時代に誰がこんな一等地美術館を新設したのか、不思議だったのだが、こちらのオーナーは大手消費者金融アイフルの創業者の福田吉孝氏、館長は娘の川畑光佐氏。

”美術館の構想は「京都に恩返しをしたい」という福田氏の熱意から生まれた。
京都で生まれ育ち、この地で創業しただけに、京都への思い入れは強いという。
「地元の皆様のおかげで事業を続けてこられたという感謝の気持ちがあるんです。
株式上場で得た利益をどのように社会に還元すべきか考えていたとき、たまたま嵐山の土地のお話を頂戴したのが2003年頃。同時期に絵画を120点ほど買わないかというお話が来て……。
偶然が重なり『これは嵐山で美術館を開きなさいということだな』と感じたようです」”
(引用:https://bunshun.jp/articles/-/14067

と語る館長も、両親に館長を打診された7年前から学芸員の資格を取るなど準備を始めたという。
粒ぞろいの所蔵品に、畑違いのオーナーの眼力はすごいなぁと思ったものの、この記事を読んで、オーナーが1点1点選んで集めたものではなく、一括購入したとことを知って納得。
だって、いくらお金が有ったとしても、これだけの作品を15年で集めるのは無理でしょう。
まぁ、こってこての美術畑の人が経営に携わるより、開けた美術館になるのでは、と思ったりする。
外にあれだけ閉ざされていたイタリアだって、ここ数年は優秀な外国人研究者が名高る美術館の館長を務めている。
こういう時代だからこそ、新しい風を吹き込む必要がある。

その辺りの柔軟な考えは、日本の美術館ではまだまだ珍しい、写真撮影は基本的にOKというあたりもそうだ。
撮影に関しては、自分の中で賛否が有るのだが、作品の劣化さえなければ、良いものをみんなで共有することは決して悪くはないと思っている。
行きにくい場所に、見難い作品をサイト上とは言え見られて時はやはりうれしい。

他にもスマホとイヤホンがあれば、音声ガイドも無料で利用できる。(デポジット1,000円払えばイヤホンも貸してくれる。)
今回は1時間しか時間がなかったので、音声ガイドをほとんど聞くことが出来なかったが、ほとんどの作品の説明が無料で聞けるんだから太っ腹。ソフト面の充実が新しい美術館ならではだと感じた。
それでも入場料はそれほど高いわけではない。(一般1,300円。前売り券をネット購入すれば100円引き)

今は開館記念の「福美コレクション展」を開催。
1期は10月1日から11月18日まで、2期は11月20日から1月13日までで展示作品完全入れ替え。
展示室は1階と2階。
設計は安田幸一(安田アトリエ主宰。建築家・東京工業大学教授)。箱根のポーラ美術館も彼が手がけている。
こちらの美術館の建築では、京都という場所柄を生かし、伝統的な京町家のエッセンスを踏まえたもので、外観は和モダンのデザインを用いて、周辺の自然に違和感なく溶け込んでいる。
内観には「蔵」をイメージした展示室、「縁側」のような廊下。

壁面ガラスにはこのような「網代模様」から着想した、日本的な意匠が描かれている。
展示室1階には昭和から明治期に活躍した近代の画家の作品。

横山大観の「富士図」や

福田氏の一番のお気に入りだったという速水御舟の「山頭翠明」

竹久夢二がまとめて展示されている。他にも上村松園、竹内栖鳳などが有った。
一貫性がないと言えばそうかもしれないが、個人コレクションの美術館のほとんどはそんなもんでしょう。
素人発言だが、「良いもの持ってる!」

2階に上がる前に…
1階の奥にはカフェや小さいけどミュージアムショップもあり、ここのオリジナルの商品も扱っていた。
カフェからは

渡月橋を望む絶景。

2階には2部屋あって、丁度カフェの上に位置する小さな部屋には洋画が飾ってある。

正面のシャガール(撮影禁止なので遠景)の「魔術師」は非常に良かった。
他にもローランサン、モネ、ピサロ、マティスと少数で小さな作品ばかりだが、こちらのコレクションもレベル高い。

2階のメイン会場に入ってびっくり。
まず目に飛び込んで来たのはこれ。

昨今大人気の伊藤若冲の「群鶏図押絵貼屏風」
圧巻。更に誰もいない…
しっかりじっくり堪能させていただいた。
これと大観の「富士図」は通期展示なので、2期でも見られる。

この部屋のお宝はこれだけではない。

こちらは北斎。

与謝蕪村「茶筏主演図屏風」

尾形光琳の「十二ケ月歌意図屏風」
更に

円山応挙「陶淵明図屏風」などなど盛りだくさん。
これらをほぼ独り占め出来るんだからすごい!!
海外の美術館に行くとよくこういう状況になるけど、日本ではどこに行っても人がわんさかいて、ゆっくりじっくり美術作品と対話の出来る美術館だと感じた。これがこのタイミングではないことを願いたい。
ここから一歩外に出ると、観光客の喧噪で一気に「観光地モード」に引き戻されるが、ここはじっくり日本美術に浸るとが出来る切り離された空間。
いやいや、京都じゃなければ2期も見たい~!!

「100年続く美術館」をコンセプトに、現代まで受け継がれてきた日本文化を次世代に伝え、さらなる発展へと繋がる美術館を目指すとのこと。
場所柄、外国人の来館も多いことだろうから、是非本物を世界に伝える役割をこれからしっかり果たして欲しいと思う。

福田美術館
公式サイト


それにしても京都は見どころいっぱいで困るわぁ…
何とか停電せずに書き終えられたけど、雨風怖いくらい荒れてるぞ。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
福田美術館 (カンサン)
2019-10-12 21:32:49
fontanaさんへ、福田美術館に開館した次の日に行かれたんですね。この美術館は私が乗る電車の中吊り広告が一車両に何枚か同じ広告が出ています。
きょう、NHKは朝からずっと台風のニュースですね。
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何事もなく (fontana)
2019-10-13 13:48:56
カンサンさん
そうなんですね、私はたまたまこの時期紅葉がらみで京都の特集をしていた雑誌で知りました。今回は仁和寺の壁画を見るのが目的だったので、時間があまりなかったのですが、非常に落ち着いた美術館で、是非再訪したいですが、京都は他にも見るものが多いので困りますね。

台風は、うちの辺りでは日付が変わるころには落ち着いていました。幸い停電や家屋の損壊もなくほっとしましたが、よく知る河川が氾濫したと聞いたときはやはり怖かったです。被害に遭われた地域の人たちは大変ですよね。
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若冲 (山科)
2019-11-09 08:19:59
福田美術館が伊藤若冲 最初期の絵の発見をプレスリリースしたようです。URLにリンク
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ありがとございます。 (fontana)
2019-11-10 14:29:00
山科様
コメントありがとうございます。
私も新聞で知りました。西・東問わず、真作が「発見」されるのはうれしいことですね。
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