イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

元祖ファストフード店ーPompei(ポンペイ)

2020年12月28日 16時21分25秒 | イタリア・食

今年も残すところあと3日。
さて、今年中に書き残しておくことは?
結局クリスマスの話もイタリア全州制覇できず、あちこち寄り道したしなぁ…また来年?
じゃあ、今日はどうしようかと思っていたところ、数日前書いてしまえば良かったのに、既に新聞にも載ってしまったネタで恐縮ですがこれ行っちゃいます。

世界最古のファストフード店がポンペイ(Pompei)に蘇った!?

これなんだ?
これはthermopolium もしくはtermopolio(テルモポリオ)というもので、”termos”=温かい と”poleo”=売る という単語が合わさって出来た語で、古代ローマではいわゆる食事を提供する場所。
温かい飲み物を買ったり飲んだりできる場所で、時には調理済みの食べ物も食べられる、現在のイタリアのバールのような場所だった。
大抵のお店は通りに面していたので、店の商品を外に描いて客になんのお店かをアピール、その辺は今も同じ。
ローマ人はアメリカ人よりも2000年も早くファストフード店を知っていたとイタリア人は自慢げだ。
ストリートフードやファストフードは決して私たちの時代の”発明”ではない。
パレルモ(Palermo)では13世紀の終わりごろまでtorrone(トローネ), frittelle(フリッテッレ), cassate(カッサーテ) そしてfave cotte(茹でたソラマメ), torte di pane e ricotta(パンとリコッタチーズのタルト)や果物のシロップ漬けやジャムなどを道で売っていたし、シエナ(Siena)では女性が自宅の出入り口の前でsalsa verde(グリーンソース)やジャム類を売っていた。ボローニャ(Bologna)やフィレンツェ(Firenze)だけでなくヨーロッパ中の各地で「ワインの小窓」を使って、こっそりワインが取引されていたことか。
(「ワインの小窓」の詳細はこちら
私たちなら、昔はおじさんしかいなかった立ち飲み屋のようなスタイルが西暦79年には有った、というのは驚くようでまぁ驚かない。

テルモポリオはスペースはさほど広くなく、飲み物が入ったテラコッタの大きなアンフォラが埋め込まれたカウンターが特徴的で、ポンペイだけでなく、ヘルクラネウム(Ercolano) オスティア・アンティカ(Ostia antica)の遺跡などから発掘されてはいるが、これは最近描き直したものじゃないの?と疑ってしまうくらい保存状態がよい。

ここはTermopolio della Regio Vといい、2年前に発掘されたのだが、発掘当初はまさかこんなフレスコ画が隠れていようとは誰も思っていなかった。
今のところ、ポンペイだけでもこのような”お店”はおよそ80か所あまり見つかっているが、ここまで完全な状態のものはない。
フレスコ画の修復だけでなく、発掘されたものは最新の技術を使い、あらゆる分野で研究が進められている。

フレスコ画には馬に乗る海の妖精

写真:https://www.globalist.it/storia/
これはこのテルモポリオの前に有った泉に敬意を表していると考えられる。
このお店は、泉(噴水)のある小さな広場に面していたようだ。
この広場はポンペイにおいても重要なものだったようで、他にも井戸や別の建物も有ったと考えられる。

他にもポンペイの遺跡から発掘されたモザイクでは最も有名と言っても過言ではない「猛犬注意」の犬

写真:https://en.wikipedia.org/wiki/Beware_of_the_dog
のように鎖につながれた犬

でもここにはこのテルモポリオの主人かここで働いていた人に対する悪口が書かれているらしい。
カウンターの中にいる人には見えないと思って書いたのか?

他には多分この場所で売られていたのだろうと考えられる色鮮やかで生き生きとしたな動物たちが描かれている。
立派な黒い尾と真っ赤なトサカを持つ鶏と2羽の鴨(もしくはアヒル)

写真:https://www.globalist.it/
しかしなぜひっくり返っているの?
絞められたあとってことかしらん???

実は食べ物が入った容器なども発掘されていて、そこになんとアヒル(鴨?)の骨と思われるものが発見された。この容器には他にも豚、山羊か羊、魚、かたつむりなども発見されていて、当時の食文化を探る重要な資料の1つになると様々な分野の研究者たちが大喜びしている。

他にも人骨が見つかっているが、これは調査したところ、古代のものではなく、17世紀くらいの骨らしい。
推察の息を出ないが、その頃遺跡に盗みに入った人物の骨ではないかと。
しかし、骨は頭と胴体がバラバラの場所から見つかった、とか。
これはミステリーだ。

Ministero per i beni e le attività culturali e per il turismo(文化財・文化活動省)の大臣Dario Franceschini(ダリオ・フランチェスキー二)は、イタリアにはまだまだこのような素晴らしい遺跡、発掘を待っている遺跡が多数埋もれていることを強調しつつも、考古学、美術、観光業に携わる人々に賛辞を贈っていた。

現在新型コロナウィルスの影響で、ポンペイの遺跡だけでなく、イタリア国中の博物館、美術館、劇場、映画館などの文化施設は全て閉鎖されている。
しかしこの新しいテルモポリオは来年のPasqua(復活祭2021年4月4日)の公開を予定している。
復活祭の贈り物の1つとして。
そして世界の復活の象徴として。

参考・写真:https://www.corriere.it/cultura/



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