イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

レオナルド×ミケランジェロ展とボストン美術館の至宝展

2017年09月15日 15時42分52秒 | 展覧会 日本

昨日ちょっと用事が有って東京駅まで行ったので、ついでに2軒展覧会を見てきました。
まず訪れたのが


三菱一号館美術館で24日まで開催中のレオナルド×ミケランジェロ展
言わずと知れたレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロの共演(?)です。
当初全然見る気がなかったこちらの展覧会ですが、近くまで行くのに見ないのもなんですし、結局は金出してみる価値のある展覧会でした。
自分でもちょっと驚いたのですが、三菱一号館美術館は初めての訪問でした。

この辺りってちょっと庭園になっていて、東京のど真ん中なのに緑が有っていいですね。
特に昨日は夏が戻ってきたような蒸し暑さだったので、この緑が少しだけ温度を下げてくれた感じです。

会場は3階から始まります。チケットを買い、エレベーターに乗る所でチケットを切られて3階へ。
降りてすぐのところにオーディオガイドの貸し出しが有りましたが、以前の失敗からオーディオガイドを借りるのはよほど知らない展覧会に行くときだけ、と決めたので今回は素通り。
会場は落ち着いた雰囲気でいいですね。
閉会間近なので混んでるかと思いきや、まぁ日本なら空いてると言える程度の来館者。
落ち着いて作品を見ることが出来たのは非常に良かったです。

ダ・ヴィンチやミケランジェロと言っても、この展開は素描がメインなので、それほど豪華な感じはしません。
いやいや、「ダ・ヴィンチとミケランジェロ、2人の巨匠が一度に、なんてすごいじゃん」と妹は言っていましたけどね。
まぁ確かに本国イタリアでも、いや本国だからこそなかなかこの2人の共演を見ることは出来ないですけどね。
さてさて、まず素描とか何か?
「そんなこと知っとるわい!」と言われてしまいそうですが、
単一色、一般に黒色の線もしくは点で、物の形象をあらわした絵。絵画の基礎となるもの。すがき、デッサン。
と広辞苑には載っています。
イタリア語ではdisegno(ディセンニョ)と言いますが…
今ちょっとこの素描に関して調べてみたら色々面白いことが出て来たので、古い資料を図書館で予約などしたので、ちょっとこの話はあとにしましょう。

全然期待していなかったこの展覧会を大満足で見終えた後、上野へ。
こちらも見なくていいかなぁ…と思っていたのですが、先日テレビ番組の「美の巨人たち」で英一蝶の”涅槃図”やってましたよね。
これを見て「涅槃図見たい!」となって、やっぱり行くことにしたんです。

ボストン美術館には去年大雪の中行ったのですが、この涅槃図は公開されてなかったんですね。
更に修復後初公開ということですよね。

英一蝶(1652~1724)は江戸に生きる人々の風俗画を得意とした一方で、仏画も多く手がけたことで知られている。
釈迦の入滅の様子を描いた《涅槃図》は一蝶による仏画の大作であり、江戸時代の仏画の代表作だ。
画面だけでも高さ約2.9m、幅約1.7m、表具を含めれば高さ約4.8m、幅約2.3mにも及ぶ大きさに圧倒されることだろう。
涅槃に入る釈迦と悲しみにくれる菩薩、羅漢、動物たちを鮮やかな色彩で大画面に描いており、一蝶の力の入りようが伝わってくる。
本図は、1886年(明治19年)以前にフェノロサが購入してからはボストン美術館で収蔵されてきた。
作品の大きさと経年による劣化ゆえ、同館でも25年以上にわたり公開が実現できなかった。
本展での公開に際して、画面の折れや亀裂、汚れ、糊離れなどを改善するために、約170年ぶりに本格的な解体修理が行われており、約1年に及ぶ修理作業の一部は、日本絵画の修理現場を来館者に紹介することを目的として、ボストン美術館の展示室で公開されてきた。
このたび、《涅槃図》は初めて里帰りを果たす。海を渡ってから、その作品を実際に見た人はごくわずか。
江戸時代の人々が祈り、想いを馳せた、一蝶による幻の巨大涅槃図は必見である。
(ボストン美術館の至宝オフィシャルサイトより)
素晴らしいですね。
そして私はこの作品を見ながらなぜかSan Francesco(聖フランチェスコ)の事が頭に有ったんです。

フランチェスコの死を悼んで泣き崩れる人たちと


彼の説教を聞きに集まる鳥たち。
全く接点はないのですが、ここ数年圧倒的に西洋絵画に触れる機会が多かったので、日本画を見ていてもどうしても西洋のものと比べてしまって…
しかしこれを見比べても、死を悼む人々の表情って大差ないですよね。

テレビを見ていて面白いと思ったのは、”涅槃図”に描かれた猫。
西洋でも犬は忠誠の象徴ですが、ネコは不吉…だったと思うのですが。
番組では涅槃図の描き方には決まりが有るため、必ずお手本があるとか。
英一蝶の涅槃図は鎌倉時代の命尊の「涅槃図」(兵庫・妙法寺蔵)が元絵だと考えられているそうです。
釈迦の位置や弟子たちの構図などもそっくり。
でも元の絵にはネコはいないんです。

なぜ涅槃図にネコが描かれないのかというと、ねずみはお釈迦様の使いと考えられていて、ネコはそのお使いを食べてしまうから涅槃図には登場しない。
ネズミってお釈迦様のお使いなの?
私の中では十二支を決める時に牛の背中に乗って行き、ゴールで飛び降りて1位になったネズミって、お使いというよりずるがしこい奴というイメージしかないんだけどな。
番組では涅槃図を研究する住職さんは「ネコがいる」ということで人集めになったのでは、と話していましたが…

いろいろ調べていたら、京都の東福寺にも「猫入り涅槃図」と呼ばれている作品が有るとか。

こちらは室町時代の画家の明兆が涅槃図を描いていると、一匹の猫がどこからともなく何度も絵具を持って現れたそうです。
これは仏のお使いかとその絵の具を使って描いたところ、とても見事な絵が完成しました。
ということで絵の具を運んでくれたネコに礼を尽くして絵の中に描きこんだ、ということのようです。
東福寺のサイトより)

ゴッホやモネも良かったですが、今回はこちらに軍配が上がりましたね。
英一蝶の作品はもう1つありましたが、そちらもとても良かったですよ。
ではでは次回は素描のお話で。



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