予告通り藤沢浮世絵館の続きです。
興味深い作品を見ました。
魚屋北渓(ととや ほっけい)の「江島記行 六郷」です。
もとは魚屋だったからこの名が付いたとも言われる魚屋北渓は北斎の1番弟子と言っても過言ではありません。
この作品のどこが気になるのか、と言いますと…
まずこれは「江島記行」という江の島に関する風物を描いた、摺物のセットです。
江の島だけでそんなシリーズができるんだから、江の島ってすごい場所だったんだと改めて思ったりします。
摺物とは、狂歌(狂歌→諧謔的な31文字で作られる詩)と歌に関する挿絵が描かれた版画作品で、狂歌師達によって作られ、大抵は非売品で俳人間で配られていたので、採算を取ること、大衆的なため検閲なども免れない浮世絵とは異なり、最高級の和紙、贅沢な染料、凹凸や「ぼかし」といった最高度の技術に加え金粉や銀粉を惜しみなく使い、極めて美しい作品が制作されたそうで、浮世絵のうちでも真の芸術と言えるそうです。
このシリーズは、その半分の絵柄が江の島への道程をモチーフとしており、旅する人々(この作品では狂歌師)の気持ちの高まりが名所、名物に託されて画面に描かれています。
本作品では川崎の六郷の渡しで雨に降られた旅人たちが、身を寄せ合っている様子が描かれます。
挿絵を担当した魚屋北渓は、摺物では北斎をしのぐ技巧をもつと評価されるほど、狂歌関連の作品を得意としていました。
本作は画中に16枚続きの記載 がありますが、現在発見されているものは14点で、「高輪ふり出し」(たかなわふりだし)「鮫州」(さめず)「大森」(おおもり)「蒲田」(かまた)「六郷」(ろくごう)「鶴見」(つるみ)「神奈川」(かながわ)「浜川」(はまかわ)「下宮」(しものみや)「上宮」(かみのみや)「本宮」(ほんぐう)「兒ヶ淵(稚児ヶ淵)」(ちごがぶち)「俎岩」(まないたいわ)「竜洞」(りゅうどう)で、狂歌連(きょうかれん)(狂歌のグループ)が江の島旅行へ行った際に、記念として制作されたものと考えられています。
(オフィシャルサイト参照)
で、この作品の何が気になるのか、と言いますと、この雨。
まるで音まで聞こえてきそうなこの雨の線に銀泥(ぎんでい)と呼ばれる銀を含ませた絵の具が用いられているということ。
これ、キラキラひかるんでしょうね。
わざわざこんな説明がついていた。さすが日本!!
いやいや、そこではなくて、なんだろこのテクニックは?
こんなの初めて見た…んだけど、膝をかがめて見ても、それほど光って見えなかったんだよな。
聞けば金泥(きんでい)というのも有って「風神・雷神」にも使われているとか。
う~む、世の中には知らないことが多すぎて困るなぁ。
今回は展示されていなかったけど
藤沢浮世絵館所蔵の同じく北渓の作品で「俎岩」
俎岩そのものは描かず、江の島名物の鮑と、曲げ物(まげもの)(木で作った入れもの)に入った鮑の粕漬(かすづけ)(酒のしぼりかすで味付けする漬物)でその土地を表現した作品。
実はこれ、そこここに銀泥が施されたきらびやかな作品なんだそうです。
更に装飾の細かさ、贅沢さはそれだけではなく、煙管の吸口(すいくち)、雁金(かりがね)の部分に空摺りと銀泥、また鮑に付着している小さな貝に空押し(からおし)がなされているんだそうです。
色々なことが奥深くて、底が見えない美術の世界。
それが面白くもあり悩ましい。
勉強不足なり。
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