ただ、せめてものしあわせは、この盗賊は、宝石だとか、美術品だとか、美しくてめずらしくて、ひじょうに高価な品物をぬすむばかりで、現金にはあまり興味を持たないようですし、それに、人を傷つけたり殺したりする、ざんこくなふるまいは、一度もしたことがありません。血がきらいなのです。
Still, fortunately this thief only has stolen the beautiful, rare and extremely expensive things like jewels or arts, doesn't seem like interested in cash. And he has never hurt, killed people or done anything cruel. He hates blood.
しかし、いくら血がきらいだからといって、悪いことをするやつのことですから、自分の身があぶないとなれば、それをのがれるためには、何をするかわかったものではありません。東京中の人が「二十面相」のうわさばかりしているというのも、じつは、こわくてしかたがないからです。
However even though he didn't like blood this is a villain, no one could tell what he would do if he were cornered. That's why all people in Tokyo were afraid of him and talking about this Fiend with Twenty Faces.
ことに、日本にいくつという貴重な品物を持っている富豪などは、ふるえあがってこわがっていました。今までのようすで見ますと、いくら警察へたのんでも、ふせぎようのない、おそろしい賊なのですから。
Especially those rich people with very rare precious things were trembling from the fear. So far even if the police was asked they couldn't do anything.
この「二十面相」には、一つのみょうなくせがありました。何かこれという貴重な品物をねらいますと、かならず前もって、いついく日にはそれをちょうだいに参上するという、予告状を送ることです。賊ながらも、不公平なたたかいはしたくないと心がけているのかもしれません。それともまた、いくら用心しても、ちゃんと取ってみせるぞ、おれの腕まえは、こんなものだと、ほこりたいのかもしれません。いずれにしても、大胆不敵、傍若無人の怪盗といわねばなりません。
This "Fiend with Twenty Faces" had wired oddity. When he decided to get something precious, he always sends warnings. Even as a villain he might not like unfair work. Or maybe he is proud of his capability that he can steal anything he wants how careful his victims are. Either way he must be audacious, impudent thief.
このお話は、そういう出没自在、神変ふかしぎの怪賊と、日本一の名探偵明智小五郎との、力と力、知恵と知恵、火花をちらす、一騎うちの大闘争の物語です。
This story is about the fight using the power and power, wisdom and wisdom between this misterious phantomlike thief and the very best detective, Kogorou Akechi.
大探偵明智小五郎には、小林芳雄という少年助手があります。このかわいらしい小探偵の、リスのようにびんしょうな活動も、なかなかの見ものでありましょう。
さて、前おきはこのくらいにして、いよいよ物語にうつることにします。
The great detective Kogorou Akechi has an accistant boy, Yoshio Komayashi. This cute and nimble like squirrel act of his must be worth to see.
Well, the preliminary might be enough, let's start the story.
この原文は青空文庫を利用させていただいてます。ありがとうございます。(英語版も出ているようですが、そのフリーデータがあるかどうかまでは調べておりません)あまりにも有名で、知ってる気になるくらいですが、初めて読みます。親しみやすい文章ですね。