英語学習は続く・・

英語ドラマや映画を繰り返しみて
そして原書をたくさん読んで☆
声を上げて読む〜☆

怪人二十面相 66

2022-12-31 23:39:48 | 怪人二十面相

「どうしたんです。どうしたんです。」
 明智もおどろいて立ちあがり、部屋の中をのぞきました。

”What? What happend?"
"Akechi stood un in surprise, looked into the room.


「あ、あれ、あれ……。」
 老人は口をきく力もなく、みょうな片言かたことをいいながら、ふるえる手で、室内を指さしています。

"Look, look.."
Old man didn't have enough strength to talk, pointed the room with shaking finger, mumbling something.

 見ると、ああ、老人のおどろきもけっしてむりではなかったのです。部屋の中の古名画は、壁にかけてあったのも、箱におさめて棚につんであったのも、一つのこらず、まるでかき消すようになくなっているではありませんか。

The result was that it was understandable the old man's surprise. Those antique painting, things in the boxes, every one of them has gone like they have vanished.

 番人の刑事は、畳の上に打ちのめされたようにたおれて、なんというざまでしょう。グウグウ高いびきをかいているのです。

The guard detective was fallen miserably and snoring.

「せ、先生、ぬ、ぬ、ぬすまれました。ああ、わしは、わしは……。」
 左門老人は、一しゅんかんに十年も年をとったような、すさまじい顔になって、明智の胸ぐらをとらんばかりです。

"Master, they.. they have been taken! Oh! Oh. How.."
Old Samon looked hideous, ten more years older, almost grab AkechiI's collar.

 

この章は終わりました。

明けましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします


怪人二十面相 65

2022-12-29 12:50:15 | 怪人二十面相

「アッ、明智先生、賊です、賊です。」
 思わず大声をあげて、寝ている明智の肩をゆさぶりました。

"Oh! Master Akechi, the thief, the thief!"
He shouted and shook the shoulder of sleeping Akechi.

「なんです。そうぞうしいじゃありませんか。どこに賊がいるんです。夢でもごらんになったのでしょう。」
 探偵は身動きもせず、しかりつけるようにいうのでした。

"What? How boisterous. Where is the thief. You must have seen a dream."
The detective didn't budge, just said that with scolding tone.

 なるほど、今のは夢か、それともまぼろしだったのかもしれません。いくら見まわしても、黒装束の男など、どこにもいやしないのです。

I see. It was a dream. Or maybe a phantom. There was no one there as he looded around now.

 老人は少しきまりが悪くなって、無言のままもとの姿勢にもどり、また耳をすましましたが、するとさっきと同じように、頭の中がスーッとからっぽになって、目の前にもやがむらがりはじめるのです。

The old guy felt awkward, came back to his spot and listen carefully. Then again, his head bacame blank, his eyesight got blurred.

 そのもやが少しずつくなって、やがて、黒雲くろくものようにまっくらになってしまうと、からだが深い深い地の底へでも落ちこんでいくような気持がして、老人は、いつしかウトウトとねむってしまいました。

The mist was getting thick to be like a black could eventually. He felt like he was sinking to a dark abyss and before he knew he was sleeping.

 どのくらいねむったのか、そのあいだじゅう、まるで地獄へでも落ちたような、おそろしい夢ばかりみつづけながら、ふと目をさましますと、びっくりしたことには、あたりがすっかり明るくなっているのです。

How long he slept? Whole time he had horrible dreams like he was in a hell. To his surprise it was bright already when he woke up.

「ああ、わしはねむったんだな。しかし、あんなに気をはりつめていたのに、どうして寝たりなんぞしたんだろう。」

"I must have slept. But how could I sleep, I was under extreme tension.

 左門老人はわれながら、ふしぎでしかたがありませんでした。
 見ると、明智探偵はゆうべのままの姿で、まだスヤスヤとねむっています。

Samon couldn't understand it himself.
Akechi was still sleeping as he was last night.

「ああ、助かった。それじゃ二十面相は、明智探偵におそれをなして、とうとうやってこなかったとみえる。ありがたい、ありがたい。」
 老人はホッと胸をなでおろして、しずかに探偵をゆりおこしました。

"Oh. Thank God. It seems like Twenty Faces hasn't come because of Akechi. How grateful."
Feeling relieved he shook the detective quietly.

 「先生、起きてください。もう夜が明けましたよ。」
 明智はすぐ目をさまして、
「ああ、よくねむってしまった……。ハハハ……、ごらんなさい。なにごともなかったじゃありませんか。」
といいながら、大きなのびをするのでした。

"Master, wake up. It's morning already."
Akechi opened his eye soon.
"Oh, I slept well. Ha, ha. Look, nothing has happened."
He said as he stretched himself.

「見はり番の刑事さんも、さぞねむいでしょう。もう大じょうぶですから、ご飯でもさしあげて、ゆっくりやすんでいただこうじゃありませんか。」
「そうですね。では、この戸をあけてください。」

"The watching detectives must be sleepy. Now we can give them the breakfast and let them have a good rest."
"You're right. Then, open the door."

 老人は、いわれるままに、懐中からかぎをとりだして、まりをはずし、ガラガラと板戸をひらきました。

The old guy took the keys out, unlocked and opened the door as he was told.

 ところが、戸をひらいて、部屋の中を一目見たかと思うと、老人の口から「ギャーッ。」という、まるでしめころされるような、さけび声がほとばしったのです。

However as he opened the door and have a look at the room, he made a such a horrible scream as if he was strangled.

 


怪人二十面相 64

2022-12-27 00:15:48 | 怪人二十面相

 さすがに百戦錬磨ひゃくせんれんまの名探偵、にくらしいほど落ちつきはらっています。

That's the trained detective being calm annoyingly.

 それから、ふたりはらくな姿勢になって、ポツポツ古名画の話をはじめたものですが、しゃべるのは明智ばかりで、老人はソワソワと落ちつきがなく、ろくろく受け答えもできないありさまです。

Two of them sat cozily, started talking about the antique paintings. Still the one talking was always Akechi, the old man was restless and couldn't answer to him.

 左門老人には、一年もたったかと思われるほど、長い長い時間のあとで、やっと、十二時がうちました。真夜中です。

After long hours like a year for Samon, the clock stroke twelve. It's the midnight.

 明智はときどき、板戸ごしに、室内の刑事に声をかけていましたが、そのつど、中からハッキリした口調で、異状はないという返事が聞こえてきました。

Akechi talked to the detective inside the room from time to time, there was always an answer saying nothing was wrong.

「アーア、ぼくは少しねむくなってきた。」
 明智はあくびをして、

"Uh, I'm a little bit sleepy."
He yawned.

「二十面相のやつ、今夜はやってこないかもしれませんよ。こんなげんじゅうな警戒の中へとびこんでくるばかでもないでしょうからね……。ご老人、いかがです。ねむけざましに一本。外国ではこんなぜいたくなやつを、スパスパやっているんですよ。」と、

"Twenty Faces may not come tonight. It's impossible to come into this heavy protection. How about a cigarette to wake you up. They are smoking these expensive ones in other countries."

たばこ入れシガレット・ケースをパチンとひらいて、自分も一本つまんで、老人の前にさしだすのでした。
「そうでしょうかね。今夜は来ないでしょうかね。」
 左門老人は、さしだされたエジプトたばこを取りながら、まだ不安らしくいうのです。

He opened his cigarette case, took one for himself and offered the old man.
"I don't know. He doesn't come, does he?"
Old Samon took the Egyptian cigarette saying uneasily.

「いや、ご安心なさい。あいつは、けっしてばかじゃありません。ぼくが、ここにがんばっていると知ったら、まさかノコノコやってくるはずはありませんよ。」

"No. Put your mind at ease. He is not a idiot. He wouldn't come if he knew I'm here."

 それからしばらくことばがとだえて、ふたりはてんでの考えごとをしながら、おいしそうにたばこをすっていましたが、それがすっかり灰になったころ、明智はまたあくびをして、

They fell silent. Each of  them was deep in thought, savoring the cigarette. When the cgarette had gone to ashes Akechi yawned again.

「ぼくは少しねむりますよ。あなたもおやすみなさい。なあに、大じょうぶです。武士はくつわの音に目をさますっていいますが、ぼくは職業がら、どんなしのび足の音にも目をさますのです。心までねむりはしないのですよ。」

"I'll have a little sleep. You should too. It's all right. They say the Samurai wakes up by the sound of the bit, I can be awake by the softest steps. My mind never sleeps."

 そんなことをいったかと思うと、板戸の前に長々と横になって、目をふさいでいました。そして、まもなく、スヤスヤとおだやかな寝息が聞こえはじめたのです。

And he lay in front of the door and closed his eyes. Soon after that his soft breathing sound could be heard.

 あまりなれきった探偵のしぐさに、老人は気が気ではありません。ねむるどころか、ますます耳をそばだてて、どんなかすかな物音も聞きもらすまいと、いっしょうけんめいでした。

His nochalant attitude made the old man uneasy even more. He strained his ears, trying hard to lesten every sound.

 何かみょうな音が聞こえてくるような気がします。耳鳴りかしら、それとも近くの森のこずえにあたる風の音かしら。

He thought he heard something odd. Is it ear noise, or the sound of wind hitting the treetop?

 そして、耳をすましていますと、しんしんと夜のふけていくのが、ハッキリわかるようです。

While he was listening it was as if he could hear the night going deep.

 頭の中がだんだんからっぽになって、目の前がもやのようにかすんでいきます。
 ハッと気がつくと、そのうす白いもやの中に、目ばかり光らした黒装束くろしょうぞくの男が、もうろうと立ちはだかっているではありませんか。

His head was going to be blank, his eyesight was getting blur.
Suddenly he startled to see a man in black standing tall with glaring eyes.

 


怪人二十面相 63

2022-12-25 01:46:26 | 怪人二十面相

不安の一夜

Uneasy night

 日下部左門老人が、修善寺でやとった自動車をとばして、谷口村の「お城」へ帰ってから、三十分ほどして、明智小五郎の一行が到着しました。

About thirty minutes after old Samon Kusakabe went the castle in Taniguchi villege by hired car, Akechi and other fellow arrived.

 一行は、ピッタリと身にあう黒の洋服に着かえた明智探偵のほかに、背広服のくっきょうな紳士が三人、みな警察分署づめの刑事で、それぞれ肩書きつきの名刺を出して、左門老人とあいさつをかわしました。

Other than Akechi detective in black fit suits, there were three stout police detectives who gave old Samon greetings and their business cards.

 老人はすぐさま、四人を奥まった名画の部屋へ案内して、壁にかけならべた掛け軸や、箱におさめてたなにつみかさねてある、おびただしい国宝的傑作をしめし、いちいちその由緒ゆいしょを説明するのでした。

Old person showed the four of them the numerous number of paintings in the art room explaining every fabulous art work on the wall or in the boxes in the shelf.

「こりゃあどうも、じつにおどろくべきご収集ですねえ。ぼくも古画は大すきで、ひまがあると、博物館や寺院の宝物などを見てまわるのですが、歴史的な傑作が、こんなに一室に集まっているのを、見たことがありませんよ。

"Well, well. This is marvelous collection. I love the antique paintings so sometimes I visit to see those tresures in the musiums or the temples. Still I've never seen such a collection.

  美術ずきの二十面相が目をつけたのは、むりもありませんね。ぼくでもよだれがたれるようですよ。」

It's no surpriseing that Twenty Faces sets his eye on them. Even my mouth starts watering.

 明智探偵は、感嘆にたえぬもののように、一つ一つの名画について、賛辞さんじをならべるのでしたが、その批評のことばが、その道の専門家もおよばぬほどくわしいのには、さすがの左門老人もびっくりしてしまいました。そして、名探偵への尊敬の念が、ひとしお深くなるのでした。

The detective Akechi's admiration and praise for each one of them could tell that he was expart of art and surprised old Samon. His respect for Akechi grew even more.

 さて、少し早めに、一同夕食をすませると、いよいよ名画守護の部署につくことになりました。

Now, they finished a little early supper, they set themselves to guard the paintings.

  明智は、テキパキした口調で、三人の刑事にさしずをして、ひとりは名画室の中へ、ひとりは表門、ひとりは裏口に、それぞれ徹夜をして、見はり番をつとめ、あやしいものの姿をみとめたら、ただちに呼び子を吹きならすというあいずまできめたのです。

Akechi ordered to three detectives efficiently, one to in the art room, one to the front gate and last one to the back gate. He decided if someone saw something suspicious they would whistle.

 刑事たちが、めいめいの部署につくと、明智探偵は名画室のがんじょうな板戸を、外からピッシャリしめて、老人にかぎをかけさせてしまいました。

Each detective went to their own posiiton Akechi close the stout door of the art room and made the old man lock it.

「ぼくは、この戸の前に、一晩中がんばっていることにしましょう。」
 名探偵はそういって、板戸の前の畳廊下に、ドッカリすわりました。

"I will be hanging on here all night."
He said, sat down on the corridor in front of the art room door.

「先生、大じょうぶでしょうな。先生にこんなことを申しては、失礼かもしれませんが、相手はなにしろ、魔法使まほうつかいみたいなやつだそうですからね。わしは、なんだかまだ、不安心なような気がするのですが。」

"Master, is it all right? I don't want be rude but the opponent is like a magician, I hear. I'm not sure it's all right."

 老人は明智の顔色を見ながら、いいにくそうにたずねるのです。

The old man asked uneasily wathing Akechi's countenance.

「ハハハ……、ご心配なさることはありません。ぼくはさっき、じゅうぶんしらべたのですが、部屋の窓には厳重な鉄ごうしがはめてあるし、壁は厚さが三十センチもあって、ちっとやそっとでやぶれるものではないし、部屋のまんなかには刑事君が、目を見はっているんだし、そのうえ、たった一つの出入り口には、ぼく自身ががんばっているんですからね。これ以上、用心のしようはないくらいですよ。

"Ha, ha, ha. You don't need to worry. I checked thoroughly. All windows have stern iron bars, the room is unbreakable with 30 centimeter thick walls. In the middle of the art room the detective is watching and I'm here at only door into the room. It's precautious enough.

 あなたは安心して、おやすみなすったほうがいいでしょう。ここにおいでになっても、同じことですからね。」
 明智がすすめても、老人はなかなか承知しません。

You'd better to go to sleep at ease. It's the same if you are here or not."
Akechi's offer didn't change old man's mind.

「いや、わしもここで徹夜することにしましょう。寝床へはいったって、ねむられるものではありませんからね。」
 そういって、探偵のかたわらへすわりこんでしまいました。

"No, I'll be up all night here. I would never be able to sleep if I went to bed."
Saying so he sat down beside the detective.

「なるほど、では、そうなさるほうがいいでしょう。ぼくも話し相手ができて好都合こうつごうです。絵画論でもたたかわしましょうかね。」

"I see. Then it's your choice. It's better for me I can have a company. Let's discuss about art."

 


怪人二十面相 62

2022-12-22 22:58:24 | 怪人二十面相

「いや、それがですて、こう申しちゃなんだが、わしは警察よりも先生をたよりにしておるのです。二十面相を向こうにまわして、ひけをとらぬ探偵さんは、先生のほかにないということを、わしは信じておるのです。

"That's it. I'm afraid that I rely on you more than police. I believe it's only you who can be better than Twenty Faces.

 それに、ここには小さい警察分署しかありませんから、腕ききの刑事を呼ぶにしたって、時間がかかるのです。なにしろ二十面相は、今夜わしのところをおそうというのですからね。ゆっくりはしておられません。

There is only small branch police-office. It takes time to call the good detectives. You know Twenty Faces is going to attack my place tonight. There is no time.

 ちょうどその日に、先生がこの温泉に来ておられるなんて、まったく神さまのおひきあわせと申すものです。先生、老人が一しょうのおねがいです。どうかわしを助けてください。」
 左門老人は、手をあわさんばかりにして、かきくどくのです。

On that critical day you are here, that's God's work. Master, this old man is begging. Please help me."
Old Samon pleaded almost praying.

「それほどにおっしゃるなら、ともかくおひきうけしましょう。二十面相はぼくにとっても敵です。早くあらわれてくれるのを、待ちかねていたほどです。

"If you ask me that much, I answer for that anyway. Twenty Faces is my enemy too. I had been waiting for him.

 では、ごいっしょにまいりましょうか、そのまえに、いちおうは警察とも打ちあわせをしておかなければなりません。宿へ帰ってぼくから電話をかけましょう。そして、まんいちの用意に、二―三人刑事の応援をたのむことにしましょう。あなたは一足先へお帰りください。ぼくは刑事といっしょに、すぐかけつけます。」

Then let us go together. Before that I have to have briefing meeting with the police. I go back to my room and make a phonecall. I should get some policemen to help us in case. You go back ahead. I will go there with the policemen soon."

 明智の口調は、にわかに熱をおびてきました。もう釣りざおなんか見向きもしないのです。

His tone got enthusiastic suddenly. He didn't see the fishing rod anymore.

「ありがとう、ありがとう。これでわしも百万の味方をえた思いです。」
 老人は胸をなでおろしながら、くりかえしくりかえし、お礼をいうのでした。

"Thank you, thank you. I feel like I got a million ally."
Old man felt relieved, thanking him again and again.

 

これでこの章は終わりです。