ピッポちゃんは、小林少年の手の甲にとまって、かわいい目をキョロキョロさせて、じっと聞いていましたが、ご主人の命令がわかったものとみえて、やがて勇ましく羽ばたきして、地下室の中を二―三度行ったり来たりすると、ツーッと窓の外へとびだしてしまいました。
Pippo listened to Kobayashi on his hand looking at him intently then it seemed like it understood the order, flapped its wings bravely. It made a few circle around the room and flew away from the window.
「ああ、よかった。十分もすれば、ピッポちゃんは、明智先生のおばさんのところへとんでいくだろう。おばさんはぼくの手紙を読んで、さぞびっくりなさるだろうなあ。でも、すぐに警視庁へ電話をかけてくださるにちがいない。それから警官がここへかけつけるまで、三十分かな? 四十分かな? なんにしても、今から一時間のうちには、賊がつかまるんだ。そしてぼくは、この穴ぐらから出ることができるんだ。」
"Good, withing ten minutes Pippo will arrive at Master Akechi's residence and go to the madam. She will be so surprised. Still she will call the Police dapartment. Does it take 30 minutes for the police to reach here? Or 49 minutes? Anyway the thief will be caught in next one hour and I'll be able to get out of here."
小林少年は、ピッポちゃんの消えていった空をながめながら、むちゅうになって、そんなことを考えていました。あまりむちゅうになっていたものですから、いつのまにか、天井のおとし穴のふたがあいたことを、少しも気づきませんでした。
「小林君、そんなところで、何をしているんだね。」
Kobayashi was imagining like that watching the sky Pippo went off. He was absorbed in this idea so he didn't notice the basement's lid was open.
"Kobayashi, what are you doing there?"
聞きおぼえのある二十面相の声が、まるで雷のように少年の耳をうちました。
The familiar voice of Twenty Faces hit him like a lightning.
ギョッとしてそこを見あげますと、天井にポッカリあいた四角な穴から、ゆうべのままの、しらが頭の賊の顔が、さかさまになって、のぞいていたではありませんか。
Startled, he looked up to see the thief's white-haired upside-down face still in disguise of old man from the square space.
アッ、それじゃ、ピッポちゃんのとんでいくのを、見られたんじゃないかしら。
小林君は、思わず顔色をかえて賊の顔を見つめました。
Oh, did he see Pippo fly away, didn't he.
Kobayashi lost color and stared at the thief.
この章は終わりです。