「戦争は女の顔をしていない」は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチさんによるノンフィクション小説です。
第二次世界大戦中、もっとも過酷な戦いだったといわれるのが、ドイツとソビエト連邦(現;ロシア)の戦いです。ソ連側だけでも約2700万人が亡くなったといわれています。
そして、この戦いでは自ら志願したりした女性を含めて、従軍した女性兵士が100万人を超えているそうです。その理由として、愛国主義の高まりがあったそうです。男女同権の理念を掲げて、「兄弟姉妹よ!」「少年少女よ!」との掛け声のもと愛国心を鼓舞されていました。
しかし、現実は厳しい差別などでした。そんな元女性兵士だった方の苦しみや悲しみ、希望と絶望を「証言文学」という形で描かれたのが、この「戦争は女の顔をしていない」。2015年に、「私たちの時代における苦難と勇気の記念碑」と評価され、ノーベル文学賞を受賞しています。
スヴェトラーナさんは、ベラルーシの作家、ジャーナリスト。ベラルーシ人のお父さんウクライナ人のお母さんのもと、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国に生まれました。お父さんが第二次世界大戦後に軍隊を除隊したあと、ベラルーシ・ソビエト社会主義共和国に移住し、両親は教師となります。
ベラルーシ大学でジャーナリズムを専攻し、卒業後は地方紙の記者でした。戦争を記録するのが男の言葉だけだったことに疑問を持ち、「戦争の物語を書きたい。女性たちの物語を」という思いから、元女性兵士たちから聞き書きすることを決意、1978年からこの本を書き始めました。そして、独ソ戦に従軍した500人を超える女性からの証言を聞き取り、本を完成させました。
しかし、当時のベラルーシ大統領は、「これはわが軍の兵士や国家に対する中傷だ」として非難し、出版禁止となりました。ようやく出版されたのは、ペレストロイカが進んだ2年後の1984年のことでした。そして、出版される200万部を超えるベストセラーになり、映像化もされました。
スヴェトラーナさんは、「戦争は女の顔をしていない」に続いて、「ボタン穴から見た戦争」では、第二次世界大戦のドイツ軍侵攻当時に子どもだった方々の体験談を集め、1988年には、「アフガン帰還兵の証言」でアフガニスタン侵攻に従軍した方や家族の証言を集めましたが、当時は隠されていた事実が明らかにされ、軍や共産党から非難されました。「チェルノブイリの祈り」では、チェルノブイリ原子力発電所事故に遭遇した方々の証言を取り上げますが、ベラルーシでは事故に対する情報統制が敷かれているため、発刊されていません。
私はこの本の存在は以前から知っていたのですが、手にしたことはありませんでした。2019年4月27日からウェブコミック配信サイトComicWalker(KADOKAWA)で小梅けいとさんが作画を担当し、速水螺旋人さんが監修して、漫画の連載が始まり、2022年4月時点でコミックスが3巻まで発売されています。第50回日本漫画家協会賞において、「まんが王国とっとり賞」に選出されています。
小説の日本語版(翻訳;三浦みどりさん)は、2015年10月に群像社から発売されていましたが、著作権を管理する代理人から権利消失のため出版できなくなり、現在は岩波書店が翻訳権を獲得して、岩波現代文庫から刊行されています。
どのような理由であったとしても、戦争というものはただただ悲しいことです。そして、戦争でも土地や建物が破壊されるだけでなく、人間そのものものを破壊してしまいます。土地は綺麗にすれば、建物は建て直せば、何ごともなかったようにそこに残ります。でも、人間は、人の心は二度と元には戻らないです。
「人の命は物事を測るものさしであってはならないのです」
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ
本日も私のブログを読んでいただき、ありがとうございます。
今日はどのような一日になるのでしょうか。または、どのような一日を過ごされたのでしょうか。
その一日でほんの少しでも楽しいことがあれば、それを記憶にとどめるように努力しませんか。そして、それをあとで想いだすと、その日が明るくなる、それが元気の源になってくれるでしょう。
それを見つけるために、楽しいこと探しをしてみてください。昨日よりも、ほんの少しでも、いい一日でありますようにと、お祈りいたしております。
また、明日、ここで、お会いしましょう。