野球小僧

根性がクソ弱いチーム

新日鐵住金かずさマジックという社会人チームがあります。
正確に言いますと、JX-ENEOS、JR東日本、日本生命などの企業チームではなくて、企業名は付いているものの、広域複合企業チーム、いわゆる市民チームです。

元々は新日鐵君津と言う企業チームであり、松中信彦(ソフトバンク)や下柳剛(元阪神)、渡辺俊介(米独立リーグ)などの選手を輩出してきた名門チームなのです。

2003年に新日鐵君津は長らく続いた不況によって、野球部活動を見直したこともあって、一時期は休部の危機となります。2003年に社会人野球の二大大会の都市対抗と日本選手権に出場しましたが、2004年からは6年連続予選敗退。その後長い期間低迷に陥って行きます。

チームモチベーションも低く、都市対抗や日本選手権の予選で敗れた直後には「今年は休みを何日もらえるかな」と話しているメンバーがいるくらいだったそうです。

そんな時2008年に監督としてOBで四番バッターを務めた鈴木秀範が就任しました。
自身が現役時代を過ごしたチーム状況を目の当たりにしたときに「このチームは、根性がクソ弱い。血を入れ替えないと、変わっていかない」と思ったそうです。

「選手に嫌われてもいいから、チームを変えようと思った。それをやらないと、自分が監督に指名された意味がない。私がチームからいなくなっても、伝統として残っていくカラーを植え付ける必要がある。人が代わったからチームカラーが変わるのでは、とてもじゃないけど常勝チームなんてできない」

まず手をつけたのは、選手たちの負け犬根性を叩きのめすこと。試合で敗れるたび「負けたら許さない」と徹底的に走らせたそうです。また、自分たちの存在意義を知らしめることも行ったそうです。

「君たちが野球道具を買ってもらっているのは、誰のおかげだ? もっと掘り下げれば、デートやパチンコをしているおカネは、誰が稼いでくれたものだ? 君たちは利益を生まない仕事をしている。だからこそ勝って出資者に満足してもらわないと、このチームが存在する意味はない」

それだけではありません。支援してもらっているチームとして、存続するには勝たなければなりません。

「予選で負けたとき、『今のメンバーの意識を変えようと思っても、時間がかかるから無理』と思った。『かずさマジックを強くしてやる』と思って入部してきた選手じゃなければ、チームを改革しようとしても賛同してくれない。だったら、血を入れ替えるしか手段はない。腐ったみかんは箱から取り出さないと、ほかのものまでダメになる」

就任1年目のオフに10人、2年目には9選手に戦力外通告。2年間で3分の2を入れ替えました。

そして2010年に7年ぶりに都市対抗に出場しました。しかし2011年は予選敗退。
指揮官が方向を示すだけでは、成長できる幅が限られていたというのです。

「監督はしょせん、フィールドに入れない人間。フィールドに入っている人間がゲームを動かしていかないと、何も変わっていかない。私自身がそういうタイプだったけど、『オレたちが結果を出せば、監督はうるさく言わなくなる。結果を出せばいいんだろ?』と」

選手が自主的に動く組織を作るうえで、必要なのは先輩、後輩の良好な関係だと言います。それがチームに成長をもたらせると考えているそうです。

「よく言えば仲良しチームだった。上のヤツが、下のヤツに言いたいことを言わない。そんなヤツらがグラウンドで『意思疎通して戦おう』となっても、出来るはずがない。嫌われたっていいから、言いたいことは言わなきゃダメ。よく選手には、『お前ら先輩が言わないから、下ができないんだ』って話している。理解させてあげれば、やりますよ、若い人たちは特に。だって、教わってきていないだけだから」

1~2年ほど前から鈴木監督は練習中に暇だと感じるようになったそうです。それは選手たちが自主的に動いてくれるから、いろいろ言う必要がないそうです。

2012年にかずさマジックは日本選手権予選を突破し、日本選手権本大会出場。このときにチーム名を「新日鐵住金かずさマジック」として再出発します。

「選手たちはよく勝ち切ってくれた。彼らの姿を見て、『これで強くなったな』と感じた。チームに企業名を背負ったことで、意識が変わったと思う。『オレたちは新日鐵住金だ』というプライドがあるから」

そして、2013年日本選手権で新日鐵住金かずさマジックは創部40年目で初めて優勝。

「よく優勝したな」とキャプテンに語りかけると「監督、それは違いますよ。僕らは夏の都市対抗で勝っていません。来年は夏、優勝しましょう」と応えたそうです。

社会人野球は都市対抗が頂点を決める戦いとされているそうです。だから、自分たちはまだ、本当の日本一ではない。

「監督も言っていましたけど、1回くらい日本一になったからって、強いなんて思っていないですから。本当の日本一に挑戦しないといけないと思っています」

言葉、形は違ったとしても、こういう考え方がチームを強くしていくのだと考えます。

コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
eco坊主さん、こんばんは。


そうのとおり、最後のコメントが言いたかったのです。


血の入れ替えはともかくとして、同じ目標に向かって、同じ志でいないと組織は難しいですね。それはチームとして必要なことです。


1人では何も出来ませんが、個人が持っている得意技を役割分担して、チームで仕事をすることが大切なことです。


仕事も野球も一緒ですね。


eco坊主
おはようございます。
おはようございます。


都市対抗に出てくるチームは色々背景や伝説がありますよね~
昔は彼らのみ”ノンプロ”という言葉が使われていましたね。
高校野球や大学野球には使われていなかったなぁ~

新日鉄君津といえば松中くらいしか思い浮かばなかったですけど下柳や渡辺俊介もでしたか・・


鈴木監督のやられた改革はなかなかできることじゃあないです。
組織の中では監督=管理職?も上の意向に従う必要がありますからね~
topがしっかりしているかtopから全権を任されているかしないと難しいですよね。
尤もその前に自らが強い信念を持っていることが必要不可欠ですけど!!!


会社組織がこうあれば強い企業ができるんでしょうけど・・・
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

最新の画像もっと見る

最近の「社会人野球」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事