夏の高校野球は風物詩として日本の夏に定着しています。そんな歴史と伝統のある国民的行事を運営する組織が公益財団法人日本高等学校野球連盟(高野連)です。高野連は甲子園大会(正式には「全国高等学校野球選手権大会」)と地方予選で運営組織が分かれており、地方予選は各都道府県に設けられた支部が運営を担っています。そして、地方予選を勝ち抜いた学校同士が戦う甲子園大会を運営するのが各支部をまとめる「日本高野連」なのです。
そもそも高校野球連盟(高野連)ってどんな組織なのでしょうか。
もともと高野連は高体連よりも歴史が古いのです(http://blog.goo.ne.jp/full-count/e/72ca55c656a948cb8873eb238bf16ccf)。その後、高体連に一時的に加盟したこともありましたが、さまざまな制約を受けることを嫌って、結局、高野連でやっていくことになりました。
例えば、高校野球の全国大会は春と夏の甲子園、そして秋の神宮大会と3回あります。しかし、高体連に所属していると、高校総体だけが全国大会であって、複数の全国大会の開催は許されません。
そうは言っても、高校野球も部活動の一環です。したがって、高野連が独自で運営をしており、そのスタッフは基本的に現役教員です。最近では教員を引退した人も手伝うことがあるそうですが、昔はほとんど現役教師たちだけでやっているそうです。
たとえば、一番多くの加盟校を持つ東京支部のスタッフは70人中、60人が現役教員となっているそうです。正確には、高校野球の監督や部長をやっていた教員たちが、高野連のメンバーに加わっているという。よって、本業は学校の教師なので休暇や時間外を上手く使いながら運営に参加しており、予選が終わったら学校の仕事に戻る人もいるそうです。これは甲子園を仕切る日本高野連も一緒なのだそうです。
ということで、高校野球の監督や部長の兼業しながら(あるいは教員を退職して)高野連で働いているのです。基本的に学校の教師ですので、高野連スタッフとしての給料はありません。会長、理事長などの偉い人たちも無償ボランティアだそうです。ただし、一部、高野連事務員の方には時給が発生していて、残りのスタッフは交通費以外の手当ては一切ありません。
ちなみに、審判は高野連内の「審判部」に登録されていますが、そこも全員ボランティアで審判講習を受けた主に会社員や大学生となっています。
なお、高野連の主な収入源は入場料、大会参加費、加盟費(加盟するときに発生)のみとなっています。
ですから、収入源のほとんどは入場料が占めています。また、高校野球と言えばテレビ中継ですが、基本的に放映料はNHKと朝日放送ともに無料になっているとのことです。ただ、収益確保が厳しい支部によっては放映料を徴収することもあるそうです。
2015年の第97回選手権大会期間中の入場者数は86万2000人。これまでの最多は1990年第72回選手権大会(沖縄・沖縄水産高が沖縄県の高校として初めて決勝進出した)の92万9000人には及びませんが、それでも歴代5位の入場者数でした。これだけの観客を動員しながら、高野連の入場料収入は7億4000万円だったそうです。観客一人に換算しますと、約860円ほどです。
高校野球の入場料はきわめて安く、バックネット裏中央特別自由席は2000円、内野特別自由席は1500円(こども600円)、アルプス席は600円、外野席は無料となっています。なお、阪神タイガースの公式戦のチケット代は、バックネット裏8000円程度(シーズンチケットのため1試合平均の料金)、内野席4500円、アルプス席2500円、外野席1900円(平日、一般、大人の料金)となっています。地方大会に至っては500円または600円となっています。
高野連はこれを多少値上げしたところで、チケット印刷代やもぎりの人件費などを考えると採算がとれないというのが見解だそうです。
驚くべきことは、阪神甲子園球場は高野連から使用料を徴収していません。無料貸し切りなのです。一部、グラウンド整備にかかる実費負担はあるようですが、一ヶ月弱の期間です。でも、その分かどうかは判りませんが、多くの観客が阪神電車を使用するのですから、もしかすると、阪神電鉄としては充分に採算は取れているのかも知れません。
そもそも高野連は非営利団体ですから利益を追求する必要はありません。大会運営費以外で利益が出た場合、支部によって使い方は違うようですが、加盟校にボールや用具、試合用の背番号を支給するなどして還元されるそうです。ちなみに、全国大会での甲子園への旅費支援などは日本高野連が部員1人当たりに3000円×滞在日数を支給しています。足りない分は学校側の負担になります。また、加盟校に配るパンフレットなども作成したりするので、そんなに資金的余裕はないそうです。なお、選手権大会を主催する朝日新聞社からは1校に対して約2000円程度の金銭的支援があるそうです。
高野連はシーズンオフの冬も忙しいようで、春、夏、秋の大会に向けて地方予選で使う球場を押さえるための打ち合わせなど、いろいろな準備があって一年中休みなしだそうです。
修行僧のように頭を丸めた野球部員たちが放課後や休みを返上して長時間練習に励んでいる一方、高野連の方々も一年中休みなしで働いていたのです。
今までもお礼を言って観戦させていただいていましたが、これからはさらにありがたさを持ってお辞儀の角度を深くしたいと思います。