野球小僧

重国籍

日本の国籍と外国の国籍を有する人(重国籍者)は、一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があります(国籍法第14条第1項)。

日本と米国籍を持つテニスの大坂なおみ選手の活躍で「重国籍」への関心が高まっています。その陰に隠れて(?)、世間ではあまり関心を持たれていませんが、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスのオコエ瑠偉選手も、近々国籍選択を迫られています。そういえば、国会議員の蓮舫さんが日本に帰化した際、台湾国籍離脱の手続きを忘れていたことが判明して、大騒ぎになったことがありますが、あの騒ぎも重国籍にまつわる一件です。

生まれながらに両親の国籍が異なるなど、重国籍として生まれた人のほとんどは、両親の国籍を分け隔てることなく尊重している人は多いです。しかし、現在の日本では、重国籍者は国籍法により22歳までに「国籍選択」をしなければなりません。1985年施行ですから、それほど古い法律ではありません。ちなみに、欧米諸国は重国籍であり続けることを容認しています。ただ、ノルウェー、オランダ、チェコあたりが重国籍を認めていません。また、アジア、中東やアフリカの国々はほとんど重国籍を認めていませんが、韓国が認めています。韓国では、科学、経済、文化、体育など特定分野で非常に優秀な能力を保有する者で、韓国の国益に寄与すると認められる者に限り認められる「特別帰化制度」があります。「特別帰化」で韓国籍を取得した外国人は、成人後も多重国籍であることが特例として認められています。

さて、そもそも日本に重国籍者がどれほどいるかは、分かっていないそうです。日本政府は選択義務を定めてはいるものの、実際に選択したかどうかを把握していないからだそうです。例えば重国籍者が日本籍を選んでも、もう1つの国籍の離脱を認めない国があることなどが理由の1つです。ただ、予測として、政府は戸籍の情報などから、国籍の選択を予定する人の数を約89万人としているようです。

重国籍を原則として容認している欧米は基本的に移民受け入れに寛容であり、2つの国籍の片方を捨てさせるのは、人権侵害にあたるという考え方が根強いということがあります。もう1つは、重国籍を容認した方が、国や企業にメリットがあるためです。移民の受け入れ国にとっては自国籍も取得させたほうが、国の運営をしやすい利点があります。

海外で働く日本人研究者の中には、外国政府への補助金の申請の必要などから外国籍を取得し、日本国籍を捨てなければならない人がいます。国籍の選択を求める日本の制度は、海外で働く人にも厳しい状況になっているのです。

政府は国民の安全を守るために国外で自国民を保護する役割を負いますが、重国籍者の保護はどの政府が担うのかという問題が以前はありました。しかし現実にこうした問題はほとんど生じていませんし、人道的なことから、目の前で危険に置かされている人を「他国民だから」なんてことで放置できるはずもありません。欧州でも冷戦終結前は重国籍に慎重な考え方もありましたが、戦争を意識しなくなり、域内統合も進んでくると容認するようになってきています。

ただ、逆に外国からの移民が増えたとき、ある地域の住民のほとんどが外国籍しか持っていなければ、行政としての運営は難しくなります。できるだけ国民として位置づけるほうが安定・安全だと思います。その辺は欧州でも同じことが言えるでしょうから、仕組みを十分に研究すればいいのかなと考えます。

でも、働くうえでは有利なこともあります。社員を別の国に転勤させるときのビザを取得するのは大変ですから、複数国籍を持っている人の方が簡単にビザを取得できたりします。つまり、働く人にとってもチャンスは増えて行くと思います。また、昨年12月に「特定技能」という新しい在留資格で外国人労働者を受け入れる出入国管理法(入管法)の改正が成立しましたが、資格だけでなく、外国出身の人たちが安定して生活できるよう、重国籍を認めるべきだと考えます。日本は他国からやってきて帰化する人が少ないですが、これは複数国籍を認めないことも背景としてあると思います。

日本の生産年齢人口が減る中で、帰化率を上げ、国籍取得者を増やすのは大事な政策だと思います。閉鎖的で排他的な日本は、まだ鎖国をしていると思われても仕方がありません。

ところで、重国籍といえば、スポーツ界でもいろいろと話題になります。先の大坂なおみ選手のことも、私たちは日本人であるからこそ、大会のたびにニュースで目にしたり、応援したりするもので、米国籍であれば、あれほど取り上げられることもないでしょう。

ヨーロッパのサッカー1部リーグで活躍する選手の中には、所属チームの外国人枠を空けるため、ヨーロッパの国籍を取得し二重国籍となる選手もいます。例えば、ブラジル国籍を有する選手がスペイン国籍を取得する(ブラジル生まれであるがスペインを選択)などです。これは、EU域内のいずれかの国籍を有していれば、規定により、EU域内のどの国のクラブでも外国人とはみなされないというものです。ただし、これらの選手が、A代表で一方の国から選出された場合、もう一方の国籍の選手としてプレーすることは原則認めていません。ここら辺は、ルール上スッキリしています。

なお、日本プロ野球ではかつて、郭源治さん(元中日ドラゴンズ)などのアジア系の外国人選手が日本国籍を取得することが多くありました。当時、外国人枠は「1チーム2名まで」であったため、その枠を有効に利用したい球団側と、すでに日本で実績を残し今後も現役を続けたい外国人選手とが合意してのものであったと考えられています。しかし、その後は外国人選手の出場枠の拡大や登録数制限の撤廃、さらに「在籍10年」で「日本人選手扱い」に変わるようになったことなどがあり、このような例はほとんどなくなってきました。

また、小学生時から高校生時まで日本の普通学校へ通っているので、日本国籍を取得しなくても日本人選手扱いとなるルールがあり、その条件で入団したものの、日本国籍を取得する選手も案外多くいます。これに関しては、在日韓国人選手が在日であることをカミングアウトしていないケースが多いために、一般に報道して知らされる事は稀です。

なお、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の代表チームについては、当該国籍を持たない選手でも条件次第で資格が与えられる場合もあるため、選手の国籍変更はほとんど見られません。

コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
日本に住んでいても、参政権がなく、自分の意思を明確にできない。だからと言って、母国の国籍から変えたら、今度は母国での活動も制限される。大変だと思います。

スポーツでは国籍でいろいろと制約がある分野がありますが、相撲は日本国籍でなくても、横綱にはなれますが、年寄にはなれないと。いろいろと閉鎖的なものも残っていますね。
eco坊主
おはようございます。

私どもの訓練に参加されている方にもおられましたけど、知ったときは「ふ~ん」ぐらいの軽い受け止め方をしてました^^;
ここで勉強させていただき感謝です。

大坂なおみ選手には日本国籍で頑張って欲しいですが彼女の人生ですから彼女の選択を応援したいですね。
オコエ瑠偉選手も同様に自らの思いで選択して欲しいものです。
でも球団の意向が働くのかしら・・・
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