第三十三首

ひさかたの 光のどけき 春の日に
しづ心なく 花の散るらむ
紀友則
(生没年不詳) 紀貫之の従兄弟。『古今集』撰者となるが、完成を見ずに病で没した。三十六歌仙の一人。
部位 四季(春) 出典 古今集
主題
春ののどかな陽光の中に散る桜の美しさを惜しむ心
歌意
日の光がこんなにものどかな春の日に、どうして桜の花だけが落ち着いた気持ちもなく、慌ただしく散ってしまうのだろうか。
ひさかたの 天・空・日・月などにかかる枕詞。
『古今集』春下、八四に「さくらの花のちるをよめる きのとものり」として見える。定家によって再評価された歌だということができる。
貫之の従兄。貫之・躬恒(みつね)より先輩格にあった。
歌集に『友則集』がある。『古今集』に四十六首、『後撰集』以下に約二十首入集。