第八十八首
難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき
皇嘉門院別当
(生没年不詳) 父は源俊隆。皇嘉門院(崇徳院皇后聖子)に仕えた。
部位 恋 出典 千載集
主題
旅寝の一夜の契りゆえの一途な女の恋心のあわれさ
歌意
難波江の葦を刈ったあとの一節の根のように、短い仮寝の一夜だけのために、難波江の名物「みをつくし」でもあるまいに私は身を尽くして一生恋することになるのでしょうか。
刈根に仮寝をかけ、一節に(ひとよ)に一夜をかける。「みをつくし」は、この身を捧げるの意。「わたる」は、時間的にし続ける。
「旅宿に逢う恋」という題詠である。旅宿ということから、難波を思いうかべ、芦、かりね、ひとよ、みをつくし、わたると、序詞、掛詞、縁語の技巧をつくし、しかも、旅の一夜のはかない契りのために、生涯身をささげて恋い続けなければならないとする、女の恋心のあわれさを美しく表出した艶ともいうべき歌。
『千載集』以下に九首入集。