koshiのお部屋2

万年三歳児koshiの駄文のコーナーです。

34億人の聖都

2006年09月23日 23時18分38秒 | TV&エンターティメント

探検ロマン世界遺産スペシャル「34億人の聖都エルサレム」(NHK総合)を見る。
否,見ようと思って見たわけではなく,9:00からの土曜プレミアム「電車男DX」の予約録画(勿論見たら消す)をしようとしてTVをつけたらやっていて,最後まで見てしまった。


34億人,というのはユダヤ教・キリスト教・回教の信徒の数である。
60億とされる世界人口のうち半数以上が,これらの宗教を信仰しているということだ。
そしてエルサレムは,キリスト教・ユダヤ教にとっても,回教にとっても聖地なのである。
例えばエルサレムの旧市街地を見てみると,ユダヤ国家の神殿のあった場所が「嘆きの壁」で,キリストが十字架にかけられたと言われる場所には「聖墳墓教会」が建ち,さらに一際輝く金色のドームが,預言者ムハンマド(かつてはマホメットと表記されたものだが・・・)が天国に行ってきた際に通ったという穴のある「岩のドーム」がある。


エルサレムが宗教混交の地であると同時に民族対立の地であることは良く知られている。
旧約聖書の時代以前,パレスチナの地にはユダヤ人とパレスチナ人が共存していた。
やがて周囲に強力な国家が出現するに至って(エジプト,ローマ,イスラム,セルジューク,オスマン等),ユダヤ人は旧約聖書にある「約束の地」であるパレスチナを追われ,2,000年もの間世界を放浪する。
そして,1947年国連のパレスチナ分割決議を受け,翌年イスラエル建国。
ユダヤ人は「約束の地」へ戻ったのであるが,それはパレスチナ人にとって自国を奪われたことになった。
その結果,周辺諸国とイスラエルの間には紛争が勃発(中東戦争)。
さらに自国の利のため,米ソが双方を支援。
中東の政情は大国の利権が絡み,一層複雑さを増していった。


91年の旧ソ連崩壊により,東西冷戦時代は終焉を迎えたが,やがて世界は民族・宗教対立を深めていくことになるが,最たる例がこのパレスチナである。
93年のオスロ合意,96年のパレスチナ暫定自治政府の成立により,数千年にわたる民族・宗教対立が緩和されたに見えたが,数千年の喧嘩の根はあまりに深かった。
イスラム原理主義組織「ハマス」による度重なるテロにより,イスラエル側も硬化。
岩のドーム付近での回教徒特有の礼拝をも抑制する構えを見せ,TV映像ではイスラエル人警官に対して暴言を吐いたという理由で,パレスチナ人が逮捕されていた。
また,あるパレスチナ人は,
「南アのアパルトヘイトよりもひどい差別だ。」
と怒りをあらわにしていた。
所謂ヨルダン川西岸地区を含む上記パレスチナ暫定自治区には,約20万を超えるユダヤ人が入植していると言われている。
また,暫定自治区であるガザ地区には,数十万人の難民キャンプがあると言われている。


救いようのない話ばかりで,こちらも気が滅入りそうだが,こうした中で宗教・民族対立の融和を求める動きも出始めているという。
番組では,平和的解決のために骨を折るユダヤ教のラビの姿が紹介されていた。
宗教というものは,本来対立や抗争のために存在するものではなく,平和的共存・共生を探るべきものである,という彼の言葉が重く響いた。
一神教はどうしても排他的になりがちであるが,双方が理解し合って譲り合ってこそ和平への道は開けるというものだ。
対立する民族にとって,敵との話し合いなど以ての外,屈辱であること極まりない,という硬化した声も大きかったが,自分の立場や利権のみを主張しても平和的解決にはなるまい(回教は「聖戦-ジハード」という考え方で戦争をある面容認しているが・・・)。


根が深いのは分かる。
引例が適切であるかどうかはともかく,それに比べるとたかだか140年の対立の歴史しかない我が国の会津と長州ですら,今尚その抗争の余塵がくすぶっているくらいなのだから数千年の喧嘩が「喧嘩両成敗」で済むはずもない。
しかし,平和裏に紛争を解決しようという動きが出てきたことは,素晴らしいプロセスとして評価したい。
そして,その地道な活動によって,数千年間にわたって培われてきたお互いに対する憎悪の念が少しでも緩和されることを願いたい。


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4 コメント

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ドイツ (tomonikatu)
2006-09-24 19:16:47
 先月、ウイーンとミュンヘンの収容所への訪問時、ガス室へ日本の折り紙の鶴を供えてきました。退職した方々との旅の中で、余生を世界平和のために勉強し、資料を作り、鶴を供える日本人がいるなんて、その場に居るだけで涙が流れました。本当の平和を守るための祈りが必要だと思います。誰かの利益のための宗教は、やはり、おかしい、、、。
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我々にできることは・・・ (koshi)
2006-09-24 20:18:13
tomoさん,今晩は。

サマワ,東ティモール,チェチェン,バスク,コソボ,イラク,カシミール,ソマリア等・・・これらの地域では今尚民族・宗教対立が繰り返されています。

言ってしまえば,旧帝国主義,共産主義,東西対立等の余波が今尚残っていることと,長い間にすり込まれた感情のずれが原因なのかもしれません。

我々に出来ることは,まずそれらの事実を正視し,きちんとした歴史認識と事実を知ることが最初と思います。

けっして対岸の火事ではなく,自らに降りかかってくるものとして考えなくてはならないと思います。
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平和を祈ります (わかば)
2006-09-26 01:08:02
こんばんは。重い話題でなかなかコメントが書けずにおりました。

今回の番組は見逃しましたが、以前に似たような番組を観たことがあって、いやなんとエルサレムとは凄いところなのだと思いました。1日のうちでも、ある時間帯はイスラム教徒が決まったコースを行進し、ある時間帯はキリスト教徒がそのコースと交差するように行進し…というような儀式が、毎日毎日延々と続けられているそうですね。

日本人にはおよそ想像できない世界ですが、それぞれの宗教に対する信仰心は、お互いに尊重してほしいと願います。

問題はやっぱりイスラエル建国で。政治や国家が絡むと信仰の本質までが変わってしまうような気がしてなりません。



>宗教というものは,本来対立や抗争のために存在するものではなく,平和的共存・共生を探るべきものである

私もまさにそう思います。

エルサレム…死ぬまでに一度は行ってみたいものです。
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凄いことですよね (koshi)
2006-09-27 21:06:06
わかばさん,今晩は。

この手の番組は,視聴の後味の悪さを知りつつもついつい見てしまいます。

エルサレムは,キリスト教区と回教区が一応別れているものの殆ど同居するように混在していますので,ある意味凄いことと思います。

トルコも含め中東はやはり東西の接点であることを再認識すると同時に火種が絶えない理由も頷けます。

宗教が政治的色彩を帯びると,純粋性を失うばかりか大国の利権と結びついてとんでもないことになると思います。

現代の中東情勢は1948年のイスラエル建国に負うことが多いのですが,それとて今更反故にするわけにもいかないでしょう。

4000年に渡る喧嘩の根はあまりに深いですので,まず我々に出来ることは正史の理解と現在の情勢の把握では・・・と,我ながら消極的で発展的ではない意見しか出せないでいるわけで・・・(尻すぼみ)。
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