封切られた去年の夏,これは何としても見ずば・・・と思って,単身映画館に赴いて,10年ぶりに封切りを・・・とも考えたのですが,これは内容的にも家族に見せておきたい・・・と考え,レンタル解禁を待って,週末にショップに走り,ラスト2枚というところでゲット。
残念ながらBDはすべてレンタル中でしたので,DVDでの視聴となりました。
木村秀政(1904-86),土井武夫(1904-96)と並ぶ航空工学の権威である堀越二郎博士(1904-82)については,中学生の頃,航空評論家の佐貫亦男氏(1908-97)の著作で読みました。
何せ,当時はご存命でしたので,私としては,つい最近の方という印象を拭えません。
ですから,我が国が世界に誇る偉大なる零式艦上戦闘機(と九六艦戦,雷電,烈風)の設計者としては勿論,戦後国産旅客機のYS11(屋久島便に乗ったのは,貴重な体験でした)の設計者として,航空界の大物である堀越氏の半生をどのように描くか,興味津々でした。
原作は,私の愛読書の1つである「モデルグラフィックス」誌に連載されていたもので,幾つかの類似共通点が垣間見られる「紅の豚」と被ります(原題は「飛行艇時代」。数年前入手)。
尤も,MG誌では,登場人物が擬人化された動物だったのですが・・・。
でもって,土曜の夜,子どもを寝かしつけて,ビールとワイン,日本酒を冷やしておいて,ビールを開栓と同時に視聴を開始しました・・・。
う~ん・・・,評価が難しい・・・。
私のような頭からつま先まで,完全な昭和の男にとって,描かれた風物は,ある種のノスタルジーを伴って迫ってきますし,若い頃とち狂ったように読んだ堀辰雄の諸作品の影響や,夢の中でのカプローニを代表とする飛行艇時代への憧憬(これも「紅の豚」ともろに被ります),そして仰角や主翼前縁30パーセントに重心を持ってくる模型飛行機(ペーパークラフト)を夢中で作った子ども時代への個人的追想など,多くのファクターが去来しました。
前半は,カプローニとの出会い(但し,夢での)から九試艦戦の設計まで,わりとさくさくと進んだのに対して,後半は多分まるっきり創作(というか,題名も含めての堀辰雄作品へのオマージュでしょう)である恋愛模様・・・と,良い意味でのコントラストがはっきりしていたと思うのですが,個人的にはどうもその辺りの統一感というか,作品を貫く芯がぶれたような感覚は最後まで付いて回りました。
勿論,2時間強,飲み続けていたなも関わらず,トイレにも立たないで,画面に釘付けになっていた(AVアンプに灯を入れ,サラウンドスピーカーを鳴らしつつ)ことは,言うまでも有りません・・・。
碓氷峠(新幹線開通で,これが失われたことは痛恨でした)の石橋を登るアプト式鉄道と草軽交通(私が生まれる前に廃線),旧軽井沢銀座の賑わい,正確な考証に基づいて描き込まれた車両の数々等に指を鳴らし,登戸行きの電車は小田急だろうが,菜穂子の家は上野だったのではとか,「風立ちぬ」のヒロインは,確か節子という名前だったとか,ヒロインの菜穂子の名は「楡の家」~「菜穂子」から取ったとか,氷室で雨宿りする場面が出てきたら完璧なオマージュだったとか,菜穂子が入った療養所(サナトリウム)は,作中にも出てきたように浅間高原の軽井沢ではなく八ヶ岳山麓の富士見高原だったとか,作中の「草軽ホテル」は旧軽井沢のアカシアの小径の奥にある「万平ホテル」のことだろうとか,「会議は踊る」(31)の音楽だ・・・とか,余計なことをたくさん思いながら見ることが出来たので,楽しめたことは間違いないでしょう・・・。
零戦(21型)の登場シーンは最後の一瞬のみで,九試艦戦(量産型は九六式艦戦)のプロトタイプによる初飛行成功でストーリーが完結しているのは,やはり旧式化による劣勢と戦局の悪化,特攻と敗戦ということが頭にあったからなのでしょう・・・。
誰にでも楽しめる・・・とは,無条件では言えませんが,当時の時代背景や堀辰雄の諸作品(上記2作と「美しい村」あたり)を読めば,さらに理解が深まって楽しめると思います。大いに気に入ったら,BD買おうかと思っていましたが,現段階では躊躇しています。
次は,来月発売の「永遠のゼロ」を何としても見ないと・・・。
でもって,作りかけの九六艦戦と宮部久蔵搭乗の台南航空隊所属の零戦21型を組まないと・・・。
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