こんなにも割り切るのに時間が掛かるとはね
最も憎んだ母親の喪主は・・・自分だった。
37年間の闘病生活
や、実際には鉄格子の部屋にいることの方が多かった
今、振り返ると
修羅は一時
そう思えて来るから不思議だ
無くなる一週間前
もうダメだと言われた
最後だからと言われた
仕方なく
病院に駆けつける
そこには
呼吸器? それとも痰の排出?
よくわからない危機を取り付けた母親が横たわっていた
危篤と言われた
意識も無いと
ところが駆けつけて観ていると・・・
動く
話そうとする
元気じゃないか
これ死なないよ
病院と言っても
鉄格子の病院のICUなのか危篤患者を看護する部屋の狭さと言ったら
小さな物置小屋のような場所で
危篤と言われながら蠢く母親
看護婦は・・・本当に心臓が止まりそうだったんです
医者は・・・危ないと思いましたよ
何とも人騒がせな
そして何事もなく、帰った。
それから一週間後
今度は、誰一人間に合うこともなく
たった一人で
旅立って行った
もういいよ
もう
判ったから逝ってくれ
早く逝ってくれ
その願いに反発するかのように
裏切り続けた母親は
最後の最後まで
皆を裏切って
一人で逝った
ホッとした
誰も口にしなかったが
誰もが心の奥底では感じていた感情
やっと終わった
37年間が終わった瞬間だった
だが、人生のかなりの部分を修羅との闘いに費やした自分と
修羅と共に生まれた弟
そして、修羅になる前をよく知る母と同世代の兄弟達
それぞれの思いは
かなり違うようだった
特に弟には驚いた
俺には修羅の母親から生まれた不憫な奴という同情めいたものがあったが
弟は違った
弟にとって
修羅も母親だということ
いや、修羅の母親しか知らない弟は
修羅の中にしか母親を求めるしかなかったということ
修羅としての母親は
彼にとっては母親そのもの
修羅の中に母性を見出し
修羅の中に優しさを見出し
修羅の中のほんの少しの安らぎに母親を感じていたとはね
そう、知らない者は
知り得ることの中で
あてはめ
考え
その小さな変化の中に
最大限の母性を感じ
それを至福の喜びとしていたということだろう
壊れて行く過程を見ることのなかった彼は
ある意味、幸せだったのだ
壊れる前を知らない不幸せのようなものには
気付くこともなかったのだ
この手で殺そう
壊れて行くことの不憫
もういいでしょ
殺そう
何度も思った
それは
つまり
壊れる前を
壊れる過程を知っていればこその不幸
本当に不幸だったのは
壊れたからじゃない
壊れる前を知っていたからなんだ
なんだよそれ
ほんの少し
10年ほど
壊れる前を知っていただけ・・・・・
ただそれだけで
その後、37年間の修羅との闘いに
エネルギーを吸い取られていたのか
気持ちの整理など
付けようがない
喪主をやり
四十九日
墓の整備
新盆、納骨
仏壇の整備から
御寺との調整
全てを一人でやった
一周忌は
東日本大震災に直撃されて流れてしまった
非常に疲れた1年だった
疲れた
本当に疲れた
一年が経って
血を吐いた
最低の血
修羅の血をひくものとして
再び
修羅が呼んでいるのか
それとも俺自身が
修羅の門を開けようとしているのか??
怖い
本当に、この血は、この血脈は怖ろしい
修羅にならずとも
身体中の色素が破壊され
身体の到る所が白色化して行く、原因不明の尋常性白斑
死にはしないが
なんとも奇妙な色彩に変わって行く
付き合いきれん
修羅を演じる若い奴が許せない
修羅は自分の糞を喰らう
自分がいつそうなるのか
その恐怖に数十年間も
俺は怯えて生きて来た
そんなこと、当然、知る由もないのだろうが
簡単に「気持ちが壊れた」という若い奴が許せない
逆に助けを求める奴
変わりたいと思う奴は
何としてでも救いたい
修羅は演じられない
修羅にだけは
成りたくないんだ
最も憎んだ母親の喪主は・・・自分だった。
37年間の闘病生活
や、実際には鉄格子の部屋にいることの方が多かった
今、振り返ると
修羅は一時
そう思えて来るから不思議だ
無くなる一週間前
もうダメだと言われた
最後だからと言われた
仕方なく
病院に駆けつける
そこには
呼吸器? それとも痰の排出?
よくわからない危機を取り付けた母親が横たわっていた
危篤と言われた
意識も無いと
ところが駆けつけて観ていると・・・
動く
話そうとする
元気じゃないか
これ死なないよ
病院と言っても
鉄格子の病院のICUなのか危篤患者を看護する部屋の狭さと言ったら
小さな物置小屋のような場所で
危篤と言われながら蠢く母親
看護婦は・・・本当に心臓が止まりそうだったんです
医者は・・・危ないと思いましたよ
何とも人騒がせな
そして何事もなく、帰った。
それから一週間後
今度は、誰一人間に合うこともなく
たった一人で
旅立って行った
もういいよ
もう
判ったから逝ってくれ
早く逝ってくれ
その願いに反発するかのように
裏切り続けた母親は
最後の最後まで
皆を裏切って
一人で逝った
ホッとした
誰も口にしなかったが
誰もが心の奥底では感じていた感情
やっと終わった
37年間が終わった瞬間だった
だが、人生のかなりの部分を修羅との闘いに費やした自分と
修羅と共に生まれた弟
そして、修羅になる前をよく知る母と同世代の兄弟達
それぞれの思いは
かなり違うようだった
特に弟には驚いた
俺には修羅の母親から生まれた不憫な奴という同情めいたものがあったが
弟は違った
弟にとって
修羅も母親だということ
いや、修羅の母親しか知らない弟は
修羅の中にしか母親を求めるしかなかったということ
修羅としての母親は
彼にとっては母親そのもの
修羅の中に母性を見出し
修羅の中に優しさを見出し
修羅の中のほんの少しの安らぎに母親を感じていたとはね
そう、知らない者は
知り得ることの中で
あてはめ
考え
その小さな変化の中に
最大限の母性を感じ
それを至福の喜びとしていたということだろう
壊れて行く過程を見ることのなかった彼は
ある意味、幸せだったのだ
壊れる前を知らない不幸せのようなものには
気付くこともなかったのだ
この手で殺そう
壊れて行くことの不憫
もういいでしょ
殺そう
何度も思った
それは
つまり
壊れる前を
壊れる過程を知っていればこその不幸
本当に不幸だったのは
壊れたからじゃない
壊れる前を知っていたからなんだ
なんだよそれ
ほんの少し
10年ほど
壊れる前を知っていただけ・・・・・
ただそれだけで
その後、37年間の修羅との闘いに
エネルギーを吸い取られていたのか
気持ちの整理など
付けようがない
喪主をやり
四十九日
墓の整備
新盆、納骨
仏壇の整備から
御寺との調整
全てを一人でやった
一周忌は
東日本大震災に直撃されて流れてしまった
非常に疲れた1年だった
疲れた
本当に疲れた
一年が経って
血を吐いた
最低の血
修羅の血をひくものとして
再び
修羅が呼んでいるのか
それとも俺自身が
修羅の門を開けようとしているのか??
怖い
本当に、この血は、この血脈は怖ろしい
修羅にならずとも
身体中の色素が破壊され
身体の到る所が白色化して行く、原因不明の尋常性白斑
死にはしないが
なんとも奇妙な色彩に変わって行く
付き合いきれん
修羅を演じる若い奴が許せない
修羅は自分の糞を喰らう
自分がいつそうなるのか
その恐怖に数十年間も
俺は怯えて生きて来た
そんなこと、当然、知る由もないのだろうが
簡単に「気持ちが壊れた」という若い奴が許せない
逆に助けを求める奴
変わりたいと思う奴は
何としてでも救いたい
修羅は演じられない
修羅にだけは
成りたくないんだ